「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

          甘味と活字欠乏症の頃

2008-06-17 05:34:06 | Weblog
毎日のブログも三年目に入ると時節の話題にこと欠く。どうしても過去の体験に
頼らざるをえないが、過去に同じ事を書いたかもしれない。そこで必ず一昨年
昨年の同じ時期のブログをチェックすることにはしているが、やはり毎年この時
節になると書き残したいテーマがある。

昭和20年(敗戦)6月は、僕にとって忘れられない月である。敵の本土上陸を前に
して僕らは千葉県の江戸川口で運河の拡幅浚渫工事に学徒動員されていた。中
学3年生の少年にとって、あまりにも過酷な経験であったなので、昨年も一昨年も
このことを書いたが、今年もアングルを変えて、この体験を書き残したい。

僕たちはモッコを担いで運河の底からかき出したドロを外に運び出す作業に従事
したが、重労働なのに食事が満足に与えられず、空腹に泣かされた。とくに育ち盛
りの少年にとって甘味がないのが苦しかった。僕らは毎日曜日、近くの野田の町へ
でかけ、薬局で糖衣剤の胃腸薬を求めた。「アディオス」という薬名とともにまっ黒な
便が出たことを今でも覚えている。

新聞も雑誌もラジオもない生活だった。これは体験した者でないと解らない。僕らは
たちまち活字欠乏症に陥った。知識欲の盛んな年代だったのかもしれない。なんで
もよいから活字が読みたかった。トイレの落とし紙に使われていた古雑誌を食いる
ように読みふけった。

戦後かなり経ってから、僕らはこの体験を文集にまとめたが、当時の活字欠乏症の
反動なのか旧友二人が体験を小説にしている。