極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

アキレスの盾

2011年09月26日 | 地球温暖化





【日本中枢の崩壊 VS. 復興日本】

バンク・オブ・アメリカなどに対する毒入り証券の買い戻し請求がくすぶり
地方の中小金融機関は2008年以降、400行以上が経営破綻が続いているとい
て、雇用も大きく落ち込むなか、野党の財政赤字削減要求からオバマ政権は
財政政策をとりえず、FRBによる量的金融緩和QE2も切れ、このまま緊縮
財政を続ければ景気後退が加速し、かといって、量的金融緩和を続ければ、
為替切り下げ競争をひどくし投機行為を加速させるというジレンマに直面し
ている。また、為替切り下げ競争(=近隣窮乏化政策連鎖)による円高は政
府・日銀は為替介入を不可避の反面、効果は限定的だと見られている。他方、
東日本大震災による震災復興にも、多額の財源が必要で、従来の経済政策で
は誰の目にも限界が見えている。

それでは、この世界金融危機から抜けて行くための具体的な政策提案として
孫正義や金子勝慶大学教授などからなされている。世界中で再生可能エネル
ギーへの投資を一気に推し進め「新しい産業革命」を起こしていく政策だ。
米国の“グリーンニューディール政策”をみると一筋縄でないこともわかる
わけだが「日本中枢の崩壊 」「経産省不要論」などが話題になる日本のよう
な“巨大な官僚機構の抵抗(腐敗)”は見られない。それらを考慮しても日
本の再生・復興容易ならざることも白日に曝されいるわけだが、出来ること
から粘り強くやっていくしかないないなぁ~という言う思いしかない残らな
い。



復興のコアとなる「再生エネ法」も今後の運用如何によれば、骨抜き・反動
に憂き目に合うかも知れない。今後この件もブログテーマの1つである『地
球温暖化』で考えていきたいが、ここでは法の骨子を整理する。

1.買取価格の決定:政府(経産省)原案では経済産業大臣が決定→価格設
 定に関与する第三者機関「調達価格等算定委員会」を設け→委員の選定は
 国会の同意条件が追加。買取価格→経済産業大臣、農林水産大臣、国土交
 通大臣との協議のうえ最終決定(まだ委員会のメンバーも買取価格も決ま
 っていない、経産省が「第三者委員会」を乗っ取り要注意。再生可能エネ
 ルギーを妨害してきた経産省の「意向」だけで決められなくなった)。

2.再生エネ法は、発電事業者に長期間、有利な固定価格で買い取るように
 電力会社に義務化。経産省原案では一般家庭の太陽光発電の余剰電力のみ
 が1kWhあたり40円以上と高く、他の風力、地熱、小水力、バイオマスなど
 は15~20円と低い一律の買取価格→再生可能エネルギーの種類に応じコス
 トをきめ細かく決める→自然エネルギー選択肢の拡大。

3.電力会社は、買取価格を電力料金に上乗せすることができる。その際、
 電力料金の上昇が産業の国際競争力を奪うとの批判に応えて、電炉メーカ
 ーなど、製造業平均の8倍以上の電力多消費産業には負担軽減措置を講ず
 ることになる。

以上となるが、これに避けられないのが「電力自由化→発送電分離」であり
早急な法制化、あるいは、特区設定などの繋ぎ(ブリッジ)政策など推進の
併走が喫緊課題と浮上する。また、これらに答えうる政権かどうかの判断は
付託したわたし(たち)の課題でもある。


※尚、金子勝教授は「インフレターゲット論」をポピリズムだというがこれ
はまったくの誤認と言わざるをえない。これは、自身も認めるように、政治
領域の共同幻想ならぬ、経済領域の信用・通貨の共同幻想を想定するなら「
毒をもって毒を制する」が常ならざる世界と思い定めなければ、軍事ケイン
ズ主義やグリーンイノベーションケインズ主義すら理解できていないことを
意味すると考える(「日本版グリーン・ニューディール再論―日本復興計画
その5」)。このことはまた後で考察してみたい。




【水素燃料自動車というアキレス】





世界一のマツダの水素ロータリエンジン技術と廃油からつくられた水素燃料
で車が実現した。あらゆる産業から排出される廃油から水素を取り出し、乗
用車を走らせようという世界初のプロジェクトが進められているが、液体の
中に太陽を造るという"常識外れ"の発想から始まった。プロジェクトを進め
る愛媛大教授の野村信福の研究チームだが。水中プラズマ技術は愛媛大学の
豊田洋通准教授らの研究で以前から注目していたが、まさかこのようなこと
で注目を浴びるとは6年前には想像もつかなかった。


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野村の斬新な発想は居酒屋で生まれたという。豊田と飲んでいた時、気体か
ら作るのが常識だったプラズマを液体で作ることを思いついた2人は、電子
レンジのマイクロ波を使って液体の中に3千℃以上の状態を造り出し世界的
に注目されている。その研究を始めた10年前、誰もがマユツバものだと罵っ
たが、豊橋技術科学大学時代の恩師・大竹一友教授の言葉「まずは常識を疑
え。脱常識」。1999年にインドネシアで航空機事故に遭い、志半ばで他界し
た恩師・大竹教授の言葉を胸に研究を続けた野村は、2002年、世界で初めて
マイクロ波を使った液中プラズマを発生させることに成功した。この技術で
要らなくなった廃油から水素を取り出し、さらに廃油の処理コストも削減で
きるというのだ

【符号の説明】

1 水素ロータリエンジン 2 ロータハウジング 4 サイドハウジング
6 ロータ 10 圧縮行程の作動室 11 膨張行程の作動室
14 トレーリング側(T側)の点火プラグ 
15 リーディング側(L側)
の点火プラグ 16 吸気ポート
18 排気ポート 40 直噴式水素ガスインジェクタ(中央噴射インジェクタ)
42 直噴式水素ガスインジェクタ(L側噴射インジェクタ)
70 コントロールユニット 72 エンジン回転数センサ
74 エアフローセンサ C 圧縮行程の作動室の中央側領域
L 圧縮行程の作動室のリーディング側領域
T 圧縮行程の作動室のトレーリング側領域

そもそも、液体中にプラズマを発生させる方法として、直流や交流 あるいは
パルス電圧を利用し、アークやストリーマ放電を発生させる方法が良く知ら
れているが、液体中に高周波(HF)やマイクロ波(MW)を用いてプラズマを発生
させる"液中プラズマ法"を従来の気相プラズマプロセス技術に変わる手法と
して提案されたものだ。高周波やマイクロ波プラズマは気相プラズマプロセ
スとして幅広い分野で実用化されてきた実績があり、液体中では気体中より
も分子密度が高く、液体による冷却効果が期待できるので、熱に弱い基板材
料に高速成膜することでき、従来の非平衡プラズマによる低温成膜プロセス
を飛躍的に改善できる技術として期待されているものだ。


 

上図の液中プラズマは液体に高周波やマイクロ波電力を効率的に投入し、継
続的に安定なプラズマを液体中の気泡の中に発生させる技術。反応容器には
内径55mm,外径59mm,高さ83mmの石英ガラス容器を使用し、この反応容器下
部から電極を挿入。この電極から13.56MHzや27.12MHzの高周波,または2.45
GHzのマイクロ波が反応炉内部に照射する。電極には4mmタングステン棒の周
囲を石英で被覆されているものを用い、先端の形状は半球形である。アスピ
レーターによって反応容器内の圧力を所定の値に設定する.減圧することは
必ずしも必要ではないが、圧力が高くなるほど大きな投入パワーが必要とな
る。高周波あるいはマイクロ波を照射すると、電極が加熱され,電極先端か
ら気泡が発生し、その後、電極先端からプラズマが発生する。高周波プラズ
マ実験では、プラズマの発生を容易にするために反応容器上方から、直径10
mmのアルミニウム電極柱を挿入する。そうして廃油(ここではn-ドデカン)
を下図のように入れバイアスを加えれば水素が発生し分子篩にかけ水素ガス
を取り出せばよいと言うことになる。簡単に言ってしまえば、植物性油なら
原料になるわけで、太陽で光合成された油脂を経済的に抽出できれば採算ベ
ースに乗っかるというわけだ。


それでは、水素燃料エンジンで地球温暖化問題は解決するのかというと、そ
う簡単にはいかず、水素と空気(純粋の酸素だけなら問題ないが)を混合す
る方式では燃焼反応で窒素ガスが酸化され窒素酸化物が発生しこれが、オゾ
ン層の破壊や、温暖化物質として、また人体にも悪さをするので除去しない
ければならないという残件が課題になるというわけで、マツダなどが乗用車
から排出される窒素酸化物(NOx)を尿素で浄化する国内初の選択触媒還元
(SCR)システムの開発に躍起となっている。

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工場プラントからの排煙や自動車排気ガスから窒素酸化物(NOx)を取除く
技術(脱硝技術)の一つとして選択接触還元法(SCR)がある。この方法
は排気ガスに還元剤としてアンモニア(尿素)を添加し、触媒を使ってNOx
をN2に還元する方法である。これまで種々のSCR触媒が知られ、実用化さ
れているが、その主なものは酸化チタン/酸化タングステン/酸化バナジウ
ム系と、ゼオライトを担体とし、これに鉄、銅、コバルト、ニッケルなどを
担持させたもの。前者はバナジウムが大気中拡散禁示物質であるため自動車
排気ガス浄化用途には不向きである上、NOxの転化率も満足でない。後者は耐
水熱性が満足でなく、また350℃までの低温域でのNOx転化率が低いといわれ、 
また、触媒としてセリアをベースとする担体に白金等の貴金属触媒はNOのNO2
への酸化反応と、アンモニア等の還元剤でNO2のN2への還元反応の二つの反
応を触媒し、
この時担体中のセリアは酸化されたNO2を表面に吸着して触媒
表面にとどめ、それをアンモニア等による接触還元のために提供している。
担体に白金等を担持させた触媒を内部触媒層とし、ゼオライト等の固体酸ま
たはこれにバナジウム、タングステン、モリブデン、銅、鉄、コバルトまた
はニッケルの酸化物を担持させた酸化物担持固体酸を表面触媒層とする触媒
構造体や固体酸によってアンモニアを吸着して表面にとどめ内部触媒層に吸
着されてとどまっているNO2の還元反応は効果的でなくコストが嵩むため触
媒開発の熾烈な競争がつづいている。

※「窒素酸化物接触還元用触媒  

 
また、還元剤として尿素添加が主流となっていて如何に分散性を良くし目詰
まりなどの故障をなくするなどの研究開発がなされている(内燃機関の排気
浄化装置」P2010-180780)。ディゼルエンジン用としての用途の拡販普及が
考えられているが燃料電池との開発競合もあり、繋ぎ(ブリッジ)技術的側
面が色濃いが、バイオマス水素発電装置としての用途拡販も見込める。いず
れにしても、水素ロータリエンジンというアキレスの弱点を克服する盾とし
ての、脱窒素酸化還元物触媒の現状を俯瞰してみた。

 

 



コメント
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