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「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

    ある原爆被爆インドネシア人学者の死

2010-09-04 06:03:43 | Weblog
アリフィン・ベイさんが2日、ジャカルタ郊外タンゲランの自宅で老衰のため亡く
なられた。85歳の高齢であった。さきの「ブンガワン・ソロ」の歌手、ゲサンさん
の死といい、一つの時代が終わった感がある。日本で”ベイさん”と愛称で呼ば
れていたアリフィン・ベイさんは、日本と日本人の心を最もよく知るインドネシア
人の学者であった。

ベイさんが初めて日本に来たのは1944年(昭和19年)、日本政府が大東亜共栄
圏各地から招いた戦時留学生の一人としてであった。ベイさんは東京で日本語
を学んだあと、広島文理科大学(現在の広島大学)に留学、20年8月6日の原爆に
あっている。幸いベイさんは助かったが、マレーの同じ留学生仲間二人が亡くなっ
ている。

僕が初めてベイさんと会ったのは1966年(昭和41年)で、その時ベイさんはジャカ
ルタで「インドネシア・ヘラルド」という英字紙の編集長をしていた。ベイさんは西ス
マトラ出身の敬虔な回教徒だが、戦後米国の大学で学位をとっている國際政治学
者である。

数年前、脳疾患で倒れ自宅で家族に見守られ療養中だったが、親しい日本人の間
ではベイさんの前からの持病の喘息は、原爆の後遺症ではないかとささやかれていた。
ベイさんは一言もそんなことは周囲に言わなかったが、僕も原爆被爆と関係があるよ
うに感ぜられた。いずれにしても原爆被爆者である。一度診察の機会はあってもと思
いながら、機会を逸してしまったの残念である。

改めてお悔やみ申し上げます。合掌。