コタツ評論

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土下座する人させる人

2011-05-11 19:02:00 | ノンジャンル
遅きに失したが、という書き出しは変だな。いち早く書きたかった、ということはまったくなくて、できれば見たくなかったからだ。もちろん、食中毒ユッケ社長と東電社長の土下座のことである。嫌なものを見た、と思った人は、俺だけではないはずだ。

土下座をする人もさせる人も、あざとい。する人もさせる人も、そして見物衆も、無意味と知っているところが、あくどい。謝罪ではなく、泣訴ではなく、命乞いでもない、予定調和の集団リンチ劇と、露出させてみせたのが、畠山鈴香の土下座だった。

土下座とは、「皆様」へするものではなく、「一人」にするものだ。唐突に1対1に持ち込み、緊急かつ必死の訴えを、強引に対手へ手渡そうとする、狂人の振る舞いに思えるものだ。実際に見たわけではない。写真が残っているわけでもない。

想像したに過ぎないが、明治34年(1901年)12月10日、馬車前に「よろめき出た」羽織袴のその人は、白髪頭を振って土下座したに違いない。畢竟、土下座とは、する人とされる人の間においてのみ、成り立つものではないか。

(敬称略)