【フェンネル薫る五月】
たくさんのフェンネル(『女のいない男たちの料理』)が摘れたとみせ、良い香りがするためかナ
メクジが寄って来るので、ほら、ここに傷跡がのこっているでしょうとフィノッキオ(鱗茎)を指
さす。それじゃ、作りやすくて調理方法も数百を超えるのだから、育種や栽培技術を改良して、我
が家の、いや、町の特産品としてみてはと返事すると、まぁ~、話を広げないで!ともかくも、美
味しい料理を作るのよ(夕食に、フェンネとオニオンスープ&フェンネルローストビーフとして出
されたが、これには満足。彼女は、自家製は安上がりと満足)と言って会話は終わる。外に出て、
陰干ししているフェンネルの葉茎を匂いをかぐ、まさしく、ハーブ薫る五月だ。
【歯周病からニオイ測定器開発まで】
一昨日の歯の治療(『積極的平和主義の分水嶺』)が気になり、歯周病起因の口臭を徹底的に付き
合ってみようかと考える。ところで、口臭は、口腔内に住むバクテリアがつくるガスと、肺から出
てきた、臭気を含むガスとが混じって、口呼吸によって排出されたもの」が、その正体といわれて
いて、口腔内には、想像を超えるほどの多くの微生物が住みつき、外部から侵入する病原菌をシャ
ットアウトする役割を担っているが、その活動の結果、むし歯を作ったり、歯周病を発生させたり、
あるいは、このように口臭のもととなるガスを発生させたりするという。「口臭は、口のなかの食
べかすなどに含まれるタンパク質が、口腔内細菌で分解されてできる揮発性硫黄化合物(メタンチ
オール、スルフィドなど)とスカトール、インドール、長鎖アルコールなどによるものといわれま
す。とりわけメタンチオールが主役です。しかし、人の吐く息を分析すると、二百種以上の揮発成
分が検出されるので、口臭の原因は複雑です。歯石についた嫌気性菌や舌の表面のカンジダなどに
よっても口臭は強くなります」と井上重治は『微生物と香り』で述べている。以下、第二章「微生
物は多彩な香りをつくるだす」を抜粋掲載する。
●人に棲む微生物のつくる体臭
生物はみな体表または体内から固有のにおいを放出しこのにおいを通して仲間の認識や連絡、
異性への接近などを行っています。ヒトの場合は、ホモサピエンス特有の代謝によってつくら
れる脂肪、タンパク質、ステロイドなどの分解物(主にイソ吉草酸、カプリン酸などの脂肪酸
とアンドロステロイド類)が体表から揮発して、人間同士には親しみのあるにおいとして慟き
ます。しかし、野生動物には恐ろしいヒトが近づいたことを知らせる警戒信号になります。
●個人や男性、女性のにおい
体臭は生きている証ともいわれています。この体臭は食事、健康状態、感情、各人がもって
いる常在菌のフローラによって変わります。この意味では、個人を認識する免疫組織に似てい
ます。事実、遺伝子が支配した個人固有のにおいがあり、免疫的に自己と非自己を決定する一
群の糖タンパク質(主要組織適合性複介体MHCとい引の遺伝子が関与していることが報告さ
れています。またヒトはMHCによる個人のにおいの違いを識別できるといわれます(山崎,
1998)。幼児は自分の母親の瞼の下のパッドのにおいを好み、母親は自分の子惧のにおいを識
別して、言葉なしに(一種のフェロモン様作用)、お互いのコミュニケーションをはかってい
ます。
男性と女性では明らかににおいが異なります。男性は強い刺激臭やジャコウ様におい、女性
は甘い香りがするといいます。ジャコウ様においは男性ホルモン様物質の分泌と関連していま
す。かつて筆者が動めていた会社の男性更衣室の特有のにおいを5名ずつの男性と女性にテス
トしたら、筆者を含めた男性の6分の4は悪臭と感じたのに対して、女性全員からは悪い臭い
ではないという回答が得られました。同性のにおいは避けて異性のにおいを好む傾向が見られ
ます。
●食事によって体臭が変る
人が日常たくさん食べる食物に含まれるにおい成分は、汗や呼気のなかに現れます。食事に
よって血液中の化学成分が変り、それがエクリン腺の汗や肺の換気によって外部へ排泄される
ためです。このため、マトンなどのくせのある肉類をたくさん食べると、体臭にもそのような
においがしてきます。よくインド人は香辛料様、日本人は魚様、エスキモー人は鯨の脂肪様の
においがするといわれます。日本人が西洋に旅すると、体臭も西洋風に変わるといわれます。
●汗臭と加齢臭
ヒトの体臭は体全体の皮膚や特定の部位(頭皮、口、足、膝、瞼の下など)から発生するに
おいの総合されたものです。これらは、皮膚の分泌物が常在菌の代謝を受けて発生することが
多いのです(深野,1994;土師,2000)。汗臭は体全体に分布するエクリン汗腺からの脂溶性分
泌物に、表皮ブドウ球菌などの皮膚常在菌が作用して発生するイソ吉草酸などの短鎖脂肪酸と
アンモニアが主な原因と考えられています。また常在菌のひとつ(Micrococcus sedentaris)を
汗の成分と一緒に培養すると、メタンチオール、スルフィドやチオ酢酸エステルなどの硫黄化
合物が発生するといわれます。
中高年になると、胸や背中から少し青くさい脂臭、古くなったポマード様、頭皮奥様のにお
いが発生します。この老化に伴う特有な加齢臭(老人臭)の本体は資生堂の土師信一郎溥士ら
によって、不飽和アルデヒド、とりわけ2-ノネナールであることが明らかにされました(土
師,今津,1999)。加齢にともなって変化した皮脂脂肪酸(パルミトオレイン酸など)が酸化分
解して生成したものです。これには、自動酸化のほかに皮脂徹生物の介在が推察されます。実
際に、パルミトオレイン酸を表皮ブドウ球菌で培養すると、trans-2-ノネナールとtrans-2-オ
クテナールなどの不飽和アルデヒドが検出されました(沢野,2001)。
●腋臭は徹生物の分解物のにおい
ヒトの体で、もっとも強い体臭を発するのは、瞼の下と陰部です。接の下には、アポクリン
腺、エクリン腺、アポエクリン腺、皮脂腺などたくさんの分泌腺が集まっています。ここには、
コリネ型細菌(好気性グラム陽性の悍菌で多形性を示す群、Corynebacterium sp.がその代表)
を主体にして、ジフテリア様菌(Diphtheroides)などが棲んでいて綬臭の原因になっています。
アポクリン腺からの分泌物が、これらの常在菌の代謝を受けて、汗くさいイソ吉草酸とその近
縁の短鎖脂肪酸(C6~C11)、とりわけ特有成分の(E)-3-メチルー2-ヘキセン酸を発生させま
す。この酸は最初は精神分裂症患者の汗から見つけられましたので、その患者特有の臭い物質
と思われていましたが、後になって健康な人からも検出されました。分岐脂肪酸は個人に固有の
におい、すなわち「化学的指紋」を与えます。このほか、山羊臭のする4-エチルヘプタン酸も
単離されていますが、これは成熟した雄山羊の繁殖期の皮脂腺の分泌物でもあります。7,オクテ
ン酸の臭いも無視できません。
●腋の下に分泌されるステロイドの微生物変換
腋臭を構成しているもうひとつの重要な成分がステロイドです。鞭の下のアポクリン腺から
は、5種類のアンドロステロイド(男性ホルモン近縁物質)が分泌されます。不揮発性の3-β
-アンドロスタジエノール・硫酸エステルは、親油性のヂフテリア様菌によって加水分解と酸
化を受けて、アンドロスタジエノンとアンドロスタジエノールが生成します。ついでコリネ型
細菌(Corynebacterium xerosis など)によりこれらはともにアンドロステノンに変換されます。
アンドロスタジエノールはムスクと白檀を混ぜたようなジャコウ様のにおいですが、アンドロ
スタジエノンとアンドロステノンは尿ないし汗くさい臭いがします(印藤,1999)。
ヒトの尿には△2-アンドロステノンー17に代表されるステロイドが排出され、ヒト特有のに
おいを発します。ステロイドはホルモン作用ばかりでなく、対外的なコミュニケーションにも
一役かっているのです。
●腋臭は人種によって異なる
腋毛があると、これらの臭い成分がため込まれ、それが腕を動かすたびにこすれて発散して
きます。鞭毛を剃ると、鞭臭はかなり抑えられ、古代ローマでは男性も鞭毛を剃っていたとい
われます。現在もイスラム教徒の男性は剃っています。皮脂腺もアポクリン腺も人種によって
異なり、黒人が一番多く、白人、日本人、中国人の順に減少するといわれています。鞭臭は、
大半の日本人には嫌われますが、外国ではときには愛の甘い小道具になることもあります。鞭
の下に香水をスプレーするのは、よい香りで体臭をマスキングするだけでなく、鞭臭原因菌に
働いて分泌物の悪臭分解を防ぐ効果があると信じられています(Feamley&Cox,1983)。鞭臭
の発生には体内のアポタンパク質が関係しているともいわれています。
●足臭と頭皮・頭髪臭
足の裏や手のひらには、エクリン汗腺がたくさんあります。足の汗くさい臭いの原因は、嫌
気性菌のつくるイソ吉草酸と酪酸によるものとされています(Kandaetal.1990)。頭皮には皮
脂腺が多く、ここから分泌されるトリグリセライドは、酵母(Malassezia furfur)やアクネ菌
(Propionibacterium acnes)などの常在菌のリパーゼで分解されてできた短鎖脂肪酸(イソ吉草
酸、酪酸、プロピオン酸、酢酸など)と、高級脂肪酸(ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチ
ン酸など)にアルデヒドやラクトンが混合したもので、そのにおいを頭皮・頭髪臭といってい
ます。
ヒトの額からは、チーズ臭や甘いフルーツ様の香りがしますが、γーデカラクトン(果実香)
を主体にアルコール、メチルケトン、有機酸に由来するもので、酵母(Pityrosporum ovale、現
在は M.furfur に統合)などの作用で生成するといわれます(古前,1996)。
●口臭の主役はメタンチオール
口臭は、口のなかの食べかすなどに含まれるタンパク質が、口腔内細菌で分解されてできる
揮発性硫黄化合物(メタンチオール、スルフィドなど)とスカトール、インドール、長鎖アル
コールなどによるものといわれます。とりわけメタンチオールが主役です。しかし、人の吐く
息を分析すると、200種以上の揮発成分が検出されるので、口臭の原因は複雑です。歯石につい
た嫌気性菌や舌の表面のカンジダなどによっても口臭は強くなります。
●病気臭
ヒトは病気にかかると、特有の体臭、口臭が強くなり、においは慢性的な病気のバロメータ
ーともいわれます。細菌性の腔炎患者からはトリメチルアミンが排出されて魚くさい臭いがし
ます(Brand&Galask,1986)。糖尿病患者の尿は甘酸っぱいアセトン劈が増し、気管支:や肺の
病気では腐った肉のような臭い、胃腸の病気の人は卵の腐った突い、腎不全や尿毒症の人はア
ンモニア臭がします。
●女性の性周期に関連したにおい
女性の腔からは排卵の時期に合わせて、周期的に酸性見がでます。これは酢酸、プロピオン
酸、酪酸、イソ古草酸などの脂肪酸の混合物(コピュリン copulin によるもので、腔内 の乳酸
菌などの活動に由来します(Preti&Huggins,1975)。
このコピュリンは雄サルに性誘引効果を示すと報告されています(ストダルト,1980)。
それと同時に呼気のなかに硫化水素、メタンチオール、インドール、ドデカノールなどが増
加します。特にドデカノールは排卵のよい指標といわれています。
●ヒトのフエロモン
フェロモンはギリシャ語のフェリン(運ぶ)とホルモン(興奮させる)を組み合わせた合成
語で、体内でつくりだした化学物質を体外に放出して、同じ仲間同士に情報を伝達する物質で
す。同じく体内でつくられても、体内で作用するホルモンとは大きな違いです。フェロモンは
大部分が揮発性物質です。香りがある場合とない場合がありますが、いずれにしても嗅覚とは
関係なく鋤鼻器で感じます。フェロモンは昆虫や哺乳動物でよく研究され、集合フェロモン、
警戒フェロモン、階級分化フェロモン、性フェロモンなどが知られています。
人の皮膚の揮発性化合物のなかにもフェロモンがあるといわれています。女性の月経周期を
延長するフェロモンと短縮するフェロモンの2種類がヒトの接の下から分泌され、共同生活を
する女子学生の月経周期が同じになる「ドミトリー効果」の原因といわれています(Stem&M
CClintock,1998)。これとは別に2種類のステロイド化合物、アンドロスタジエノンとエスト
ラテトラエノールがヒト・フェロモンとして報告されました(Jennings-white,1995)。アンドロ
スタジエノンには香りがありますが、エストラテトラエノールは無臭です。この二種類のステ
ロイドのみが鋤鼻器官の電位を変化させ、近似のアンドロステノールやアンドロステノン(ブ
タのフェロモン)やムスコンなどは変化しません(Grosseretal.2000)。男性ホルモンに近似し
たアンドロスタジエノンに対しては女性が敏感に反応して視床下部の活動が高まり、女性ホル
モンに近似したエストラテトラエノールでは男性の視床下部の活動が高まります(Savic et al.
2001)。
最近、人の皮膚分泌物であるフェロモンを補給するフェロモンセラピー化粧品も市販される
ようになりました。
大昔、まだ言語がなかった原始人はフェロモンでコミュニケーションをしていたとも考えら
れます。その場合、フェロモンの分子自体に情報が入っているので、受け取っても高度な脳の
情報処理が必要ないので、脳があまり発達していなかった原始人にとっては、フェロモンは現
在よりもはるかに重要な役割を果していたと思われます。
井上重治 著『微生物と香り』
興味を惹くのは「病気臭」の箇所だが、口臭の測定技術の考察をはじめるが、最近は、エチケット
として口臭を気にする人が増え、口臭に対する社会全体の関心が強くなっている。歯科医療機関で
は歯周病などの口臭についての相談が増えてきているが。口臭原因の判定は、従来、呼気を人間が
直接鼻で嗅ぐという官能試験が行われてきたが、主観的な要素が反映し、口臭の臭い成分は常に変
動しているため正確な判定は難しく口臭の臭い成分をより正確に測定する技術が求められてきてい
る。その測定技術(『特集|口臭測定技術』)は、現在、ガス成分を互いに分離するために、ガス
クロマトグラフィーが用いられ、分離したガス成分を定量的に分析するには、各種の検出器、例え
ば熱伝導性検出器、炎イオン化検出器、電子捕獲検出器、炎光電子検出器、および熱イオン化検出
器、または質量分析検出器を使用するがこれらの分析装置は高価であり操作が複雑だ。このため、
ガスクロマトグラフィーの問題回避するため、携帯式で独立型の口臭測定装置が、口腔内のガスを
測定するために、臨床医または病院に提供、例えば、Halimeter(Interscan Corporatin、米国)な
どのガス分析装置が普及してきているという(一般には「ハリーメーター」と呼称されている)。
ここでも、デジタル革命渦論が席巻していて、臭成分をより正確に測定するとともに、その測定時
間をより短くできるという半導体センサの口臭測定器(株式会社 アドニス電機リフレスHR BAS-
108型)などが、20数万円程度で販売されている(下図「特開2006-184265 口臭測定装置及び口臭測
定方法、並びに臭気測定装置及び臭気測定方法」)。
さて、そこで「ヒトは病気にかかると、特有の体臭、口臭が強くなり、においは慢性的な病気のバ
ロメーターともいわれます。細菌性の腔炎患者からはトリメチルアミンが排出されて魚くさい臭い
がします(Brand&Galask,1986)。糖尿病患者の尿は甘酸っぱいアセトン劈が増し、気管支や肺の
病気では腐った肉のような臭い、胃腸の病気の人は卵の腐った突い、腎不全や尿毒症の人はアンモ
ニア臭がします」(井上重治 著『微生物と香り』)に戻るが、二百種類の揮発性成分を正確に測る
ことで、関係する既にその研究開発は始まっているはずだろう。これを世界でいち早く完成させる
事業化の企画を思いついたというわけだが、もっとも、これは数年前の「イヌの嗅覚利用診断」と
いうアイデア発想から始まっていることではあるが。
ベトナム船と中国船が西沙(英語名パラセル)諸島付近で衝突している映像を見て、"ファースト
エンペラは、ラストエンペラー"と言うフレーズが舞い降りた。かって石油メジャーが関係国の支配
権力を動かし中東の石油採掘戦争を起こした悲劇を、また、パラセル諸島でその喜劇を見ているわ
けだが、ここは「チャイナ・リスク」を実施する必要があるようだ。