「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

         上坂冬子さんの死と軍歌

2009-04-19 06:01:51 | Weblog
昨夕、一泊二日の旅から帰って、家に溜まっていた二紙(朝日、産経)に目
を通した。産経には一面に三段で大きく上坂冬子さんの死去を伝えていた。
一方、朝日は一行も記事もない。両紙の姿勢の違いかなと一瞬思ったが、
朝日も前日の夕刊で二段扱いで報道していた。僕の思い過ごしであった。

上坂冬子さんとは面識はないが、同じ東京生まれで同じ年生まれ。戦中戦
後のあの時代について同じ体験をしている。そんなことから彼女の書いた作
品には共感がある。しかし、彼女独特のフィルターで書いているものもあって
全部が全部ではない。が、彼女の絶筆に近い記事「郷愁誘う戦時下の童謡」(産
経新聞3月21日)には同時代人として拍手を送った。

上坂さんも僕も日支事変の始まった昭和12年に小学校に入学,20年、中学校
3年の時に敗戦を迎えている。つまり義務教育の9年間が戦争であったわけだ。
彼女は上記記事のなかで「戦時中に歌われていたのを軍国歌謡として毛ギラ
イする人もあるが、あまりにも浅はかだ」と批判している。僕も同意見だ。あの
時代、僕ら銃後の少年少女にとって軍国歌謡しかなかったわけだ。

戦争を賛歌するのではない。戦争だった時代の史実を歌を通じても残すべきだ
というのが僕の意見だ。数年前、多摩市で開かれた童謡を歌う会の印刷物に
「空の新兵」とあった。"みよ落下傘空を行く”で始まる、この歌のタイトルは「空
の神兵」でなくてはならない。

上坂冬子さんの御冥福をお祈りします。