コンデンサーは電荷を貯める電子部品であるが、強誘電体と言う物質を用いることで、
劇的に小さくなり、また高速動作が出来る様になった。最近では高性能フラッシュメ
モリーの新材料としての利用が検討されている。今まで使われてきた強誘電体は、原
子の整列現象を利用していたが、今回の発見は、同じ機能を電子の整列で実現してい
ることが特徴。電子は原子より1/1000も軽いため、今まで以上に、高速で高性能なコ
ンデンサーが実現出来る。今まで電子が整列する物質は見つかっていたが、この物質
のように電子の整列を制御でき、強誘電体になる物質は無かったという。その物質は
RFe2O4という希土類を含む鉄の酸化物で電子の整列を電圧で制御でき、電圧の向きを
記憶したり電荷を貯めることができ新しいコンデンサー材料になる。
これを要約すると、電気磁気効果材料を、下記式(1)で表され、式(1)中のRの一部が
正二価以下の元素により固溶置換されている酸化物とする(特開2011-40659「電子素
子及びその製造方法」)。
(RM2O4)m(RMO3)n (1)
尚、式中、Rは、Y、Dy、Lu、Er、Yb、Tm、Ho、Sc及びInからなる群より選
択される少なくとも1種の元素であり、Mは、Mn、Fe、Co及びGaからなる群より
選択される少なくとも1種の元素であり、mは1または2であり、nは0以上の整数
である。)。この電気磁気効果材料を用いて電子素子を構成される、となる。これを
太陽電池に応用するとどうなるか。光の吸収率が従来のシリコン製の百倍以上の太陽
電池(岡山大大学院自然科学研究科の池田直教授のチームが「グリーンフェライト
」と名付けた酸化鉄化合物)が生まれるという。この太陽電池はこれまで吸収できな
かった赤外線も発電に利用できる可能性がある。池田教授は「赤外線は熱を持つもの
から出ている。太陽光以外に、熱電素子として、つまり、火を扱う台所の天井など家
中、街中の排熱でも発電できるかも」とし、2013年の実用化を目指している。粉末状
で、土台となる金属に薄く塗る。1キロワット発電する電池を作るコストは約千円が
目標で、約100万円かかる従来のシリコン製に比べて大幅に安い。パネル状になっ
ている従来型では難しい曲げ伸ばしができ、煙突や電柱に巻き付けるなど設置場所は
幅広いという。
一般的にPN接合を形成する場合、シリコンやガリウムヒ素などの半導体材料、ある
いは2-(4-tert-ブチルファエニル)-5-(4-ビフェニリ)-1,3,4-オキサジアゾールなど
の有機半導体材料が用いられているが、三角格子となる希土類鉄酸化物の希土類鉄酸
化物では、微小な電場を印加することにより内部の電子状態が変化して、電気伝導度
が変化する。この特性を利用することにより既存の電子素子よりも高特性の電子素子
が提供できる。つまり、希土類鉄酸化物で形成した多結晶半導体層の第1の半導体層
と、有機材料の有機半導体層からなる第2の半導体層とでPN接合を形成することで
第1の半導体層の希土類鉄酸化物で鉄イオンおよび酸素イオンの欠損が生じることを
防止でき電子素子を効果的に製造することができる。
【符号の説明】
11,21,31 ガラス基板 12,22,32 第1電極層 13,24,34 第1半導体層
14,25,35 第2半導体層 15,26,37 第2電極層 23,33 中間導電層 36 補助電極層
実際には、上図に示す、ガラス基板11上に、ITO膜で形成した第1電極層12と、
YbFe2O4で形成した第1半導体層13と、C60フラーレンで形成した第2半導体層14と、
アルミニウムで形成した第2電極層15とを順次積層して形成している。第1半導体層
13は、第1電極層12の上面にエアロゾルデポジション法によって粉末状のYbFe2O4を吹
き付けて形成し薄膜の多結晶半導体層とする。第2電極層15は、第2半導体層14の上
面にアルミニウムを真空蒸着させて形成第2半導体層14は、第1半導体層13の上面に、
C60フラーレンを真空蒸着させて形成(これは印刷法でも可)。このようにして形成し
た電子素子の電流電圧計測すると、下図に示すように整流特性を示し、PN接合が形
成されていることがわかる。また、ガラス基板11側からの光照射の有無によってPN
接合の特性が逆方向に変化することも確認されている。
第1半導体層13がP型半導体となっており、第2半導体層14がN型半導体になってい
いるとされる(未確定)が、第1半導体層13がN型半導体、第2半導体層14がP型半
導体となっていてもよい。さらに、第2半導体層14と第2電極15との間に有機緩衝層
としてBathocuproine(BCP)を設けた場合には、上図に示すように、有機緩衝層を設け
ない場合と比較して整流特性が改善する。有機緩衝層も真空蒸着によって形成した。
従って、ITO膜で形成した第1電極層22と、PEDOT-PSS(Poly(3,4-Ethylene Di
Oxy Thiophene)-Poly(4-Styrene Sulfonic acid))で形成した中間導電層と、YbFe2O4
で形成した第1半導体層24と、C60フラーレンで形成した第2半導体層25と、アルミニ
ウムで形成した第2電極層で形成することも可能だという。
電子が整列することで原子整列の千分の1も軽くなり、圧電素子、熱電素子、光電素
子つまり半導体素子であり、強誘電素子でメモり機能もまた拡張することになる。こ
れまた、『デジタル革命』の基本特性にかなっていて依然として膨張は止まらないと
いう状況だ。この歳まで最先端技術情報に接することでわくわくできることに感謝し
たくなる。裏返せば「できっこないよ」と思ったところで保守反動に転化する恐ろし
さを知ることでもあるね~ぇと、大きなため息をつく。横の部屋では瀕死の愛犬が、
時折苦しそうな息遣いをしている。