「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

              民生委員制度について考える

2012-03-22 07:13:28 | Weblog
横浜市旭区の民家で77歳の母親と重度障害を持つ44歳の息子が誰にもみとられずに死亡していた。息子が重度障害であることを行政は認知していたが、この情報が地域担当の民生委員に伝わっておらず、民生委員が知ったのは,母子が遺体で発見されて9日後だったという。どうも行政の関係者が個人情報を配慮しすぎた結果のようである。

最近こういった高齢者や障碍者といった社会的弱者の孤独死がめだつ。そのたびに民生委員が事前に情報をキャッチしていたかどうかが問題になる。民生委員は地域の情報に精通している人が厚生労働大臣の委嘱で任命され任期は3年だが、給与は支給されていない。活動費として年間6万円は支払われているが、一種のボランティアにすぎない。これは昭和23年に制定された「民生委員法」に基づくものだ。

超高齢者時代である。しかも60年前に比べて社会構造も複雑化してきた。しかし、これに対応する福祉の最前線はいまだに民生委員というボランティアに依存している。どう考えても矛盾している。しかも一方では「個人情報」を隠れ蓑にして行政が本来の福祉について怠慢になってきたように僕には思える。

幸い僕の住む地域は街が成熟しており、町内会の組織もしっかりしている。民生委員も顔見知りの方だ。しかし、同じ東京でも新興住宅街や集合住宅では、隣近所の日常的なお付き合いもないと聞く。こういった地域の民生委員の仕事は大変である。昨年の東日本大震災以後、人と人との絆の必要性が叫ばれているが、一朝一夕にできるわけはない。孤独死といった悲劇をなくすには、60年も前にできた古い民生委員制度を見直す時期にきているのではないだろうか。