「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

         難病と現代医療体制の冷酷さ

2008-06-30 05:20:18 | Weblog
20数年行きつけの理髪店の主人が今年年頭から難病で大学病院の入退院を繰り
返している。一度は回復して店に立ったのだが、また病状が悪化して、今度は入院
が長期にわたっている、一昨日,大安の日を選んで見舞いに出かけたところ、彼は
完全にめいってしまっている。期待していた弟からの骨髄移植がHLA(組織適合)の
ミスマッチで出来なかったのが原因のようだ。

僕は病気について、あまり知識がないのだが、彼の病気はガン性の血液の難病と
のことだ。血液型にA,B,O,ABの四つがあるのは知っているが、彼の話ではさらに分
類すると、六タイプあって弟さんとは同じB型だったが、適合せず輸血のさい、拒絶
反応を起こすのだという。

彼は”打つ手は打ったのだから”と達観した表情をしていたが、内心はそうではない
に違いない。今後の治療としては、彼の血液に適応する出産後の女性の血液の輸
血を受けることだそうだが、それは数千人,数万人に一人ぐらいの確率で、なかなか
見当たらないとのことである。

僕が見舞った日は、たまたま彼の娘さんが結婚式だった。僕は前から彼がこの日を
楽しみにしていたのを知っていた。すっかり痩せこけてしまった彼は僕に言った。
「来月早々,退院を言われました。適合血液が見つかるまでは在宅治療でも同じなの
だそうです」
もう歩行も困難な患者を多分、病院の都合であろう。退院させる現代の医療体制の
冷酷さを見せつけられた。