ドラマのとびら

即興の劇や身体表現で学ぶ、教える、浮き沈みの日々とその後

「ハックの冒険」ワークショップ、進化し続けています

2015-05-31 13:05:16 | 授業・教育


2013年6月の異文化間教育学会にむけて、津田塾大学の吉田真理子先生と共同開発したプログラム。
今年も、特別授業として実施しました。

特別授業としたのは、90分では良い学びにならないと判断したから。
2時間半を予定して、土曜日に実施。
参加者は15名。畳の部屋を借りました。

まずは今日の趣旨を説明してから、ウォームアップ。
せっかくだから畳でないとできないことをと、這ったり四つんばいになったりしてジャンケンで勝ち上がっていくゲームをしました。

次に、勝った順に3人ずつのグループに。
このグループで実際に言っていることと、心の中で思っていることが違う場面を考えてもらいました。
ひとことずつセリフのあるシーンを演じてもらった後、フリーズ。
私が肩をたたいて、そのときの心の声をひとことずつ。

今度はそのグループでA、B、Cを決めてもらい、5人ずつのA、B、C三つのグループをつくりました。

そこで、台本を渡します(関心を持っていただいた方は、『教育方法におけるドラマ技法の探求』明石書店をお読みください。台本も使用した資料もすべて収録されています)。
ハックと奴隷のジムは、筏でミシシッピ川を下っています。自由州への脱出を夢見てジムが必死でケーロウの明かりを探している場面。

「まずは一区切りずつ順番に読んでください」

「登場人物はハック、ジム、ジョン、パーカー、そしてナレーションの5人。3分あげますから、配役を決めてください。ただし、ジャンケンでなくて、話し合って決めてね」

「では、その役で読みあわせをしてください」

「筏は八畳ぐらいあるんです。このくらい(と八畳を確認)。広いですね。この上に土をもって屋根をつけて、雨でも焚き火ができるようにしてある。筏は上流から下流へ流れるだけで上流へ漕ぐことはできません。じゃあ、どちらからどちらに流れているのか。それから重要な小道具があります。ジムの上着です(と布を渡す)。今度は立って読んでみてください」

「ジムは必死でケーロウを探していますね。ケーロウはどちら? ジョンとパーカーはどの方向からやってくるのでしょう。もう一度やってみましょう。」

「カヌーが筏にくくりつけられているのですが、筏がこう流れているとすると、カヌーは川上にあるでしょうか、川下にあるでしょうか。そう、川上ですね。川上から手繰り寄せてくださいね。ジョンとパーカーは銃を持っていますが、ハックと出会ったとき、銃はどのように持っているでしょうね。そんなことを考えながらもう一度」

こうして繰り返している間に、読んでいるだけだったのがどんどん夢中になっていく様子。

本番は、台本を演じたあと、パーカーの「筏の上は、白人か黒人か?」という問いに、全員がハックとなって心の声を発してもらいます。
このとき、となりのグループに手伝ってもらい、ハックにジョンとパーカーが迫っているポーズをそのグループが演じたとおりに模倣してもらい、パーカーにセリフを言ってもらいました。
そして私が肩をたたくタイミングで心の中をことばにしてもらいました。

こうして3グループが終了した後、もとの3人組へ。それぞれに作品の背景となる異なる5つの資料を、他のグループに見せないようにと渡しました。ここで90分経過。休憩。休憩中に資料を読んでいます。

再開。3人で資料の内容をシェア。5人のグループに戻ったときに、どう伝えるか話し合います。

5人グループで、それぞれの資料の紹介。この物語の背景が明らかになってきました。
その上で、シーン2のみを再演。ひきつづき心の声。

本来ならここでアンケートを書いてもらって、心の声がどう変化したか各自で考える時間をもつのですが、時間が押してきたので、すぐに話し合いに入りました。

パーカーの問いに自分がハックだったらどう答えるか。白人、黒人、その他に分かれてみました。それぞれの立場から意見表明。

次に、ジグソー活動のあと、気持ちが変わったか変わらなかったかで分かれました。そしてまた意見表明。

ここで10分超過。今日の感想をひとこと書いてもらい、アンケートは後日提出ということでワークショップを閉じました。

2時間半では短かったか。このワークショップはやはり3時間必要。台本を5回も読む必要があったのかどうかは再考ものですが、今回については物語に入り込むために必要だったと感じています。

終わった後、「おもしろい」「楽しい」と言ってくるので、つい「嬉しいけど、楽しいだけでなくって、学んでね」とよけいなことを言ってしまった私。

感想には「この方法は時間がかかるけど、時間をかけるだけの価値がある」と書いてありました。

参加してくれたみなさん、長時間お疲れ様でした。
コメント
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