◎ベイビー・ドライバー(2017年 イギリス、アメリカ 113分)
原題/Baby Driver
監督・脚本/エドガー・ライト 音楽/スティーヴン・プライス
出演/ケヴィン・スペイシー リリー・ジェームズ ジェイミー・フォックス エイザ・ゴンザレス
◎アンセル・エルゴートの耳鳴り
なるほど、ウォルター・ヒル『ザ・ドライバー』へのオマージュね、わかるわ~。
幼い頃の交通事故で両親が目の前で死に、その物心両面の衝撃を受けたことで耳鳴りがやまなくなり、けれど運転の技術が神懸かったものになるという皮肉な設定はいいし、それによって麻薬の入った車を盗もんでしまったことで悪の道に誘い込まれ、足が抜けなくなりつつも足掻きつづけるという展開も悪くない。
耳鳴りを聞こえなくするには音楽を聴くしかなく、いつも聴いているために里親とは会話ができないのかとおもえば、里親は耳が遠く、手話で意思の疎通をはかるという心憎い設定もいい。母親が働いていたダイナーで毎朝食事をとり、そこで働くようになった天涯孤独の少女と恋仲になっていくのも悪くない。
脚本がうまいだけでなく、音楽と画面が完全にシンクロしてる。
見事だな。
起承転結がしっかりと作られ、最後の一対一の決闘までちゃんと用意され、母親との思い出の声でから始まり里親や彼女など出会った人間の声でテープを作るのが趣味で、それがまた追い込まれてしまう切っ掛けにもなり、さらには土壇場の銃撃で耳鳴りは消え、またエピローグでの彼女との再会まで物語の見本のような完璧な脚本だった。