デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

ビリー・ハーパーのソーラン節

2007-06-17 07:32:39 | Weblog
 10日まで札幌市で開かれたYOSAKOIソーラン祭りは今年で16回を数える。北海道大学の学生が高知のよさこい祭に着想したイベントで、今ではさっぽろ雪祭りと並び知名度も参加者も全国区だ。赤、緑、青の原色を配した艶やかな衣装でチーム一丸となって踊る姿は美しい。会場周辺の企業活動に支障を来しているとか、地下鉄車内ではマナーを守らない踊り子が目立つといった批判があるものの、その経済効果は大きなものだろう。

 72年によさこいのように派手な衣装で日本のステージに立ったのは、菊地雅章と共演のため来日したギル・エヴァンスに同行したビリー・ハーパーである。68年にはジャズ・メッセンジャーズの一員として来日しているのがだ、聴くのは初めてのことだ。そのテナーはマイクが飛ぶような大きな音で、コルトレーンの流れを汲むスタイルながら感覚は新しい。当時無名のトランペッター、マーヴィン・ピーターソンも一緒で、ビリーと同じような衣装で並ぶ二人の煌びやかな音は70年代を牽引するエネルギーがあった。

 ビリー・ハーパーは77年に「ソーラン・ブシ」と題してソーラン祭りでお馴染みの曲を録音している。北海道のニシン漁の歌で、明治の頃から歌われているワークソングのひとつだ。ハーパー自身、この歌は特別な意味を持ち神聖である曲と語っていたが、ゴスペルに似たソウルフルな美しさがあるからだろう。威勢のいいメロディからのアドリブ展開も自然で、原曲が日本の歌とは思えない広がりをみせる。ハーパーの渋いノドで「ヤサエエンヤンサノドッコイショ」の合いの手が入るが、これはソーラン節の厳かな伝統に則ったものだろう。ポスト・コルトレーンと言われながらも評価の低いハーパーの真骨頂が聴ける作品である。

 ソーラン祭りのルールはダンスミュージックにソーラン節のメロディを一小節含めて、鳴子を持って踊れば基本スタイルとなる。来年あたりビリー・ハーパーをバックに踊るチームが現れないものだろうか。一般からの携帯電話投票数も審査の参考になるというからそのチームに投票したいものだ。
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20 コメント

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ビリー・ハーパーの1枚 (duke)
2007-06-23 18:39:04
皆さん、今週もご覧頂きありがとうございました。25-25 さんと miyuki さんの予想通りスレは伸びませんでした。(笑)実力に比して評価も低く人気もありませんが、輪郭の太いテナーラインが魅力です。「ソーラン・ブシ」はブログ的なベストセラー(笑)でしたが、無伴奏ソロもあり楽しめる1枚です。機会があれば聴いてください。ソーラン節で踊りたくなるかもしれません。
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的は無限 (duke)
2007-06-23 18:35:29
イムクさん、こんばんは。

白木秀雄お持ちでしたか。「祭りの幻想」というアルバムからのピックアップのようですね。民謡を題材にした当時としては意欲的な作品です。白木秀雄という稀代なプレイヤーが日本のジャズシーンを牽引していた60年代の貴重な記録で、今では考えられないような企画でしょうね。

私の記事は下手な流鏑馬のようなものですから、的を外すのはいつものことです。的を外れた矢の如く展開するコメント欄ですので話題は外れるほど面白いですよ。
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またズッコケ (イムク)
2007-06-23 13:42:35
な話になるんですが。

”ソーラン節”と思っていた手持ちのCDが
”よさこい節”というのを発見して今回は何も書け
ないなってがっかりしていました。
でもせっかく何年かぶりで掘り出してきたCDだから
記しておきます。

これはJAZZ MEETS THE WORLDというシリーズに
入っている。#2JAZZ MEET ASIA です。

Yosakoi-bushi、Yamanaka-bushi、
Matsuri no Genza、Suwa
の4曲がはいっています。

Hideo Shiraki, Terumasa Hino、Takeru Muraoka,
Yuzuru Sera, Hachiro Kurita

1965年の録音。こういうのをたまに聴くのも面白いですね。いつも的が外れていてごめんさい。
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日本ジャズ者 (duke)
2007-06-22 18:36:34
4438miles さん、こんばんは。

平岡正明氏の「日本ジャズ者伝説」によりますと、酋長は67年に新宿にきた時は30歳だそうです。最近のことには触れられていませんがどうされているのでしょうね。
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ウ~ン、スントリー! (duke)
2007-06-22 18:31:35
naru さん、こんばんは。

ビリー・ハーパーは後期のコルトレーン・スタイルですので好みでないことはヨーク分かります。(笑)ギル・エヴァンスに同行した時はストレートに吹いておりまして、かなり上手い印象があります。

サミーのCMは強烈でした。あのCMでも多才さがわかりますね。007の作者イアン・フレミングが、生まれ変わったらサミーになりたいと言っていたのを思い出します。今は違う銘柄のウイスキーを飲んでおりますが、サミーを聴くとホワイトを飲みたくなります。今夜あたりウ~ン、スントリー!でしょうか。(笑)
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酋長と・・・ (4438miles)
2007-06-22 14:32:07
どん底のマスターとはいろいろ話をした思いでがありますね。

もう行かなくなって、久しいです。
懐かしい。
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サミー・デイヴィスJr (naru)
2007-06-22 13:20:18
duke さん 皆さん こんにちは!ビリー・ハーパーは、残念ながらリーダー作もサイド作も、1枚も持っていません。ブラックセイントレーベルとか、ヤングライオンズとかの言葉しか、思いつきません!(笑!)ごめんなさい。
 サントリーホワイトのサミー・デイヴィスJrのCMは、しっかりと覚えています。指輪でグラスをカキンカキン!とにかく体全体がリズム!リズム!カッコ良かったなあ!当然、意気がっていた、ボクは飲めないくせに、レッドではなくて、ホワイトのオンザ・ロックを毎晩飲んでいました。スキャットして、踊りながらではなかったけれど・・・・(笑!)
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懐かしのバードランド (duke)
2007-06-21 19:50:23
KAMI さん、酋長の思い出ありがとうございます。

思えば「バードランド」はフーテン族のメッカでした。パーカーは全部揃っているが、白人ジャズはないという店でしたね。懐かしい店のひとつです。

>その当時、私はホワイト(サントリーの安酒)。
私はレッドでしたね。それからホワイトでした。サミー・デイヴィスの影響でしょうか。
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思い出の酋長 (KAMI)
2007-06-21 00:13:20
duke様、4438miles様
酋長は本当に変わった人でした。
会うときはいつもどこかのジャズバーでした。しかも夜の9時とか10時・・。バードランドが営業している時間なのです。
そして「バードの墓参りにいつか行く」のだと言っていました。
その当時、私はホワイト(サントリーの安酒)。酋長はス○ク。飲むものは違ってもジャズを語り合える方でした。
そして、とても心の綺麗な方でした。まるで子供のような純真な心の持ち主でした。


今もどこかを彷徨っていて、ある日突然私の目の前に現れるような気がします。
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おっと! (duke)
2007-06-20 18:09:57
4438miles さん、若い頃は品行方正でしたので後ろ指さされる心配はありません。私はですよ。(笑)
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なーんだ! (4438miles)
2007-06-20 09:55:54
・・・・おまえか!
などということにならないようにしましょうね、DUKEさん!
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北海道ベストセラー (duke)
2007-06-19 18:46:19
4438miles さん、サイドもの所有でしたか。刑の執行対象になりませんのでご安心ください。(笑)

ハーパーの「ソーラン・ブシ」は未CD化のようですが、新千歳空港やYOSAKOIソーラン祭の会場で売れると思いますよ。レコード会社関係各位の皆様ご検討を。アイデア料をお忘れなく。

私がバードランドに行っていたのは72年前後でしょうか。中野ではニアミスでしたが、新宿でお会いしていたのかもしれませんね。
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3枚も売れていた! (4438miles)
2007-06-19 13:24:48
驚異的な枚数ですね・・。

因みに私はサイドものしか所有しておりません。
これも死刑対象でしょうか?
ソーラン節となると北海道限定のお土産みたいで、新千歳空港でのみの販売では・・。

サドメル時代には馬力のあるテナーだなと、感じたことはありますが・・・それ以上は・・。

むしろ新宿バードランドの話に興味ありです。
60年代末から70年代初め、バードランドに何故かいた時間が長いのです。

話題不足につき退場します!
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ベストセラーのソーラン・ブシ (duke)
2007-06-17 22:16:10
KAMI さん、こんばんは。

「ソーラン・ブシ」お持ちでしたか。これで私と 25-25 さんと KAMI さんの3枚、ブログ的なベストセラーです。(笑)

最近のビリー・ハーパーのことは分かりませんが、あの70年代は勢いがありましたね。新宿厚生年金のライブの帰りにはバード・ランドに寄っておりました。酋長とは懐かしいお名前です。一種特殊だった70年代、阿部薫、鈴木いづみ、そして酋長、あの時代を精力的に生きた名を思い浮かべます。
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懐かしい名前 (KAMI)
2007-06-17 21:29:18
duke様、こんばんは。
ビリー・ハーパー、懐かしい名前ですね。
30年位前に、新宿バード・ランドの酋長が私の家に遊びに来たことがあります。一晩中、ジャズを語り合いました。そのときに酋長から、ビリー・ハーパーの事を聞いたのです。話をすると知的な人間で、素晴らしいテナー吹きだと・・。
そして「ソーラン・ブシ」を購入したのです。トレーンの流れを汲む力のあるテナーだと感じました。
でも、何故かそれ以上アルバムを購入することはなかったのです。そしていつしか聴かなくなってしまいました。
最近は、ビリー・ハーパーのことはあまり話題にならないように思いますが、どの様な活動をしているのでしょうか?
そして私にビリー・ハーパーを教えてくれた、酋長は行方不明になってしまいました。放浪癖のある方だったので、今もどこかを彷徨っているのかもしれません。

ビリー・ハーパーの名前を聞いて、30年前の出来事を思い出しました。

今回のテーマとあまり関係ない話ですみません。
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伸びないスレ (duke)
2007-06-17 19:25:12
miyuki さん、こんばんは。

「SOMALIA」は政治的主張もあり面白い作品です。ローチと共演したせいか音楽以外のローチの思想の影響が強いですね。スタイルが完成された時期ですので、これ一枚でハーパーを知ることができると思いますよ。

>伸びないような気が...
>私も、そんな気が・・・
私もそう思います。(笑)
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伸びない人気 (duke)
2007-06-17 19:19:39
25-25 さん、早速のコメントありがとうございます。

硬派の 25-25 さんがビリー・ハーパーお持ちとは驚きました。それも「Sohran-Bushi」(笑)
私も度々聴くわけではありませんが、やはりビールを飲みたくなる暑さがあります。

ギル・エバンスとのセッションは編曲の巧さもあり、ハーパーの粘りつくような音が一層映えます。ステージではマーヴィン・ピーターソンと争うように吹いておりました。サドメルやマックス・ローチとも来日している割には知名度、人気とも低いですね。やはり決定的な作品がないのも一因でしょうか。
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たった一枚だけ (miyuki)
2007-06-17 12:08:46
みなさん、こんばんは。

>>25-25さん
>すいません、伸びないような気が...(シ刑)
私も、そんな気が・・・(わたくしも、シ刑?)

所有しているのはたった一枚。
「SOMALIA」
あまり聴いていないのですよね。
なので、ベスト3は書けません。すみません。

なんというか、ビリー・ハーバーはうねっている、
という印象です。
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このスレ、、、 (25-25)
2007-06-17 11:45:10
すいません、伸びないような気が...(シ刑)

ビリー・ハーパーのリーダー作の所有は
2枚のみです。

1)「Sohran-Bushi」
2)「Love On The Sudan」

2枚とも、80年代初頭にLPで買ったものですが、
現在までに聴いた回数は、片手で収まります。
盤面も、AいやAAを付けてもいいくらい(笑)。

あとサイドでは、
「The Last Session/ Lee Morgan」とか、
ギル・エバンス楽団在籍時代のものくらい。
(「笠井キミコwithギル・エバンス」「ギルplays ジミ・ヘン」あたり)

よくも悪くも、「暑苦しすぎる」感じですね、
ビリー・ハーパー。
真夏の夜に1回聴いて一汗かいて、また1年後。。。

そんな、感じです、僕的には。


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ビリー・ハーパー・フェイバリット3 (duke)
2007-06-17 07:36:49
皆さん、こんにちは。

ビリー・ハーパーは最初に生で聴いているせいか印象に残るプレイヤーのひとりです。70年代を代表したテナーにも拘らず一般的な人気は低いようです。お好みのアルバムお寄せください。

管理人ビリー・ハーパー・フェイバリット3

Capra Black (Strata East)
Black Saint (Black Saint)
Soran-Bushi (Denon)

今週もたくさんのコメントをお待ちしております。YOSAKOIソーラン祭のキーワードでご覧頂いた方も是非コメントお寄せください。作家の東直己氏や、STVラジオで活躍中の日高晤郎氏のようなよさこい批判論もどうぞ。
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