Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

ドローイング637. 小説:小樽の翆561. 蝉時雨

2022年09月10日 | Sensual novel

 

 海岸の帰りにナンタルで降りて、翠は準夜勤のために病院へゆく。潮騒の臭いが残ってるだろう。きっと入院患者達には、新鮮な空気かもしれない。それが早く治りたいという意識につながれば、最良の治療薬だ。

翠を見送って、坂道を降りてゆく。

海岸の眩しい光を感じた眼はは、このまま薄暗い家に行くことを拒否している。

もう少し歩いてみようか。

入船交差点から坂道を上がってツカモッチャン家の前を通ったら、小春が洗濯物を取り込んでいた。

青い空にたなびく洗濯物が夏の風物だな。

小春「あら、おじさん、一寸待っててね」

そういって物干し場から洗濯を抱えて降りてきた。

小春「海の臭いがする。アラ翠さんとやってたのね!?」

「そんな当て推量で言われてもねぇー」

小春「あら そうかしらん!!」

そういわれて、思わず股間をみて大丈夫。

小春「やっぱ、海岸で青姦だよねぇーー」

「そう決めつけなくても・・・・」

小春「だって、私が言ったら思わず股間を見たじゃない!」

「誘導尋問の旨い奴だな。そんなの、どこで覚えたんだい」

小春「美希姉ちゃん!」

「やっぱ、あいつか・・・」

小春「夕飯の支度をするからスーパーへ買い出しにゆくの。一緒にゆこうよ。おじさんも夕飯の支度がいるのではないの?」

「うん、そういえば翠の夜食がいるかもな・・・」

そういって小春と並んで買い出しに出かけた。

並ぶほどに小春の身長がグングン伸びてくるのがわかる。

住まいの大きな樹木から闇の鳴き声が一斉に聞こえる。

ツクツクホウシかニイニイゼミだろう。

蝉も求愛行動をしているんだ。

蝉時雨か。

・・・

小樽の夏の夕方だ。

コメント
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