東日本大震災の影響で技術は世界一、導入量は第五位とそれまで後塵を拝していた日本がここに来
て、全量固定価格買取制(FIT)で息を吹き返しつつあり大変元気だ。そして、太陽光発電あるいは
太陽電池は、メガソーラーから中規模ソーラーに移行し、建材一体型の動きが活発化してきている。
太陽光発電は、"パネルではなく塗料だ!"とは色素を光電変換素子に使う太陽電池開発を開始した
わたしたちは、ウエアラブルな世界、ソーラーセルの皮膚感覚で扱う世界を夢見ていた。だが、現
実は、地下化石燃料や天然ガス、核燃料といった既存エネルギーとの競争、あるいは、水力、風力、
潮力、バイオマスなど同じ再生可能エネルギーとの共同戦線とその内部での競合にさらされること
になる。ここは半歩後退してでも変換効率を、25%→30%に高める政策にチェンジしなければ
ならない。実績を認められれば、製造コスト逓減はお手のものだ!そうしている内に有機薄膜系太
陽電池の技術力も向上てくるだろう、と。そう考えてきた。
色はモノクロだが、化合物系や多接合シリコン系薄膜太陽電池を使えば変換効率は20~25%は実現
できるぞ!そんな想いに応えてくれるものとして、三井住友建設株式会社が、太陽光発電による創
エネルギー(アクティブソーラー)技術と、自然通風と採暖による省エネルギー(パッシブソーラ
ー)技術とを融合させた独自の建材一体型太陽光発電システムを開発し自社施設に導入したと公表。
ここで、 アクティブソーラーとは、機械的な装置を使用して積極的(アクティブ)に太陽エネル
ギーを活用する方法さすらしい。太陽電池を用いた発電のほか、太陽熱を集熱して給湯や暖冷房な
どに利用する太陽熱利用システムなどがあるとか。また、パッシブソーラとは、機械的な装置を用
いずに、建物の構造や建材などを工夫し能動的(パッシブ)に太陽エネルギーを利用する方法。昼
間に太陽熱を床や壁に蓄熱し、夜間に放熱することで採暖する方法や、太陽熱により温められた空
気を自然対流にて室内に導入する方法などがあるという。
このシステムでは、「汎用的な太陽電池モジュールとデザインパネルで構成される外装(外装ユニ
ット)」と、「設置角度が可変できる太陽電池ユニット(可変ユニット)」で構成されている。夏
季には上下の可変ユニットを解放し、自然対流による通風により外装ユニット裏面の温度上昇を抑
制することで発電効率を約4%向上(単結晶シリコン系を使った場合は温度依存性が大きく、この
システムではアモルファスシリコン系を使用)させるとともに、外壁からの伝熱による冷房負荷の
ピーク値を約55%削減する(断熱・保温効果)。さらに冬季には、下段の可変ユニットのみを開放
し、外装太陽電池裏面にて暖められた空気を室内に導入することで、外気取り入れにともなう暖房
負荷を約48%削減できる。また可変ユニットは外壁の最下段と最上段に設置し、太陽高度に合わせ
て発電量が最大になる角度に調整することができるという。
三井住友建設では、昨年、曲面加工が可能なアモルファスシリコン薄膜太陽電池を用いたファサー
ドデザインによる建材一体型太陽光発電システムを開発し、自社施設に設置したことに加え、開発
したシステムは、“創エネとファサードデザインとの調和”という基本コンセプトを継承しながら、
“アクティブソーラーとパッシブソーラーの融合”という新たなコンセプトを加えた、創エネと省
エネを両立する機能を付加した建材一体型太陽光発電システムを開発。そして、時代とともに変化
する社会からの要請に応えるために「環境ビジョン “Green Challenge 2020”」を定め、環境に関す
る中長期的な展望を明確にして環境に対する取り組みを強化し、「地球温暖化の防止」と「循環型
社会の形成」の両立をはかる技術開発を推進すると宣言している。
ここで使用される太陽電池は、直射光依存型ではなくて、散乱光採光型のアモルファスシリコン系。
したがって、変換効率は10%程度と低く、モノクロの黒色。ところで、太陽電池は光の電気変換だ
から、ある意味、吸熱(断熱)材であり、シースルー、完全な透明ガラスは望めないが、液晶シャ
ッターと貼り合わせれば自在に自動採光でき、さらに、貼り合わせ構造なので防犯機能も付加でき
壁・窓一体型にできるメリットがあるが耐久性という課題が残る。最低20年から最長60年が開発目
標となる。有機薄膜系ならカラフル化も可能だろうが、モノクロで、耐久性が問題となり張り替え
技術とその費用便益分析が課題となる。
サムピックとフィンガーピッキングを多用して、ギターソロに厚みを出すのが特徴。低音弦をミュ
ートしながら弾き、高音弦を指で弾いてメロディとコードを奏でる、マール・トラヴィスのトラヴ
ィス・ピッキングを下敷きにしながら、開放弦を多用した独自の和音重ねの"Yesterday"に痺れる。
チェット・アトキンス(Chester Burton Atkins、1924年6月20日-2001年6月30日)。米国のギタリスト
で、基本的にはカントリー・ミュージシャン、ジャズやブルースからの影響も吸収し、後のロック・
ギタリスト(ジョージ・ハリスン、スティーヴ・ハウ等)にも大きな影響を与えたといわれる。生
涯において、13作品(他アーティストとの連名も含む)でグラミー賞を受賞し、1993年にはグラミ
ー賞の生涯功労賞も受賞している。2011年「ローリング・ストーンの選ぶ歴史上最も偉大な人のギ
タリスト」において第21位にランキング。さて、ストーリーは本格的な展開へ入る。
木樽の歌う奇妙な歌詞の『イエスタデイ』を僕が初めて耳にしたのは、田園調布にある彼の
自宅(それは彼が自分で言うほどうらぶれた地域でもなかったし、うらぶれた家でもなかった。
ごく普通の地域にある、ごく普通の家だ。古いけれど、僕の芦屋の家よりは大きい。とくに立
派ではないというだけのことだ。ちなみに置いてある車は、ひとつ前のモデルの紺色のゴルフ
だった)の風呂場だった。彼は家に帰ると何はさておきまず風呂に入った。そして一度入った
らなかなか出てこなかった。だから僕はよく脱衣場に小さな丸椅子を持ち込んで、そこに座っ
て戸の隙間から彼と話をした。そこに逃げ込まないことには、彼の母親の長話(ほとんどが身
を入れて勉強をしない、風変わりな息子についての果てしない愚痴だった)を聞かされること
になったからだ。そこで彼はそのとんでもない歌詞をつけた歌を、僕のために――かどうかは
わからないが――大きな声で歌ってくれたのだ。
「その歌詞って何の意昧もないじゃないか」と僕は言った。「『イエスタデイ』という歌をお
ちょくっているみたいにしか、僕には聞こえないけどな」
「あほ言え。おちょくってなんかいるかい。それに、もしたとえそうやったとしても、ナンセ
ンスはそもそもジョンの好むところやないか。そやろ?」
「『イエスタデイ』を作詞作曲したのはポールだ」
「そやったかいな?」
「間違いない」と僕は断言した。「ポールがその歌を作り、自分一人でスタジオに入り、ギタ
ーを弾いて歌った。そこにあとから弦楽四重奏団の伴奏を加えた。他のメンバーは一切関与し
ていない。その歌はビートルズというグループにはいささか軟弱すぎると他の三人は思ったん
だ。名義はいちおうレノン=マッカートニーになっているけど」
「ふうん。おれはそういう蘊蓄には疎いからな」
「蘊蓄じゃない。世界中によく知られている事実だ」と僕は言った。
「まあ、ええやないか、そんな細かいことはどうでも」と木樽は湯気の中からのんびりした声
で言った。「おれは自分の家の風呂場で勝手に歌てるだけや。レコードを出してるわけやない。
著作権も侵害してないし、誰にも迷惑はかけてへん。いちいち文句をつけられる筋合いはな
い」
そしてまたサビの部分を、いかにも風呂場的な、よくとおる声で歌った。高音部までとても
気持ちよさそうに。「きのうまであの子もちゃんと/そこにおったのに……」とかなんとか。
そして両手を軽く振って、ぱちゃぱちゃと気楽な水音の伴奏を入れた。僕も何か合いの手を入
れてやれるとよかったのだろうが、そんな気持ちにはとてもなれなかった。他人が風呂に入る
のに一時間も付き合って、ガラス戸越しにとりとめのない話をしているのは、それほど心楽し
いものではない。
「しかしどうやったら、そんなに長く風呂に入ってられるんだ。身体がふやけてこないか?」
と僕は言った。
僕自身は風呂に入る時間が昔から短い。おとなしくお湯に浸かっていることにすぐに飽きて
しまうからだ。風呂の中では本も読めないし、音楽も聴けない。そういうものがないと、僕は
うまく時間が潰せない。
「長いこと風呂につかっているとな、頭がリラックスして、けっこうええアイデアが浮かぶん
や。ひょこっと」と木樽は言った。
「アイデアって、その『イエスタデイーの歌詞みたいなもののことか?」
「まあ、これもそのひとつではある」と木樽は言った。
「良いアイデアも何も、そんなことを考えている暇があったら、もう少し真面目に受験勉強し
た方がいいんじゃないか」と僕は言った。
「おいおい、おまえもつまらんやっちゃなあ。うちの母親とほとんどおんなじこと言うてるや
ないか。若いくせして分別くさいことを言うな」
「でも、二年も浪人してそろそろいやにならないか?」
「いやになるに決まってるやろ。おれかて早いとこ大学生になって、落ち着いてのんびりした
い。まともに彼女とデートもしたい」
「じゃあもう少し身を入れて勉強すればいい」
「それがなあ」と木樽は間延びした声で言った。「それができたらとっくにやってるんやけど
なあ」
「大学なんてつまんないところだよ」と僕は言った。「人ってみたらがっかりする。それは間
違いない。でもそこにすら入れないって、もっとつまんないだろう」
「正論や」と木樽は言った。「正論すぎて言葉もないで」
「じゃあ、どうして勉強しないんだよ?」
「モチベーションがないからや」と木樽は言った。
「モチベーション?」と僕は言った。「まともに彼女とデートをしたいというのは立派なモチ
ベーションになるだろう」
「それがなあ」と木樽は言った。そして半ばため息のような、半ば唸り声のようなものを喉の
奥からしぼり出した。「話し出すと長い話になるねんけど、おれの中には分裂みたいなものが
あるんや」
村上春樹 著『イエスタデイ』/『文藝春秋』2014年1月号
●フェンネルのローストチキン
チキン(臓物処理済み)の内と外鶏を洗う→内部を塩コショウ、タイムの束、レモンの両半分、ニ
ンニクを詰める→チキンの外側を塩コショウ振りかけるバターでブラシング→チキンの羽を腋に差
し込みキッチンの足をくくる→焙煎鍋(ローストパン)にタマネギ、ニンジン、フェンネルを
配置→塩、コショウ、タイム、オリーブオイルを焙煎鍋の底に広げその上に鶏肉を置く→90分間
ロースする→大皿にチキンと野菜を取り出し、20分間、アルミホイルでカバーチキンを薄切りし野
菜とともに供す。
●鶏肉 約2キロ、天然塩、粗挽きの黒胡椒、タイム(幹1と小枝20)、レモン 半分、ニンニク
1玉(横半分に裁断)、溶融バター 大さじ2杯、黄玉葱 1個(スライス処理)、人参 4本(
厚切り)、フェンネル 1個、オリーブオイル
Chicken Salad & Roasted Fennel with Parmesan