二酸化炭素やメタンといった温室効果ガス排出量の急激な増加が地球温暖化の原
因のに挙げられている。発生源である石炭、重油、天然ガス等を燃料とする火力
発電所、製鉄所のボイラー又はセメント工場のキルン等から排出される混合ガス
を対象に、混合ガスに含まれる二酸化炭素分離回収、圧縮、輸送、圧入という一
連の二酸化炭素貯留 (carbon dioxide capture & storage, CCS) 技術が、化石燃
料に代わる代替エネルギー開発までの繋ぎ(ブリッジング)技術として注目され
ている。この貯留技術の実用化には、可能な限りの低コスト化が要求され分離回
収、圧縮、輸送、圧入の一連の工程の中では、前段の分離回収と圧縮に要するコ
ストが総貯留コストの70%以上を占め、これらのコストを低減技術の開発が重要
とされる。発電所や製鉄所からの常圧排出ガスを対象として、アルカノールアミ
ン水溶液を主成分とする化学吸収法による二酸化炭素分離回収技術開発が推進さ
れて来ている。
尚、分離回収技術方式は以下の方法がある。
【分離・回収】
①化学吸収:CO2を選択的に溶解できるアルカリ性溶液との化学反応により吸収し、
蒸気で加熱してCO2を分離する。
②物理吸収:高圧下でCO2を大量に溶解できる液体にガスを接触させ物理的に吸収
し、減圧(加熱)して回収する。
③膜分離:多孔質の気体分離膜にガスを通し,孔径によるふるい効果や拡散速度
の違いを利用してCO2を分離する。
④物理吸着:ガスを活性炭やゼオライトなどの吸着剤と接触吸着し、圧力差や温
度差を利用してCO2を脱着させる。
⑤ 深冷分離:ガスを圧縮冷却後,蒸留操作による相分離でCO2を分離する。
※「現状のCO2分離回収技術の概要と特性」
※「CO2分離回収技術-コスト半減への挑戦」
これに対し、石炭ガス化生成ガスや採掘天然ガス等の高圧ガスからの化学吸収法
による二酸化炭素分離回収技術は、常圧排出ガスからの分離回収技術と比較して
研究例が少ないものの、ガス自体の圧力エネルギーを二酸化炭素分離回収及び圧
縮に活用でき、二酸化炭素貯留工程中の、特に分離回収及び圧縮工程におけるコ
ストを大幅に低減できる可能性がある。従って、高圧ガスからの二酸化炭素分離
に適用可能な化学吸収液の開発が焦点となる。これまで、圧力を有するガスから
二酸化炭素を含む酸性ガスを除去方法には、物理吸収法が注目されていた。物理
吸収法は対象とするガス成分の分圧が高ければ高いほど、化学吸収法に比べて単
位吸収液量当たりの吸収量が大きくなる。代表的な吸収剤としてはシクロテトラ
メチレンスルホン(スルホラン)及びこれらの誘導体、脂肪族アミド、メタノー
ル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル類から成る吸収剤(SELEXOL、ユ
ニオン・カーバイド社)等だが、いずれの吸収液も吸収した二酸化炭素を脱離し
吸収液を再生する工程で減圧を必要とするので、後の圧縮工程での圧縮費低減効
果が極めて非効率という。
また、高圧ガスから気液接触により二酸化炭素を分離する化学吸収液には、3級
アミンのN-メチルジエタノールアミン(MDEA)の単独、又はピペラジン等の反応
促進剤を含む水溶液、及び、MDEA水溶液に比べ二酸化炭素吸収能に優れ、吸収液
の再生時のエネルギー効率の点で有利な3級アミンである3-ジアルキルアミノ-
1,2-プロパンジオール類を主成分とする水溶液がある。さらに、3級アミンのト
リイソプロパノールアミン(TIPA)が高二酸化炭素分圧下、MDEAよりも二酸化炭素
溶解度が大きいが、高圧条件下にて二酸化炭素除去に用いられるいずれのアルカ
ノールアミン類も、二酸化炭素吸収量は十分ではないし、二酸化炭素高吸収性の
ため吸収液再生工程での加熱再生に多大なエネルギーを要す。
高圧用化学吸収液の二酸化炭素の分離回収方法では、従来より、二酸化炭素脱離
時の温度が70℃と比較的低い場合でも、高二酸化炭素分圧条件で二酸化炭素実ロ
ーディング量が大きく、単位吸収液容量当たりの二酸化炭素吸収量が大きい吸収
液の開発が、財団法人地球環境産業技術研究機構から発明されている(上表)。
これにより、二酸化炭素吸収塔、二酸化炭素脱離塔、及びこれらに付随する装置
を小型化し、液循環量も減らしてエネルギー損失を削減し、合わせて建設費用を
減らすことが可能となる。本発明の目的は、高圧ガスからの二酸化炭素除去方法
において、従来使用されていた二酸化炭素吸収剤であるMDEAに代表されるアルカ
ノールアミン類に比べ、高圧条件下で単位吸収液量当たりの二酸化炭素吸収量、
及び実ローディング量(吸収温度と脱離温度における二酸化炭素吸収量差)を増
加させ、かつ二酸化炭素脱離時に必要な熱量を低減できるという。
1 吸収塔 2 脱硫部 21 脱硫槽 22 吸収塔排ガス導入部 23 ガス分散管
24 脱硫側排ガス導出部 4 脱炭部 42 キャップトレイ(脱炭帯域、排ガス・吸
収液接触手段)46 脱炭側排ガス導入部 48 吸収塔排ガス導出部 71 アミン再
生装置(アミン吸収液再生循環手段)
また、上図のように火力発電の燃焼排ガスから二酸化炭素を除去する際のエネル
ギ効率の向上と、除去する設備のスペース効率の向上を図り、燃焼排ガス処理全
体の効率の向上を図るとめの前処理装置の発明もなされている。それによると、
吸収塔1内の下部に外部から導入された燃焼排ガスから硫黄酸化物を吸収して分
離するとともに煤塵を分離する脱硫部2を設、この吸収塔1内の上部に脱硫部2
で硫黄酸化物が吸収分離された燃焼排ガスから二酸化炭素を吸収して分離する脱
炭部4を設けることでスペース効率の向上を図り、脱硫部2において、燃焼排ガ
スに含まれる硫黄酸化物を当該硫黄酸化物濃度が1ppm 以下となるまで除去し、
かつ、燃焼排ガスに含まれる煤塵を3mg/m3N以下となるまで除去するという。
【符号の説明】
1 吸収塔 2 脱硫部 21 脱硫槽 22 吸収塔排ガス導入部 23 ガス分散管
24 脱硫側排ガス導出部 4 脱炭部 42 脱炭帯域 46 脱炭側排ガス導入部
48 吸収塔排ガス導出部 51 触媒脱硫手段 52 触媒ブロック(触媒層)
71 アミン再生装置(アミン吸収液再生循環手段)
さらに上図のごとく燃焼排ガスから二酸化炭素を除去する際のエネルギ効率の向
上と、除去する設備のスペース効率の向上を図り、燃焼排ガス処理全体の効率の
向上を図る。吸収塔1内の下部に外部から導入された燃焼排ガスから硫黄酸化物
を吸収して分離するとともに煤塵を分離する脱硫部2を設ける。また、この吸収
塔1内の上部に前記脱硫部2で硫黄酸化物が吸収分離された燃焼排ガスから二酸
化炭素を吸収して分離する脱炭部4を設けることでスペース効率の向上を図る発
明も提案されている。なお、脱硫部2において、燃焼排ガスに含まれる硫黄酸化
物を当該硫黄酸化物濃度が1ppm以下となるまで除去し、かつ、燃焼排ガスに含
まれる煤塵を3mg/m3N以下となるまで除去する。これにより、脱炭部4で二酸
化炭素を吸収するアミン吸収液の劣化を防止し、エネルギ効率の向上を図る工夫
をしている。
火力発電の依存は当面避けられない。今日はそのことを念頭にシーシーエスの話
をはじめることとした。いましばらくこのことを考察したいと思う。
たとえそれでも、君はやっぱり思うのかな、
この人生における望みは果たしたと?
果たしたとも。
それで、君はいったい何を望んだのだろう?
それは、自らを愛されるものと呼ぶこと、自らをこの世界にあって
愛されるものと感じること。
And did you get what
you wanted from this life, even so ?
l did.
And what did you want ?
To call myself beloved, to feel myself
beloved on the earth.
“ Late Fragment”
『おしまいの断片』
レイモンド・カーヴァー 村上春樹 訳
愛犬のシェルが今朝9:10永眠した。享年13、人間で言うと65歳だという。
いまでも、こころの整理に困惑している。僕たちは僕たちなりに彼女を
愛してきたのだと、この詩を彼女に捧げ朗読する。