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「モロッコで断食(ラマダーン)(たかのてるこ)」という本はとてもオススメ!

2011年02月18日 01時00分00秒 | 
<金曜は本の紹介>

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 この本は、前回紹介した「サハラ砂漠の王子さま(たかのてるこ)」の続編です。

イスラム教の断食(ラマダーン)を中心に、イスラム教の考え方も分かりやすく説明があり、イスラム教への理解が深まって良いと思います。

 それから、著者はカリッドという男性の若者と出会い、かなり遠くにあるカスバの村にあるその若者の実家へいきます。

そして長い間お邪魔し、その大家族に明るく馴染んでいきます。

別れる際にはそのカリッドのお母さんから大切な首飾りを譲り受け、そのシーンには涙があふれてしまいました。

それから大事故に巻き込まれ、カリッドとの愛を育み、これまた涙を誘います。


とてもオススメな本です。

以下はこの本のポイント等です。

・兄ちゃんの話を聞いているうちに、ラマダーンの全容がなんとなくつかめてきた。1ヶ月間続くといっても、飲まず食わずで丸々1ヶ月間すごすのではなく、毎日、日の出から日没の間の飲食を絶つのだという。小さい子どもや、病人、妊婦なんかは免除されているということだったが、タバコを吸うことも、ガムやキャンディなどのお菓子を口にするのもダメだというから、ヘビースモーカーの人には相当キツそうな話だ。

・「これはハリラっていう豆のスープだよ。ラマダーン明けはみんなお腹がヘッてるだろ?いきなり食べ物が入って胃が驚かないように、お腹に優しいハリラを飲むんだ」

・私がラマダーンをやっていると言うと、どの人も初めは目を丸くするのだが、それから喜んでくれるのが嬉しかった。なんというか「ラマダーンの世界にようこそ!」というムードで迎えてくれる、とでも言えばいいだろうか。どうやらラマダーンは、顔にはあえて出さないけど、みなが「お互い苦しいけど頑張ろう!」という感じで乗り切るモノであるらしい。

・カディジャの家に行って初めて分かったのだが、ラマダーン中に食べるのは何もイフタールだけではなかった。イフタールの数時間後にゆっくりディナーを食べ始め、その後もミントティーを飲みながらお菓子やフルーツを食べたりと、日没後はひたすら食べ続けるのだ。それでもラマダーンを続けるのはかなりきつかった。夜、どれだけ水分を摂って腹いっぱい食べても、昼になるとやっぱりノドが渇くし腹が減る。夜遅くまで宿のねえちゃんや旅行者と話し込んだりしているから、ガマンしている時間自体は短いのだが、腹は毎日ちゃんと減るから、断食に慣れるということはなかった。

・「それは君にとって素晴らしい経験だね!ラマダーンをやってみて、どうだい?」「初めは正直言ってヘンなの、と思ったし、今も腹ペコで苦しいよ。でも、普段は好きな時間に好きなだけ食べてるから、イフタールのたびに食べ物の有難みが身に染みるよ。イスラムのことはよく分からないけど、アッラーの神様は、人間が食べ物の有難みを忘れないよう、ラマダーンをやるように言ったのかなぁと思った」彼がビンゴ!という感じで言う。「そう、それだよ!ムスリムが断食する理由はそれなんだ。食を断つこと自体が目的じゃないんだ。飢えを体験すると、食べることができない人の気持ちが痛いほど分かるよね。食べ物と、食べ物を与えてくださった神に感謝することが大事なんだよ」

・「モロッコの映画はほとんどないよ。ハリウッドのものが一番多くて、あとはインド映画やカンフー映画は人気だけど」

・「そう、イフタールは、breakfastという意味なんだ。fastをbreakするってこと」「え?fast(速い)を破る?」「違う、違う。辞書でfastを調べてごらん」ポット辞書をめくってみると、fastには「速い」という意味と「断食」という意味が載っていた。そうか、「断食」を「破る」で「朝食」なんだ!「英語の「朝食」が「断食を破る」を意味してるっってことは、キリスト教徒やユダヤ教徒も断食してるってこと?」「イスラムの断食とは違うけど、ユダヤ教徒も一部の人は懺悔の断食をするよ。キリスト教徒も昔はキリストの行った断食苦行をしのんで断食していたようだけど、今はやらなくなってしまったみたいだね。でも、確か仏教でも断食をやったりするでしょ?」

・イスラムでは4人まで奥さんを持てるといっても、そんなのはごくごくわずかな大金持ちだけだ。普通はみんな君の国と同じように、一夫一婦だよ」「でも、どうして4人まで奥さんを持ってもいいことになってるの?」「もともとは、戦争で夫を失った未亡人や、彼女たちの子どもを救済するのが目的だったんだ。母子家庭で生活していくのは大変だからね」一夫多妻は、弱い立場の女性を守るためにできた法律だったんだ。私はてっきり、男にとって都合のいいことを女に押しつけている制度だと思っていた。「でもね、それぞれの奥さんに家を用意して、生活費や子どもの養育費の面倒をみるのは並大抵のことじゃないよ。それに、奥さんを公平に扱えないのであれば、複数の妻を持つべきではないとされているんだ。複数の奥さんを公平に扱うなんて、現実問題、難しいだろ?だからみんな、奥さんはひとりで十分だと思ってるよ」

・「僕たちにとって戒律は、弱い人間を良き方向に導いてくれる指針、つまり目標みたいなものなんだ。豚肉が禁止されている理由は、昔、豚肉を食べたことで病気が蔓延したことがあったのが原因みたいだけどね」「日本でもよく、豚肉だけはちゃんと火を通さないとダメって言うよ。寄生虫がいるから危ないって」「そうなんだ。まぁ豚肉に関していえば、たとえばこのまま僕らが今日、車が来なくて野宿することになったとするだろ?で、食べるものが本当に豚肉しかなかったとする。そんな場合は、豚肉を食べても許されるんだよ」

・毛布から出た私は、顔の筋肉を総動員し、目と眉をガッとつり上げ、鼻の穴を最大限に膨らませた。それから、鼻息をフガフガ荒くして「ヴッホ、ヴッホ」と雄叫びをあげつつ、両手を交互に胸元に持ってきて、ボンボン音が鳴るぐらい胸を思いきり叩いてみる。日本人が見たら、吉本新喜劇の島木譲二がやる”パチパチパンチ”にしか見えないであろう私のゴリラネタを見て、子どもたちは「ギャァハハハハ!!」と声をあげ、足をバタバタさせて笑い出した。カリッドも家族もみな、ヒーヒー腹を抱えての大ウケだ。お母さんなんて目に涙をいっぱい浮かべて、笑い死に寸前という感じになっている。まったく、こんなテキトーなモノマネで、なんでここまでバカ受けするんだ?あぁ、でもこんなことになるんだったら、旅に出る前に上野動物園にでも行っとくんだった!

・「母さんがきみに渡した首飾りはね。母さんがお嫁に来たときに、持ってきたものなんだよ。お祝い事なんかがあると、いつも大事そうに奥から引っ張り出してきて身につけていたのを今でもよく覚えてるよ」「そんな大事なもの・・・・・」お母さんは私に、カリッドのお嫁さんになってもいいにょ、という気持ちを込めて、大切な首飾りをプレゼントしてくれたのに違いなかった。こんな、なんの前触れもなく突然やってきた外国人の私を、大事な大事な息子の嫁として。お母さんは、私のカリッドに対する気持ちに気づいていたのかもしれない。そして、もしかしたらカリッドの私に対する気持ちにも。お母さんの優しい気持ちが、今の私にはきつかった。お母さんの思いに応えることができない自分がただただ申し訳なくて、胸の奥が痛くて痛くてたまらなかった。

・荷造りを終え、家族のみんなと別れの挨拶をする。お母さんは、昨夜よりももっと強い力で私を抱きしめてくれた。「てるこ、きっとまたいらっしゃいね」「お母さん、どうぞ元気で」お父さん、お兄さん、お義姉さんと頬を寄せ合うキスをし、子どもたちひとりひとりをハグして、ほっぺにチューする。

・降りるんだ、と言われても、車は45度に傾斜しているうえ、私の目の前に見えるのは、こんな角度から見たこともないような、生々しい谷底なのだ。しかも、カリッドはやっとのことで崖っぷちに立っているだけで、彼の10センチ先は切り立った崖の先端。強い風が吹きつけてきたら、カリッドも一発で転落してしまうような危うい状況だ。私は、自分が動いたせいで車がこのまま崖に転落したら乗客全員が死んでしまうと思うと恐ろしくて恐ろしくて身震いが止まらず、呼吸が速くなって気が動転した。降りられない!降りられない!こんなところから降りられない!誰か先に降りて!私にはできない!恐怖のあまり身動きできずにいると、彼が私の目を見つめて言う。「大丈夫。ゆっくり動けば、車は絶対落ちない。君ならできる。車から降りれば、君を絶対受け止めてみせる。僕を信じて」彼の言葉を信じるしかなかった。

・最後にドライバーのおっちゃんが車を脱出できたときは、乗客全員が「ウォーッ!!」と歓声をあげ、全員の無事を喜んだ。言葉も通じない見ず知らずの人たちと、こんなに気持ちがひとつになったことはない。みんな、誰彼構わず近くにいる人と抱き合い、お互いが生きていることを喜び合う。

・「それでも僕は、君と・・・・・てること一緒に人生を歩いていけたらと思わずにはいられないんだ。てるこ、僕と結婚してくれないか?」私は思わず言葉を失ってしまった。彼の顔は今まで見たことがないくらい真剣だった。

・茂みの中に身を隠した私たちは、ものスゴい勢いで互いの体を抱きしめ、長い長い口づけをした。時間が永遠に感じられた。このまま時間が止まってしまえばいいと本気で思った。私もカリッドもそんなにたくさんのキスを経験してきた者同士ではなかったから、本当に本当に不器用なキスだった。それでも、ただ唇と唇を触れ合わせているだけで、体が溶けてなくなってしまいそうになる。

・私はミケルとカリッドに、恋と愛の違いを思わずにはいられなかった。ミケルに抱いた感情は恋だったが、カリッドに対して抱いている気持ちは愛なのだ。恋はそのときの激しい想いの結晶で、それこそ雷に当たってしまったようなものだけど、愛は、相手を一生大事にしたい思いのような気がしてならない。互いの距離を埋めるように、少しずつ魂に触れるように、分かり合っていたカリッド・・・・・。カリッドとは、もう二度と会えないかもしれない。お互いの想いが強すぎて、簡単には再会できないような気がするからだ。生涯会うことはないかもしれないけれど、ただ言えるのは、私たちが互いを慈しみ、尊重しながら重ねた時間は、真実だったということ。今後どんな人生が待ち受けていようと、ふたりが同じ気持ちでいたあの時間は、本当だったということ。たぶん私も彼も、一緒にすごした日々を、ずっと大事にして生きていくことになるだろう。

・旅を続ければ続けるほど、思い出が雪だるま式に増えていく。でも、その思い出を共有できるのは、どの人ともほんの一部だ。その人とすごした時間だけだ。私はこうやって、私しか知らない思い出を山ほど抱えて死ぬことになるんだろうか。そんなことを考えていると、ときどき果てしない寂しさに耐えきれなくなる。私はどうしていつも、旅に出ずにはいられなくなるんだろう。目の前がパーッと広がったような気持ちになる”出会い”と、胸がちぎれそうになるくらい切ない”別れ”とを繰り返しながら、どうして旅を続けているんだろう。あぁ、私は、二度と同じ時間はない、二度と同じ日はない毎日が、永遠に流れ続けている切なさを、生身のこの身体で実感していたいのだ。


<目次>
はじめに
MOROCCO
 ラマダーンはある朝突然に
 モロッコで断食
 イン・シャー・アッラーの謎
 カスバの村へ里帰り
 天国に一番近い村
 バック・トゥ・ザ・ファミリー
 愛と断食の日々
 さよなら、モロッコ
おわりに
文庫本あとがき

面白かった本まとめ(2010年下半期)


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