「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

老人介護施設 歌の選択にも配慮を

2015-11-01 06:25:37 | 2012・1・1
先日、もと勤めていた会社の旧友会で、親友だった友人(故人)の夫人と久しぶりに会って懇談した。夫人は元保育園の園長だった方だが、今でも現役なみに色々と社会参加されている。その話の中で、夫人がある老人施設を訪れた際の話を聞いて考えさせられた。老人施設は夫人のお姉さんが入所している所だが、頼まれて夫人は90歳代の男性と一緒に「琵琶湖周航の歌」を合唱した。男性は普段、施設ではほとんど他の入所者との交流がない孤独の方だったが、合唱後涙を流して喜ばれた。男性は「琵琶湖周航の歌」が学生歌の京都の旧制三校の出身者だった。

2年前、老人施設で亡くなった大学時代の友人が生前、施設でドラエモンの歌を歌わされると苦笑して僕に語ったのを想い出した。友人は大学の教授で生涯独身であった。老人介護施設には、色々な半生を送られた方がおり介護の方も大変だと思う。介護には歌や”遊戯”が役立つそうで、一日一回、この時間があるとよく聞くが、介護側も歌の選択に困っているみたいである。若い介護者には、どのような歌が老人に好まれるのか判らず、判っても楽器で伴奏できないそうだ。

「琵琶湖周航の歌」に涙した90歳代の老人は、多分、若かった三校時代の古き良き時代を思い出したのかもしれない。大正9年生まれの僕の大学時代の友人は、昭和16年、現役入隊し、23年復員するまでの6年間海外の戦地に勤務していた。そして戦後も進駐軍のキャンプで夜バーテンダーをしながら働き32歳で大学を卒業した。彼には青春は軍隊しかなく想い出の歌は軍歌しかなかったかもしれない。

超高齢化時代で老人施設での入所者の年齢も70歳から90歳と多年齢に渡り、しかも戦前生まれと戦後生まれとでは考え方も違う。施設側も大変だろうとは思うが、出来れば歌の選択にしても、たんに、子供が喜ぶ歌というだけで「ドラエモンの歌」の合唱にせず、入所者の過去の半生にも配慮した歌を選んで欲しい。年寄りは子供のようなところがあっても子供ではないのだから。