今朝の日本TVの『ウェークアップ!ぷらす』という番組をチラ見していたら、ちょっと驚くやりとりがあった。中継画像に猪瀬直樹都副知事が出演していて、めずらしくネクタイを締めていたので何を言うかと思ったら、「ちょっとその前にお聞きしたいんだが、前原さん、先ほど実力でとおっしゃった。これはどういう意味ですか?」とスタジオにいる民主党の前原誠司政調会長に質問した。突っ込みどころとなると、冷静さを印象づけるために小さめな声になるのが、かつてジャーナリストとして鳴らした猪瀬らしい。
都庁舎から中継している猪瀬の画面が、スタジオの前原や司会の辛抱治郎の背後に大きく映し出されている。発言したときには、TV画面には正面を向いた猪瀬一人しか映っていない。「竹島を実力で取り戻すという、その実力とはどういう意味ですか?」と「カメラ目線」になると、前原より視聴者へ直に問われている感じになる。スタジオの横並びの一人としての発言なら、どんな極論や暴言も一瞬のショーくらいに聞き流すのだが、ちょっとギクリとしたものだ。
そのせいか、手元のモニターを視聴者と同様に見ていたはずの前原は、ひどくあわてた。聞き間違いのないくらい、噛んで含めるように猪瀬は尋ねたのに、「えっ、どういう意味ですか?」と尋ね返した。その前原の様子は、まさに「キョドって」いた。よく聴こえなかったかのように、わざとらしくイヤホンに手を添えながら、「おっしゃっている意味がよくわからないのですが・・・」と付け足した。「いや、だからね、あなたが先ほど、実力でとおっしゃった、その意味を訊いているんですよ」と繰り返す猪瀬。
「それは武力行使という意味ですか?」とまるで猪瀬が竹島奪還に武力行使も検討せよ、といったかのように憤慨の口調になる前原。明らかに支離滅裂な返答を見かねた司会の辛抱治郎が割って入り、猪瀬に、「そういう意味(武力行使)で前原さんはおっしゃったんじゃないと思いますよ、ねえ」と前原を見やる。前原は口をとんがらしてうなづき、ようやく都政問題に話題が変わった。番組収録後、前原は辛抱に、「先ほどはどうも」くらいはいって、辛抱は「いや、猪瀬さんも人が悪い」くらいは返したかもしれない。
そんなところまで想像しながら、つくづく、しみじみ、この前原某とか、岡田某とか民主党首脳陣はダメだなあと思った。前言を翻すようで申し訳ないが、前原某に比べれば、野田首相は英明といってよいと思ったほどだ。もちろん、前原某を政調会長にしたのは野田首相なのだから、あきらかに不明というべきなのだが、いささか同情心すら覚える。karaさんではないが、いまごろ泥鰌は噛むべき臍(ほぞ/へそ)を探して腹をさすっていることだろう。
あらためていうまでもないと思うが、このやりとりでどこがダメだったか。まず第一に、突発的な質問に対処できない、頭の回転の遅さを露呈してしまったことだ。猪瀬の質問は、予定外のアドリブだったろう。それにあわてた。予定外の質問くらいにあわてるような政府首脳が、はたして国家の想定外の危機に対応できるかどうか。
第二に、前原が出演した目的は、民主党きってのタカ派らしく、韓国大統領の軽挙妄動に、「実力行使」の牽制球を投げ、併せて天皇土下座せよ発言に怒る国民の求心力を民主党政府の「断固たる対応」への期待に引き寄せる目的だったはず。ところが、猪瀬から、「実力」の中身を問われて口をモゴモゴさせる始末。誰しもが武力行使を念頭に浮かべる「実力」という言葉を使う以上、その武力行使以外の具体的な中身を問われることは、当然想定内だったはずだ。前原某は、想定内の質問にも答えられなかった。
よって、第三はいうまでもない。韓国や中国の当事者は、すみやかにこう結論するだろう。日本は、武力行使どころか、「実力」のオプションも実はない。どのような侮日挑発を継続しても問題はない。前原某の役割は、日本が持っているカードをちらつかせることにあったのだが、なんと持っていないカードを見せてしまった。常人にはできないことだ。こういう人を世間一般では、何者と呼ぶのでしょうか。正解された方には、もれなく民主党のマニュフェストパンフを進呈します。奮ってご応募ください。
(敬称略 一部匿名)