「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

       お月見 すたれゆく伝統行事

2010-09-22 05:45:00 | Weblog
今夜は中秋の名月、十五夜。予報ではお月見は出来ないと思っていたが、東の空に
まん丸のお月様が上がった。と、いってもわが家では、ここ数十年、お月見をしたこと
はない。しかし、僕の心の原風景には、はっきりと、お月見が残っている。お月見に限
らず、正月、節分、七夕など日本古来の伝統行事が都会では、年々消えていっている。
馬齢を重ねたせいか、なにかいとおしく、寂しい気持ちがする。

昭和10年代、多分戦争が激しくなる前の13,14年頃だっただろう。結核で死んだ姉がま
だ元気だった頃、近所に住む従姉たちと母の実家の広い縁側で毎年、お月見をした。三
宝の上に里芋やお団子を載せ、庭の薄を飾った風景が昨日のように残っている。♯うさぎ
うさぎ、何みてはねる 十五夜お月さま 見てはねるー昔からのわらべ歌「うさぎ うさぎ」
が懐かしい。

当時、小学校の低学年だった僕は、月のうさぎの模様を見ても将来、人類が月に行けるな
んて夢にも思わず、餅つき模様をただ眺めていた。この月とうさぎの話は、インドの「ジャー
タカ」という仏教説話集が原点である、ことを後年知った。病身の老人に身をやつした帝釈
天がサルときつねとうさぎに試したところ、うさぎが自分の身を焼き帝釈天に供したのを帝
釈天が哀れみ。うさぎを月に登らせ永遠に、その姿をとどめたのだという。

うさぎが登場する月の伝説は仏教国だけだそうだ。中国や韓国では今でも中秋の名月の
日の前後は、国の休日として盛大にお祝いするそうだが、日本では戦後行事すらやらなく
なった。原因はやはり住宅構造の変化だろうが、もしかすると国民に心の余裕がなくなって
きたのかもしれない。