夕方になると家仕事の限界で散歩に出る。ツカモッチャン先生のところへ遊びにゆこうか。
ツカモッチャン先生の美術準備室へゆくと、デッサンが沢山転がっている。この年になっても訓練を怠らない先生だ。だから感性が若い。ひとしきりデッサンの話題を話の魚にして・・・。
ツカモッチャン先生「絵画の世界でも体表面の筋肉は表に出るから、勉強しないと人物画にはならないですね」
「だって解剖学なんか気持ち悪いし性器なんか描くのが恥ずかしい。それってモラルの欠乏だよって言われるぐらいだからさ。世間の勘違いはさ・・・」
ツカモッチャン先生「絵画の世界は、普通の人たちからみると勘違いされていることが2つあってね。それは社会的には、全然知らない人たちもいるんですよ・・・」
「アチキだったら、社会認識で欠けているとすればデッサンと芸用解剖学が必要かなあー」
ツカモッチャン先生「そうだよね。その2つを押さえておけば絵画の道に進めるということです」
「多くの人たちは、石膏の球体や四角形なんか描いてどこか面白いんだろうと疑問に思っているさ」
ツカモッチャン先生「そこが勘違いの元ですよ。趣味の絵画スクールなんか、そんなこと教えたら生徒さん達がこなくなるもん」
「普通の人って努力して学ぼうとする姿勢がないよねぇー。でも古代ギリシャの時代から、そしてレオナルド・ダ・ビンチも解剖学を勉強した。そのダ・ビンチ・ノートがイギリスの博物館にあるよね・・・」
ツカモッチャン先生「歴史を学べばすぐに解る事なんですけどねぇー。努力して勉強する精神を忘れちゃアカンでしょう・・・」
「だからいきなり美大を受験しようとすると、デッサンを勉強する必要があること自体が社会的に認識されていないから、勉強しないまま実技試験を受けている人がまれにいる」
ツカモッチャン先生「それってまわりからみれば超恥ずかしいよね。多分自分は絵が旨いんだと回りから言われているんでしょう。それって解る人から見れば大変恥ずかしいけど、本人は気がついていない。つまり裸の王様ですよ。社会は、そんな勘違いで突っ走るからねぇーー」
・・・・
そんな話が続いていた。
まだ山の際が明るい。随分と陽がながくなった。
そんな初夏といってもよいぐらいの季候が良い小樽である。