Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

NIKON FREAK 432. 小説:小樽の翠38. 翠の木賃アパート

2020年03月03日 | Sensual novel

 

 小樽は山が迫っているので、函館以上に急峻な坂道が多い。真冬にこの街にくると、人や車や街の時間までもがじれったいぐらいに、ゆっくり動く。

 道外の人間にとっては、終日零下の気温に嫌気がさす。それは体が慣れないためもあるが、もう一つは道の歩きにくさに神経を消耗するからだろう。道路の雪が半端にとけ、夜の冷気で固まるとアイスバーンになる。雪というよりは氷だから大変よく滑る。だから、新雪が残っているところを選んで歩く。そんな街を歩くだけでタップリと神経がすり減ってくる。

 南小樽駅の近くにかって翆が勤めていた総合病院がある。翠の木賃アパートも、ここから程近い。

 病院から花銀通りに向かって坂道を下りてゆくと入船通の交差点がある。角に大きな生協があり、この店で十分生活が可能なほどの大きさである。この交差点を曲がって鉄道のガード下を抜け、ルタオの塔を正面にみながら進むと専門学校の古い洋館が建っている。その脇を申し訳程度につけた階段をあがると翆の木賃アパートがある。正面にさらに上の住宅へ続く階段がみえている。

 木賃アパートといっても二階建の棟が続く古い4軒長屋だ。翠がオーナーから借りている。内部は水回りや台所は改装されているが外観は昔のままだから、この一角だけ時間が停まっている。目の前に小さな児童公園があるので、広々とした空間である。

 木賃アパートにしては広いので翆も一緒に住もうよと、いってくる。実際アチキは二階の窓側の小机で原稿を書いたりしているのだから、すでに半分自分の家にしているが・・・。

 近くに温泉銭湯がある。文字通り地面を掘り下げて温泉をくみ出しているので源泉掛け流しの銭湯だ。冬の唯一の楽しみといってよい。暖まるとそれだけで心にゆとりができるほど小樽は寒いのである。

 アチキが小樽にきて最初にしたことが、隣の小樽築港駅側にあるアウトドア屋にでかけ、ブーツ、手袋、帽子を調達した。雪の小樽だ。足下はおぼつかないので傘はさせない。だから滑らないブーツと傘代わりの帽子が必需品になる。

 ここから翆は、バスで駅前のクラシックな建築の中にあるカフェに通っている。そして夜は、南小樽の坂の上にあるスポーツクラブでエクササイスだ。

 こんなふうに、小樽駅と南小樽駅の間が、調度我々の生活のテリトリーになっている。

 

 

小樽市相生町

NIKON Df、AF-S NIKKOR28-300mm3.5-5.6G

1)ISO400、焦点距離90mm、露出補正+0.33、f/11、1/400

2)ISO400、焦点距離32mm、露出補正-0.33、f/11、1/80

3)ISO400、焦点距離56mm、露出補正+0.33、f/11、1/100

4)ISO400、焦点距離90mm、露出補正-0.33、f/11、1/160

iPhon7

5)ISO100、焦点距離3.99mm、露出補正0、f/1.8、1/15

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