Zooey's Diary

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「ザリガニの鳴くところ」

2022年12月24日 | 


映画を観て、どうしても気になって原作を読んでみました。
ディーリア・オーエンズ著、全世界1500万部突破というベストセラー。

映画と同じように、チェイス・アンドルーズの殺人事件とカイアの成育シーンが交互に語られます。
やはり心理描写は、本の方がずっときめ細やかです。
カイアの母親がある朝出て行ったまま帰らなかったこと、その母を待ち続ける幼い少女の気持ちが何度も何度も繰り返されて、痛々しい。
上の兄弟たちも暴力的な父親に愛想をつかして次第に家を出て行き、遂にすぐ上のジョディも出て行ってしまう。
ジョディとカイアはとても仲が良かったのに、どうしてジョディは彼女を連れて行かなかったのかと映画では不思議でしたが、本を読んで納得しました。
後にジョディがカイアと再会した時に語るのですが、彼はその時75セントしか持っていなかったのだと。
彼とてもその時、10歳くらいだった筈。
それで6歳の妹を連れて行くことは、不可能ですね。

ホワイト・トラッシュ(貧乏白人)であるところの父親が、どんな家に生まれ、どうして飲んだくれの暴力男になってしまったかも、本では詳しく語られています。
暴力的な父親と二人きりになってしまったカイアだったが、ごくたまに父親と穏やかな時を持てたこともあった。
そしてとうとうその父親にも見捨てられ、たった一人になってしまった少女の孤独の叫びには胸が苦しくなります。

映画では語られなかった「ザリガニの鳴くところ」の意味も、説明があります。
学校にも行かなかったカイアに読み書きを教えてくれた少年テイトが、こう言うのです。
「茂みの奥深く、生き物たちが自然のままの姿で生きている場所ってことさ」と。

映画でも本でも、ラストのどんでん返しに驚愕するのは同じですが、本の中の例えばこうした文章がその理由を正当づけしているかもしれません。
”ここには善悪の判断など無用だと、カイアは知っていた。そこに悪意はなく、あるのはただ拍動する命だけなのだ。たとえ一部の者は犠牲になるとしても。生物学では、善と悪は基本的に同じであり、見る角度によって替わるものだと捉えられている”
ミステリーとしてはやや弱い所があるのは否めませんが、家族に捨てられ、湿地の中でただ一人生きて来た孤独な少女の成長物語をじっくり味わうことができました。

コメント (2)
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