この2,3日、『レイモンド・カーヴァー傑作選』(中公文庫 村上春樹訳)を仕事をさぼって読んでいる。その気になれば、2時間くらいで読める短編集だが、ひとつ読むとお腹いっぱいになるので、まだ半分過ぎたあたり。村上龍とか村上春樹とかは、一度も読んだことはないと思いこんでいたが、「大聖堂(カセドラル)」は既読だった。どこかのアンソロジーでも読んだのか。レイモンド・カーヴァーとポール・オースターがごっちゃになっていた。ポール・オースター原作の映画を何本か観ていたせいかな。カーヴァーの方がはるかに、「足下に流れる川」が深い。村上春樹の訳文はたいしたもの、といったら村上ファンから驚かれた。村上春樹を読んだことがなかったのでしかたない。村上二人の小説はタイトルに引くのだな。おっさんになると食指が動かない。「サマー・スティールヘッド(夏虹鱒)」に唸った。ネタばらしはできないが、ネタとしては破綻していることは誰でも読めばわかる。しかし、シュールに逃げていない。それどころかえぐいほど生々しい。カーヴァーは詩作もする人だそうだ。この作品は、詩と小説の境界にあるように感じた。傑作選だから、ベストヒットアルバムみたいなものだろう。カーヴァーのB面を聴きたくなった。世間は、「ちょっといい話」や「ちょっと怖い話」を好むが、ちょっとな話なんてないんだというカーヴァーの声が聞こえてきそうだ。
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