アマチュア無線局 JO1KVS

運用やグッズ、その他思いついたことを書き込んでいます。役に立たない独り言ですがよろしくお願いします。

小・中学校にアマチュア無線部を

2011年11月26日 10時15分31秒 | アマチュア無線

 2011年は全国で本当にいろいろな災害が起きました。高度に情報化されたこの時代の弱点が露呈した年でもありました。携帯電話が非常時には殆ど役に立たず、ネットやメールはそこそこ強かったのですが、使える回線を必死で切り替える影の活躍があったからこそで、そこがダウンしていたらこれもまたアウトでした。電池で聞けるラジオの重要性が見直されました。でも情報は一方通行です。

 双方向の通信手段として災害時に活躍できるのは「自力の電波による無線通信」です。携帯電話も無線通信ですが、間に他力のインフラをはさんでいるため単なる端末に過ぎません。インフラが壊れれば何も通信出来ません。回線数も限られ、混めば壊れてなくても通話出来なくなります。

 自力の電波が相手に届けばそれで通信が成立する。音が届けば音声通信、光が届けば光で通信が出来ます。これと同じで電波が届けば無線で通信が可能です。

 自力の電波による通信が許されている一般人は殆ど居ません。電波は国によって管理されているので、勝手に出してはいけないんです。そんな中で唯一一般人が興味や自己訓練のために電波を出すことを許されている無線があります。

 それが「アマチュア無線」

 電波も貴重な資源なのでこれは本当に「特別な許可」なのですが、電波の世界は常にアマチュアが切り開いてきた実績があり、アマチュア無線はこの世界では地位が高く、国際的にも保護されている立派な無線(国際ルールを守らない国からの放送や軍事目的の電波に悩まされることが多いのですが)なのです。世界中で共通で運用されています。

 アマチュア無線は、個人の資格である「アマチュア無線技士の従事者免許」と、無線設備の免許である「無線局免許状」の2つの免許が必要なのですが、電波法には、遊びで無線をやらせてあげる代わりに、災害時などの有線等の通信手段が不可能な時には、「非常通信」を行なって社会に貢献しなさい、という感じの条文があるんです。法律はすべて「公共の福祉の増進」つまり「みんな良かったね」という目的を果たすために作られているので、電波法でもアマチュア無線局に自己のためだけではく、社会への貢献を負わせることで、みんな良かったね、を実現しているわけです。

 というわけで、アマチュア無線を災害時の通信手段として使うことは、他の通信が困難な場合において許されている、いえ、むしろ積極的にボランティア精神を発揮しろ、と言われているわけです。(四角四面に言うと非常通信のためのアマチュア局の開設は目的外開設なのでダメ。あくまで自分の興味や自己訓練のために無線がやりたいから、が主目的じゃないといけない。無線に興味のない人が連絡用とか災害時用に開設してはいけないんです。とはいえあいまいな定義なので結果誰でもどんな本音でも開設出来るのですが。)

 今年多く聞いたニュースでは、「住民◯◯名が◯◯小学校に避難していますが未だに連絡が取れていません。」というもの。

 電話も電気も通じていないのでしょう。携帯電話の基地局もダウン。台風ならばヘリからも確認することが出来ません。

 全く連絡が取れない。この時代に。これが今年、あちこちで何度も何度もありました。

 高度な通信手段しか持たないために逆に脆いのです。

 その学校にアマチュア無線部があればどうだったでしょうか。

 電源が問題ですが、移動運用が盛んな学校ならバッテリーを常日頃から充電しているでしょう。しばらく運用が可能です。電池でも運用できます。発電機を持っていれば燃料がある限り通信が可能です。車から電源を引けば車の燃料がある限り通信が可能です。強い電波が必要なければ小型のソーラーパネルと充電式バッテリーで十分な通信が可能です。

 学校にこそアマチュア無線設備が必要。

 アマチュア無線部があるといいと思います。

 短波帯が運用できる設備があれば、全国に連絡が取れます。このことは案外重要です。

 東日本地震では広範囲に地域全体が被災し、周辺、近く同士の情報が全く伝わらず、隣の避難所に居る家族の安否すらわからない状況になりました。隣も被災地なのです。足で探すしか方法が無かったようです。現地は電気も通信手段も無いので、現場からは今日本全体がどうなっているのかもわかりませんし、仮に近くと連絡が取れてもそこも不自由で何もわからない世界、その程度の通信手段では不足なのです。

 こんな時に活躍できるのは、インフラが完全に機能している被災地以外の地域による情報の伝達支援、中継です。

 あの時、インターネットでは安否確認のためのパーソンファインダーというシステムが大活躍しました。非被災地の多くの人がボランディア精神で避難所の名簿の写真から文字を読み解き、システムに手作業で打ち込む作業を行いました。インフラの生きている地域の人々が遠くから被災地を支援した例です(最初に避難所の名簿をネット上にアップしなければと、ケータイで撮影し、アップし始めた方が居たからこそ始まったのです)。行政機関は災害時は多忙でこれらの作業にとても手が回りませんから、全国のネットユーザー一人一人がボランディア精神を発揮してパーソンファインダーの名簿作りに自発的に参加していました。

 当時アマチュア無線でも短波帯を通じて被災地との通信がほぼ常時可能でした。通信に貢献した局も多数居ました。特に関西の局の皆さんは熱心に取り組まれ、その後東京、その他の都市と連携しながら、時間帯で変化する電波の状況に合わせて協力して運用していました。

 この時の運用はいろいろ課題は残るものの「思う心」は一つで大変評価に値することだったと思います。(関係無いですが、和文電信の「お」は「トツートトト」→「おもーこころ」と語呂合わせして覚える方法があります。是非この機会に一文字覚えてしまいましょう。)

 こちら東京では聞こえませんが、現地では144MHz帯などでも大活躍していたことでしょう。

 そんなわけで、避難所にも成り得る学校にアマチュア無線部があって、非常時の運用の練習もしていれば、こんな心強いことはありません。

 携帯があるのになんで無線なの?と言われる昨今ですが、アマチュア無線はおしゃべりが出来ることが目的ではなくて、電波が届いて通信が出来ること、自力通信そのものを楽しむ趣味なんです。

 携帯電話は災害時につながりませんが、アマチュア無線はつながります。しかも世界に。こういう時に大きな差があるんです。

 さて、学校にアマチュア無線部があると頼もしいのは事実ですが、設立することと維持することに大きな課題があります。

 クラブ局(社団局)を開設・維持するには、アマチュア無線技士の免許を持った人が常に居ることが必要です。生徒(先生も?)が年々入れ替わる学校では、このことが課題となります。試験は難しくは無いのですが、興味のない人に無理に、というわけにもいきません。以前はラジオや電子工作に興味があった少年のいくらかはアマチュア無線を始めたもので、学年に数人は大抵居たものですが、今はゲームとパソコンというトロール網に少年たちがごっそりさらわれてしまうので、アマチュア無線にたどり着く人が殆ど居なくなりました。また、便利そうだからとアマチュア無線を始めた人も多かったのですが、今はケータイがありますからそういう動機の人はほとんど居ません。かつては素晴らしいことと言われた世界中の知らない人と話すことが、今ではネット犯罪の影響で悪いイメージすらある時代ですから親も警戒します。そんなこんなで学校からクラブがどんどんと消滅してしまいました。私が無線を始めた若い頃は、某有名女子高にも無線部があったりして、無線の世界ではそれはもう大変な人気で、南極の昭和基地との交信に匹敵するほど価値のある通信だったのですが。おっと、話が下世話になってしまいました。

 でも解決策はあると思うんです。(ここからは戯言です)

 この度の東日本大地震の際に、JARLでは、被災地用の無線機を多くの個人から提供してもらってかき集め、機器一台ごとにコールサインを付与して被災地の通信支援者(ボランディアとして通信支援するアマチュア無線家)に送りました。本来コールサインは使う人と機械がセットで付与されるのですが、これだとこの人にこの無線機、と限定されてしまい不自由です。この時に行ったのがJARL自身が免許人となって、通信支援者なら誰でも使えるようにしたことです。8J1で始まるコールサインを迅速に付与し延300台の無線機が現地へ送られました。

 http://www.jarl.or.jp/Eastern_Japan_earthquake.htm

 この手がありました。

 これと同じように、小中学校の無線設備は、希望する学校にはJARLが免許人となって開局・維持管理を行う。その運営には地元のJARLメンバーや地元アマチュア無線クラブが支援する形を取ればいいのだと。これなら永続とは言えないまでも長期の開設が可能になりそうです。たとえ一時生徒が誰も免許を持っていなくても地元の協力で続けられます。

 無線機やアンテナは地元の無線家が提供してくれることでしょう。知らないおじさんに声をかけられたら逃げなさいと教育されている小学生。近所に住んでいても大人が学校に踏み込めば不審者扱い。こんな時代だからこそ、地域の人と学校のつながりは深めたほうがいい。近所の無線のおじさんが学校の無線部にたまにやってきて、交信の指導やアンテナづくりなどいろいろ教える、そんな姿いいと思いませんか?。

 どこかで一例成功しないかな。私もちょっと協力したいですね。

 話は変わりますが、でかいアンテナを建てているアマチュア無線局って、怪しい存在じゃなくて、いざというときの通信手段として最も頼りになる存在なんです。そして、でかいアンテナ付けて走り回っているアマチュア無線の車は、実は最も災害時に優れた、停電にもへっちゃらなオールインワン無線局、一番社会貢献できる素晴らしい車なんです。

 なのに市民は怪しい車が停まっているって110番通報するし、警察さんは走行中の車を止めてまで職質するんですよね。先に警察に出向くから、チェックした上で登録ステッカーくれないでしょうか。アンテナ見ても職質しないステッカー。(笑)

 明るいニュースがひとつ。アマチュア無線の免許を取ろうとする人が今年は増えているそうです。一番のきっかけは大地震、津波、台風などの災害。通信手段が途絶えた経験によるのでしょう。山歩きをする人が増えたのもひとつの要因かも知れません。山では携帯つながりませんし。本来の無線への興味とはちょっと違う点は???ですが、やってみて面白ければ是非楽しんでもらいたい、いろんなきっかけがあって良いと思うので、是非多くの方に免許を取ってもらいたいと思います。

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コメント (12)
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