「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

       戦前の日本人のイスラム理解     

2010-09-14 05:19:01 | Weblog
ニューヨークの9・11同時多発テロで崩壊した世界貿易センタービルの跡地近くに
イスラム教のモスク建設計画があり、これをめぐって米国内で反イスラム感情が高
まっている。一方、これに対して世界のイスラム諸国では、米国人キリスト教牧師
がイスラムの聖典、コーランを燃やしたことに抗議、反米運動ガ激化している。

宗教問題については寛大で無関心な日本では、マスコミもこの問題を大きく扱わ
ないが、世界中が大騒ぎをしている。もともと日本にはイスラム教徒は少ないし、
最近外国人労働者の増加によってイスラム人口が増えたといっても、せいぜい10
万人程度だ。だから一般日本人の対イスラム知識は少ないし理解もない。

意外なことだが、戦前の日本でコーランが日本語訳されている。翻訳者は戦後の連
合軍極東裁判で、東條英機被告の頭を叩いて話題になった、A級裁判被告中、唯一
人の民間人だった大川周明である。大川はアジア主義を唱えた思想家で、戦争を煽
動した理由で逮捕されていた。大川の著書「回教概論」は最近、中公文庫などで復刻
出版されているが、イスラム理解に役立つなかなかの名著である。

戦前の一般日本人のイスラムについての理解のほどは不明だが、68年前の昭和17年
3月、ジャワ島上陸作戦のさい第16軍將兵に配られた「皇兵あらたに皇民皇土をつくる」
という冊子には、上陸後イスラムをめぐって島民との間にトラブルが起きないように”むや
みにモスクへ入るな”等イスラムの戎律習慣が書かれてあった。

世界は狭くなっている。知っていて損なことはない。大川周明の「回教概論」の一読をお
薦めする。