「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

         やっとやってきた都会の鶯

2009-04-21 16:23:06 | Weblog
隣家の庭で鶯の鳴き声を聞いた。”花に鶯”というが、桜の花も散ってしまった今
頃になって何故姿を見せ初鳴きをしたのだろうかー。近所のミニ開発で庭木が減
り巣造りの場所がなくなったためなのだろうかー。”ホオホケキョウ”の鳴き声を聞
いて、なんとなく心がなごやかになった。

東京の上野の隣駅に「鶯谷」駅がある。江戸時代から明治の中頃までは、文人墨
客が住む風流の里であったようだ。僕の先祖は文人墨客ではなかったが、明治34
年から36年にかけて日暮里村金杉という音無川のほとり、つまり鶯谷に住んでいた。
先祖が残した文書によると、当時の鶯谷では,春には鶯の声を聞く会、初夏には蛍
狩さえ楽しめたそうだ。駅前にラブホテルが乱立する今の鶯谷からは想像もつかない。

僕の住むあたりでも、つい10年ほど前までは梅の咲く時期には鶯の初音を聞いたもの
だったが、最近は庭木で囲まれていた邸宅がミニ開発で分割されて樹木も切られてし
まった。わが隣家も、どういう事情か判らないが、最近家人の姿をみない。財産相続で
売却されるという噂も流れている。150坪もある住宅である。一軒まるごと引き受ける
買主がいればよいが、分割されれば梅の古木も多分伐採の運命にある。いよいよ鶯
の棲家はなくなってしまう。

▽ 声絶えず 鳴けやうぐいす ひととせにふたたびとなに 来べき春かな
                     (古今和歌集 巻二)