同名の原作本は2021年本屋大賞翻訳小説部門第1位、2019年・2020年アメリカで一番売れた本というので、楽しみにしていました。
1969年、ノースカロライナ州の湿地帯で発見された、町の金持ちの青年の変死体。
その犯人と疑われた、湿地で孤独に生きて来た少女カイアの半生と、事件を巡る裁判の行方を描いたサスペンス・ミステリー。
1969年、ノースカロライナ州の湿地帯で発見された、町の金持ちの青年の変死体。
その犯人と疑われた、湿地で孤独に生きて来た少女カイアの半生と、事件を巡る裁判の行方を描いたサスペンス・ミステリー。
カイアの家族は湿地帯の奥に暮らしていたが、夫の暴力に耐えかねて母親が失踪。
兄や姉たちも次々に家を出て行き、その父親もが失踪して、6歳の彼女は一人きりとなる。
父親の真似をして湿地帯のムール貝を収穫し、雑貨屋の黒人夫婦に買い取って貰い、何とか食べて行く。
雑貨屋夫婦に励まされて学校に行ってみるが、裸足でボロ服を着た彼女は苛められて一日で逃げ出す。
兄ジョディの友人だったテイトという青年が、彼女に読み書きを教え、本を貸す。
カイアは恋心を抱くが、大学に進学した彼は彼女を置いて行く。
金持ちの青年チェイスが彼女に近づいて男女の仲になるが、彼にはフィアンセがいて、しかも暴力男であった。
そしてチェイスの死体が発見され、町の人々は「湿地の女」が犯人だと囁き合う…
6歳の時に家族から捨てられて、カイアは一人きりで生きなければならなかった。
途方もない孤独の中で、自然を友達にして必死に生きる。
自然への探求心がカイアの生きるよすがとなり、丁寧に調査しスケッチする。
これはミステリーですが、差別され、偏見の元に孤立していたカイアの成長物語でもあるのです。
野生児の筈のカイアがいつも清潔に見えるとか、服が綺麗すぎるとか、野卑な行動がなさすぎるとか不満はありますが、しかし雄大な湿地帯を見せてくれる映像の力は凄い。
地平線まで広がる湿地帯なんて、日本人の私には到底想像できませんから。
その無限に広がるような湿地を、少女カイアは縦横無尽に動き回って暮らすのです。
そして異質なものを排除しようとする町の人々、人間のすることは何処でも一緒だなあと。
最後のアッと驚くどんでん返しが、どうでもよいことのように思えてしまうのは、この作品の骨太な内容ゆえでしょうか。
その位したたかでなければ、6歳の時から一人で湿地に生きるなんて到底できなかったということか…
原題はそのまま「Where the Crawdads Sing」。
「ザリガニの鳴くところ」というのは、映画の中でカイアの母親が、何かあったらザリガニの鳴くところまで逃げるんだ、と助言を残すのです。
誰も知られず静かに暮らせる場所、というような意味らしいです。
公式HP