☆パターソン(2016年 アメリカ、ドイツ、フランス 118分)
原題/Paterson
監督・脚本/ジム・ジャームッシュ
音楽/Squrl(ジム・ジャームッシュ カーター・ローガン シェーン・ストーンバック)
出演/アダム・ドライバー ゴルシフテ・ファラハニ 永瀬正敏 カーラ・ヘイワード
☆ウィリアム・カーロス・ウィリアムズへのオマージュ
ニュー・ジャージー州パターソンに住むバス運転手のパターソンは、寛容な男だ。
怒らない。
奥さんが朝起きなくてもご飯を作ってくれなくてもたまに作ったのがとんでもない料理で水で流し込まないと食べられなくても怒らない。バスが電気系統の故障で動かなくなっても落ち着いたものだ。しかしとろいのではなく、散歩の帰りに立ち寄る酒場で一杯の麦酒を呑んでいるとき、女にふられた男がいきなり銃をかまえるんだけど、焦らず素早く飛びつき取り押さえ、銃を取り上げる。ま、おもちゃなんだけどね。
でも、怒らない。
最後に登場する『あっ、は~っ』と叫ぶ永瀬正敏は神様なんだろうか。仕事の合間にいつもつけてきた詩のノートを飼い犬に粉みじんにされた後、偶然に出会うんだけれども、唐突にまっさらなノートを手渡される。また作ればいいんだよといっているようだ。
実に寛容なのだ。
ま、犬に対して『おまえなんか嫌いだ』とはいうんだけど、感情をほとばしらせるのはこのときだけだ。寛容なのだ。町中に現れる双子の意味がわからないけど、優しい生き方とはこういうものなのだな、それは神様もちゃんと見ていてくれるのだな、とおもわずおもってしまう映画。あとになればなるほど、またおもいだしてしまう不思議な魅力の映画だった。
ともあれ、寛容というのはどういうものかを教えてくれる。