いいね~おいしいね~

食べたり買って良かったもの等を実体験に基づき厳選紹介!ぜひご利用頂きより良い人生や日本経済等活性化につながれば幸いです♪

「食の職 小さなお店ベルクの発想(迫川尚子)」という本はとてもオススメ!

2011年07月15日 01時00分00秒 | 
<金曜は本の紹介>

「食の職 小さなお店ベルクの発想(迫川尚子)」の購入はコチラ


「食の職 小さなお店ベルクの発想」という本は、JR新宿駅東口改札のすぐそばにある「ベルク(BERG)」という飲食店の共同経営者で副店長の迫川尚子さんが書いた本で、ベルクの主なメニューの開発エピソード、ベルクというお店の精神や人材育成、コーヒー・ソーセージ・パン職人のこだわりなどについて書かれています。

 実際にこのお店へ行ってみましたが、以前から見かけていて行ってみたいと思っていたお店で、また想像以上にパンやコーヒーが美味しくて驚きました!

 以前このブログで紹介した「新宿駅最後の小さなお店ベルク」という本は、この本書の著者の夫であり店長である井野朋也さんが、店を立ち上げ、軌道にのせ、維持するという経営上の大きな流れを店長の個人史も含めて書かれたものでしたが、本書はそれを踏襲しつつも特に「食」や「メニュー」等について詳しく書かれたものです。

とてもオススメな本で、またお店もオススメです!


以下はこの本のポイントなどです。

・ベルクは、たった15坪のスペースで、客数が1日平均1500名、基本的にワンコインでも満足いただけるよう、また多様なニーズにこたえられるよう200近いアイテム数のリーズナブルな商品をご用意しています。

・スペシャルランチサービス「エッセンベルク」。10年前に女性客をターゲットに開発した商品です。コンサルタントの押野見さんは「ベルクの良心」とも名言してくれました。30種類の食材が売りです。さまざまな食材が少しずつ試せる、好奇心旺盛な女性にうってつけのメニュー。豆のサラダにポテトにキャベツに天然酵母のパンとパテ。スープもつきます。そして、甘くないデザート代わりのそば粉のブリンツ。ベルクのコース料理です。ベルクは場所柄、夜勤明けのお客様も多く、朝からビールというのが当たり前の店なので、お酒にも合うランチにしたかった。そうでなかったら、ポテトでなくかぼちゃにしたでしょう。かぼちゃはデザートにもなるので一石二鳥。でもビールと合わせるには甘すぎる。やっぱりじゃがいもだ。でも女性客も意識し、あえて塩はかけずにディルをのせてハーブポテトにしたのです。サラダはパンチのある味にしました。デザートはいかにもデザートでなく、さりげなく食事の延長にもしたい。かぼちゃでないとしたら、なにか。考えたあげく、ブリンツという甘くないクレープにブレンドしたチーズにしました。

・ベルクのメニューに、ハムをパンにのせただけの商品「マイスターハムサンド」があります。高橋さんのつくるミルクパンの甘みと河野さんのつくるボンレスハムの旨みが見事に引き立て合っている、絶妙なバランス。思いつきで組み合わせてみたら、コインの表と裏のようにぴったり寄り添って、その美味しさにまず自分がやられちゃいました。サンドといっても、パンの上にハムをのせただけですよ。サンドすらしていない。美味しいけどこれだけで商品にするには・・・・・と一瞬ためらいましたが、スタッフにも試食してもらい、「シンプル・イズ・ベスト」とみんなノリノリ。ミルクパンは、水を使わず牛乳100%でつくられています。赤ちゃんからお年寄りまで食べられるパンを職人さんはつくりたかったそうです。しっとりふんわいミルクの甘味のあるパン。本当にやわらかくて両手でかかえないと生まれたての赤ちゃんの首のようにクタッとなってしまいます。それをスライスしてお出ししています。

・わたしたちは、「やっぱり味」というところからこの仕事をしています。そうすると、いくら営業の方に「ヘルシーです」「流行の最先端です」「いまはこの味が売れますよ」ともっともらいく説明されても、実際に口にしてみて、ダメならダメなんです。どうダメかというのもお話しますが、最初の時点で意識がずれていると、噛み合うはずがないんですね。製造と営業がはっきり分かれていない小さなメーカーですと、つくり手が直接やって来ることが多いので話が早い。職人さんでなくても、営業の人が自分の商品に愛情をもち、単なる仕事という以上の信念をもってやって来たら、思わず話を聞いちゃいます。もちろん、あとは実際に口にしてみて美味しいかどうか、です。いい!となれば即取り扱い決定ですし、気になる部分があれば正直に伝えます。そうしたコミュニケーションができるから、ベルクで扱っている商品はどうしてもそういう小さいメーカーのものになるのです。

・取材を受けると、よく商品開発はスタッフが自発的にするのですか?と質問されます。たしかに、うちは本部のない現場主義の個人店。商品開発部なんて部門もありません。商品開発は社員をはじめ現場のスタッフがやるしかない。でもそうしょっちゅうではありません。メインメニュー(定番)はそうそういじりません。あまり目先の新しさにとらわれなくても、豊富で充実した定番メニューがあれば、そうそう飽きられないという自信も生まれるからです。サイドメニューでは多少「手を変え品を変え」はできまs。うちではかわきものなどのオツマミ小袋や「本日のおつまみ」「本日の樽生ビール」「本日のストレート・コーヒー」「本日の純米酒」「今月のワイン」といったいわゆる日替わり・月替わりメニューです。樽生はかなりレアなものが入ります。純米酒とワインは、日本全国や世界中を旅して集めてくる気分でやっていますので、なるべく一度やったものはやらないようにしています。

・ベルクで大人気の「ジャーマンセット」は発売当初は1日2~3セットしか売れませんでした。いまでは1日50セット以上、多いときは100セットも出るヒット商品になりました。その道のりは長く険しいものでした。支持される、という信念はありました。でも、いわゆる統計的な根拠はなかった。どこにもないオリジナル商品でしたから。あえて言えば、この味。わたし自身が打ちのめされた味。ほかの人が打ちのめされないはずがない。内容は、ポークアスピック、レバーパテ、スモークチキン、メットブルストまたはポークハム、バケット、ライ麦黒パン、ザワークラウトに、コーヒー付き!ベルク三大職人のエッセンスが一皿で味わえる一品。コーヒーだけでなく、ビールやワインも可。昼から夜まで、どの時間帯でもこんなお手頃な価格でこんな贅沢が楽しめる。太っ腹!とわたしたちは勝手に盛り上がっていましが、蓋を空けたらさっぱり出ない。「ジャーマンセット」の販売個数をチェックしては肩を落とす日々でした。大衆店のセットメニュー(数が出るのを前提にコストをかけ価格を安くする)としては、マニアックすぎたのでしょう。

・どんなビールも他の食品と同じく急激な気温の変化には弱い。冷蔵が理想ですが、暑いところにずっとあったのを急に冷やすよりは、多少暑くても温度が一定している方がまだ保存状態がよかったりする。だからルートも大事です。メーカーとお店がいくら気をつけても、間に入る酒屋がいい加減だったらすべて台無し。サーバー(機械)も毎日の洗浄を欠かせません。扱いやすいといっても、そういう食品を扱う上での基本的な管理を怠ればとたんに劣化します。気温や湿度の変化に合わせ、ガス圧の調整をしたり、注ぎ方を工夫したりしてお店の味にしていきます。

・「以前はビールの味がこんなきれいなグリーンの卵形だった。真ん中に風が吹いていた。その卵の形が、あるときからこのように変わった。頭がとんがって、直線的になった。下にささった」と、まず絵にして見せたのです。すると、あれだけ「そんなはずは・・・・・」を繰り返していた人が、「言われて見れば、たしかにそうですね」と急に態度が変わりました。その絵を見て、「はっ」とされた感じです。もしかしたら、誰でも鼻や口で映像を感じているのかもしれない。その営業さんは、その絵を見て、自分でもおぼろげに見えていたものがハッキリ見えて驚いた様子。だから、ぽろっとホンネをもらしたのかも。で、あらためてメーカーから直接もってきてもらった樽を開けて、もう一度いっしょに味見しました。「ほら、卵の形がもうすっかりくずれて、アメーバみたいでしょ」とわたしがまた絵にすると、「おっしゃる通りです」となった。その後、じつは製造現場では、ビールの味を図形で記録しているということもわかりました。味を言葉にするより、絵や図形にしたほうが場所も時間も超えて伝わりやすいというのはあるかもしれません。

・今回、自然卵でお世話になっている小林養鶏農園さんの仕事場にお邪魔して、その謎がやっととけました。それにしても、百聞は一見にしかず。トリたちのエサを実際につくるところを見せていただくことになって、もう驚きと感動の嵐。本当に手作りなんです。あれは絶対に美味しい。人間が食べても!詳しくお教えできないのが残念なのですが、山のもの(自生する薬草や野草)と海のもの20種類の自然素材(非遺伝子組み換え)を組み合わせて、まるでカレーのスパイスみたいと思いました。袋を開けると潮の香りがしたりして。山の中で。素敵でしょ。業務用のエサを与えると、おもしろいくらい卵を量産するそうです。ホルモン剤かなにか入っているのでしょうか。中身を業者さんにたしかめても、答えてくれないんですって。そんな得体の知れないもの、怖くて一切使えませんと小林さん。小林養鶏農園のニワトリたちはみな、慎ましやかに卵を産みます。もともと国産のニワトリは卵の量が少ない性質だそうです。

・現在、ベルクのスタッフは総勢40人。え?こんな小さな店に?とよく驚かれます。新人からベテランまで、3交代で、週1から週6まで、1日3時間とか5時間とか、入り方もさまざま。ベルクは朝7時から夜11時まで。営業時間が長いので、大手のまねをしたらそれこそみんなもちません。うちでは短時間集中方式をとっています。スタッフの一日の平均労働時間は7時間。社員はもっと短いシフトにしています。

・ベルクの狭い厨房には、スタッフが7~8人いることもあります。当初は常時3人体制でしたが、店が成長するにつれ、仕込みも増え、営業時間外の仕込みではとても間に合わなくなりました。それにつくりおきを極力しない方針に変えたので、どうしても人手が必要になる。ゴミ捨てや買い出し、誰かが休憩に入ったときも、その穴を誰かが埋めなければなりません。シフトはかなり複雑怪奇になりますが、これらは計画的にできることです。コスト削減というと、経営者の頭にまず浮かぶのは人件費でしょう。人のコストが一番かかるからです。でもうちではそういう発想はないですね。人を減らせば負担が軽くなると経営者は思うでしょうが、それがサービスの低下につながり、残されたスタッフにしわ寄せがいけば、かえって店にとって負担になる。だからうちではスタッフを増やしこそすれ減らしはしません。売上も増えこそすれ、減りはしないのです。

・キャッチフレーズ的に言えば、「早い」「安い」「旨い」「飽きない」「きれい」「安心」の6拍子が、新宿駅東口改札近くにある小さな飲食店の理想だとわたしたちは思っています。

・うちのアルバイトでも、「飲食業でもやるか」という安易な気持ちで入ってくる人はいます。そこはわたしが優しくも厳しい態度でこわしてあげます。ただ、「自分はこんなもんじゃない」という変なプライドが邪魔するのか、わたしの指導をなんとなくかわす人もいます。そういう人はそこそこ器用でも、結局伸びないし、まわりに悪影響を及ぼすので、ご遠慮願います。どんなにドジでマヌケでも、この仕事が好きでやる気のある人、また好きになろうとしてもがいている人とわたしはいっしょに働きたい。目の前のことを精一杯やる。そこからしか道は開けません。

・店主の滝沢さんに、飲食業の大先輩として、美味しさの秘訣をうかがったことがあります。滝沢さんがあげたのは、次の2つです。1つは、(商品開発のとき)おなかをすかせて食べてはいけない。おなかがすいたらなんでも旨い、と。もう一つは、店を清潔に保つこと。うちには、虫一匹いない。いや、洗剤や殺虫剤を使えということじゃないよ、とも念を押されました。たしかに、店をきれいにしたければ、重曹と石鹸さえあればいい。口に入れて危険なものは、わたしたちもなるべく使わないようにしています。食べ物を扱う以上、そういうものを店の中に入れたくないのですね。そういうものに頼らず、全身全霊で掃除する。

・わたしたちも最初はコンサルタントの紹介で飲食店専門の仕入れ業者さんのお世話になったのです。主要な食材からサランラップまで、ありとあらゆるものが揃うので便利でした。そうなんです。じつはフランチャイズでなくても、実績のあるコンサルタントに相談すれば、とりあえず仕入れルートはなんとかなります。どちらもお金はかかりますけれど、束縛されたくなければ断然コンサルタントでしょう。

・ベルクの食材の3大柱であるコーヒーとパン、ソーセージはどれも職人の手作りです。わたしたちは、彼らのことをよく「うちの職人」と誇らしげによびます。それを聞いた人は、ベルクで職人さんを雇っているんだと思うでしょうね。でもじつはみなさん、それぞれお店をもつ経営者です。コーヒー屋さん、パン屋さん、ソーセージ屋さんのご主人です。ベルクというカフェは、そうした個人店同士のネットワークで成り立っています。

・ある東洋医学の権威の先生が、「健康とはなにか」という質問に、「ここぞという時にふんばれること」と答えていてなるほどと納得したことがあります。ここぞというときではければ、多少ぐたぐたでもいいのか~と妙にホッとしたりして。それも身体というか、人生のバランスですね。人生のどこを「ここぞ」と思うかは人それぞれ。

・わざわざ「無添加」と謳っていて、「食品表示」の原材料名のところにアミノ酸とか書かれてあるとちょっと待ってと言いたくなります。「無添加」はかなりインパクトのあるキャッチフレーズです。それは同じ食にかかわる商売をしていてよくわかります。ただ、だましが入るのはやはりよくない。アミノ酸とはほとんどの場合、化学調味料のことですね。こういう添加物の名称って、どんどん変わったり統一されなかったりして、さっぱり意味がわかりません。基本的には化学物質名で表示することになっていますが、読みにくい物質名は省略したり、読みやすければ別の名前にしてもいいことになっているからです。使用目的によって、物質自体の名前が変更されることもあります。栄養強化が目的であれば、化学物質でも表示しなくていいとか。あとたとえば、材料の中になにか加工品が含まれていると、その加工品の名前を表示する義務はありますが、その加工品の材料まで表示する義務はありません。実際、表示されることはまずありません。なんのための食品表示?と思います。

<目次>
まえがき 仕事としての食。趣味としての食。人生のテーマとしての食。
プロローグ 食で生きる
 食とお金儲け
 ベストテンな味だけでいいの?
 店は自分でやるもの
 プロでもなく、アマでもなく
1章 お店の味をつくる
 ベルクの味はどうやって生まれるのか?
 ただのビールが美味しいわけは?
 味の輝きを保つのは40人のスタッフ・アルバイト
 15坪という逆境が生んだ知恵と工夫
2章 職人さんと「味」でつながる~3大職人の仕事術
 町の天才を捜そう!
 コーヒー職人の豊かさ
 ソーセージ職人の眼力
 パン職人の哲学
3章 お店は表現だ!
 味には「形」がある
 食と健康
 料理と表現
 お店に学ぶ
あとがき 「味」に導かれて

面白かった本まとめ(2011年上半期)

<今日の独り言> 
Twitterをご覧ください!フォローをよろしくお願いします。 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする