極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

創造的国家財政(上)

2011年09月09日 | 政策論









【悪循環を立ち切る知恵】

「通貨危機」が突然のように何度も世界を襲い、リーマン・ショックは大恐慌の再
来のように恐れられ衝撃を与え、その後もドバイ・ショック、ギリシャ危機を起
点とした金融危機が発生し、超金融緩和政策が導入するも、グローバルマネーが
急増し、バブルの発生と崩壊の不安を高めるという悪循環を招く。このような不
安定な国際状況の下、中国などの新興国と米国、欧州などの先進国との間に「通
貨安競争」が進行、第2次世界大戦につながった戦前の経済状況と類似する。

1944年に戦勝国側が決定したブレトンウッズ体制は、各国の保護貿易、競争的為
替相場切下げなどの近隣国困窮化政策が第2次世界大戦の連因になったとの反省
から、国際貿易の自由化と経済成長、雇用の促進を目的とする国際通貨体制だっ
たが、通貨制度は世界経済の安定を目指し、固定相場制から変動相場制へ移行す
るが、環境変化に追いつけず、逆に現行の通貨体制が世界経済を苦しめるという
ことになり、小手先の改革では通用しない段階に来ている。

先進国の成長率が落ち、新興国が戦後の日本のように高度成長し、先進国と新興
国の比率は、2000年では8:2だったのが、2010年では7:3となり、2020年には6:
4になる可能性が高くなると予測され先進国から新興国に世界経済のウェイトが移
行しつつあり、世界経済・金融問題を話し合う舞台が先進国首脳の「G7(7カ国)」
から、新興国も含めた「G20(20カ国)」になる。

    (1)通貨の競争的切下げの
    (2)回避為替レートの柔軟性の向上
    (3)過度の変動や無秩序な動きの監視
    (4)不均衡是正のための参考指標の議論
    (5)新興国の資本規制の容認
    (6)あらゆる保護主義に対抗
 
                
2010年11月12日「G20首脳会議要点」


【グローバルマネーの制御】

米国が大きい経常赤字を計上する一方、新興国は輸出をベースとした経常黒字を
計上し、その黒字を使い新興国は、「為替介入」しドルなどの外貨を購入→「外
貨準備(預金)」を蓄積。新興国は自国通貨の為替レートを低めに誘導し、輸出
を伸ばしている(「飢餓輸出」「過剰生産」)。米国と周辺国の構造は、戦後の
ブレトンウッズ体制と近似し「新ブレトンウッズ体制」といわれる。過去におい
ては、新興国に「通貨危機発生」→「為替レート暴落」したが、最近は「リーマ
ン・ショック」「ギリシャ危機」などの「大きな経済・金融に危機発生」→「通
貨下落」と変化する。

このため、先進国は景気回復のためゼロ金利や非伝統的金融政策(=(1)将来の金
融政策、短期金利についての予想をコントロール(2)特定の資産を大量に購入(3)
中央銀行のバランスシートの規模拡大
)を導入。このためグローバルマネーが急
増し、年金などのマネーが蓄積せず、過剰マネー流入で、海外流出するという欧
米の通貨安政策が進行し、高度成長期の新興国に流れ込み、新興国の通貨高をもた
し、韓国、インドネシアなどの新興国では「資本規制」を導入したところも多い。
日本の経済状況は良くないが、先進国のグループの中では経済・金融危機が発生
していないというのでグローバルマネーが流れ込み「円高」傾向にあり、リーマ
ン・ショックやギリシャ危機を経て、過剰なグローバルマネーは、国も企業も投
資対象としなくなり、商品、金(Gold」に流れ込んだ。
この結果、世界の1日の
為替取引量が平均4兆ドルと、年間の貿易取引高は18兆ドルの百倍を記録するほ
どで不安定要因になっている。



【国際通貨制度の再構築】

今年のG20の議題は、「米国」の経常赤字と「中国」の経常黒字であり、中国が固
定的な通貨制度を採用しているために「人民元安」、固定的な通貨制度を維持の
ための外貨準備が増大が問題になり「人民元の切上げ」に集中する
。一方、超金
融緩和の実施で、低金利のマネーを大量に供給した米国はドル安となり新興国の
不評をかった米国は、「
不均衡是正のための参考指標」として「経常収支」の黒
字・赤字のGDP比率を一定の範囲(4%)に収める数値基準を提案
。これによれ
ば、今年は大幅黒字国のサウジアラビア、中国、ロシア、ドイツなどが軒並み対
象(日本、インド、米国は外れる)となる。これは、1944年のブレトンウッズ会
議で英国から同様の数値基準が提言するが、莫大な経常黒字を計上していた米国
はこれを拒否した史実がある。

ところで、国際通貨制度改革の議論には、(1)中国が主張している「IMFのSDR
(特別引出権)」を基軸通貨として導入案(2)「金本位制」を再導入する案、
(3)フランスと中国の国際通貨制度の導入案などがある(→欧州の単一通貨ユ
ーロの発行)。日本の立場としては、東アジア共通通貨導入を長期目標とし、ア
ジアの経済統合(緊密化)を実現する努力が大切だろう。「決済システム」など
のインフラをセットにした「国際通貨システム」(宿輪純一『貨幣経済学入門』)
の具体化も標榜すべきだろうと思われる。前出著者の提案は「固定相場割と変動
相場制の違いはその為替レートの存在する時間の違いである。望ましいのは“固
定”ではなぐ安定”的な通貨制度であり、“最終的”な方向は共通通貨であろう。
最も民間にとって望ましくないのは、ときおり大きく動く現行の通貨制度なので
ある」(「同著まえがき」より)とむすんでいるが蓋し同感である。


  ここ数年のとくに商品市場の動きの特徴として、階段を上るように価格
  のレベルを変え、一度上がるとなかなか落ちないという現象が見られる。
  これは年金基金(Pension-Fund)などの期間の長い運用資金が流人して
  いる可能性があり、そのために長い期間落ちないと考えられている。日
  本も含めた先進国の成熟化により、年金基金などの長期運用資金が増大
  している。つまり、国民の目から見ると、将来のために年金を積み立て
  るが、その積み立てた資金が回り回って、原油や穀物などの商品価格を
  上昇させる可能性もある。

                   宿輪純一 著『通貨経済学入門』


下方降下がグローバルマネーの産業資本主義的側面とすると下方硬直がグローマ
ネーの英米流金融資本主義的側面が特長だとすると、各国の国民経済は、生活資
本主義的側面(?)が下方硬直だと言ってみても何の問題解決にならないことは
誰でしもわかることだろう。そこで少々飛躍するが『東アジア共通通貨』の有効
性について考察してみる。

【東アジア共通通貨構想】

東アジアの経済統合→「東アジア共通通貨構想は、欧州の「ユーロ」誕生もあり、
意識として高まはしても現実は遅々として進まない。アジアでは、ACU(Asian
Currency unit)の検討がアジア開発銀行(ADB)でも日本でもなされたが、単一
通貨に最も適しているエリア(最適通貨圏)といわれた欧州でさえ、経済統合の
第一歩といわれた欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC : European Coal and Steel Commu-
nity)から約50年かかった。欧州とはくらべものにならないほど国ごとの経済の
発展度合いが違うアジアで、
欧州と同じことが簡単に実現する可能性については
低くみられているが、本当だろうか
。「調査なくして発言権なし」の毛沢東の言
葉を引用するまでもなくわたしは疑問に思っている。

「通貨には経済的性質のほかに、政治的、そして。文化化、宗教的な性質をもつ。
金融政策はストレートに通貨発行量を操作し、財政政策も通貨価値に影響を与え
るが、通貨統合(同盟)の場合には、マクロ経済運営に関する協力というよりは、
主権の放棄が不可欠となる」という宿輪の主張は傾聴に値する。

  
   例えば、欧州通貨同盟の場合には、金融政策は ECB(European Centra1 Ba-
    nk: 欧州中央銀行)が一元的に司り、財政政策でも安定化協定により、
  財政赤字はGDPの3%以内という粋がはめられている。つまり、通貨同盟・
  統一通貨までいかなくても通貨安定のためには政治的協調が不可欠なの
  である。しかし、ASEAN(Association of Southeast Asian Nations :東
  南アジア諸国連合)は助言機関の域を脱しておらず、現時点でアジアに
  政治的協調の機運は見えていない。アジア諸国は、民族・歴史・宗教な
  ど国の成り立ちや政治体制が異なり、政治的統合の機運はほとんどない。
  また、通貨は「国旗」のような象徴的な機能もある。まず一つになろう
  という気持ちの表れがなければならないが、この点でも明らかに無理で
  ある。アジア通貨危機、そしてその被害が拡大した背景は、アジア通貨
  がドル・ペッグ制などの固定的通貨制度を採用していたことにあるとい
  える。もちろん、自国と基軸通貨国のファンダメンタルズが同じスピー
  ドで変化するときには問題は起こらない。しかし、それはありえない。


                   宿輪純一 著『通貨経済学入門』 


としながらも「ACUにおいて、ECUと同じ取決めをするとすれば、各通貨の為替相
場を相互に固定し、一定の範囲を超えると各国政府に「無制限の介入責任」を課
すことであるが
いずれにしてもその本質は固定相場制である。通貨バスケット
制であろうがACUであろうが、固定相場制の性質を持つ限り、通貨危機が起こる
素地は残る」と返す言葉で指摘する。そういことなだろう。変動相場制は為替レ
ートの変動がショックアブソーバーとなる限りにおいては。変動相場制を採用す
ることは、自国通貨の価値すなわち経済の実力を確認する機会であり、固定相場
制の通貨制度では、市場でファンダメンタルズに基づく通貨価値の確認ができな
ければ対策の打ちようがなく。一見、逆説的であってもアジア諸国にとっては「
変動相場制こそが通貨価値安定の近道」と考えることもできると揺れ動き、一国
覇権、統一貨幣固定制への迷いが垣間見られる。


日本も東アジア共通通貨を推進しているが、実際は、英国と同じ立場で、アジア
と米国との経済的そして政治的関係があり、東アジア共通通貨に参加できる可能
性は低く、英国と同様にアジアと米国との経済的そして政治的関係を共に重視し
ている。ならばこそ、日本経済のアイデンティティーを必要とする。人民元は国
際化しておらず固定的な通貨制度を採用しているが、人民元建ての貿決済もスタ
ートし、人民元建て債券の発行もスタートし、通貨スワップ協定が結ばれている。
また、近隣諸国との人民元の紙幣の流通もスタートし徐々に広がりつつあるが、
いくら経済規模が大きいからといっても、国際通貨でない人民元がすぐに基軸通
貨になることは困難だとみるのは衆目と一致する。

【欧州連合を手本として】 

そして、この本はの「欧州は、ギリシャを中心とした南欧の危機で経済的な窮地
に陥っているが、経済統合からユーロ統合に向かう道は、実は各国の経済改革の
道でもあった。このプロセスは日本の改革にも活用可能であり、アジアにおける
貿易や金融の経済統合が進んでいくと政府間の比較と競争が始まる。その過程で
自国の財政や経済政策の改革が進んでいく。ユーロでは「収斂基準(Convergence
Criteria)」
が導入され、EU加盟国は、物価の安定性、政府の財政状態、為替
相場の状況、長期金利の水準などの基準が求められている。欧州は最近では経済
の成長とともにインフレに悩まなくなってきたが、欧州通貨の歴史はインフレとの
戦いであった・・・財政赤字で世界一の日本であるが、アジアの経済統合を目指
し、日本も経済改革の強い目標を持つことにより、強い経済への改革が推進でき
る。比較という意味では、2回の通貨危機を経て、その危機感をベースとした最
近の韓国経済の躍進が著しい。日本とくらべて多くのFTAを締結し、EUおよび米国
とも締結している。現在、すでに始まっているが、韓国政府との比較により、日
本も国を挙げての改革が進む可能性もある」とし欧州連合の通貨通貨体制=経済
連合体を手本とすべきだと提案する。
 

 
                             この項つづく


    

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