「STYLE BAND TOKYO & BO NINGEN presents FAR EAST ELECTRIC PSYCHEDELIC vol.2」
イギリスを拠点に活動する日本人4人組BO NINGEN(棒人間)の凱旋公演にあわせて日本のアングラ・シーンを代表するアーティストが集結したサイケデリック・パーティー。BO NINGENは2月にも来日し、5月に日本でデビュー・アルバムがリリースされその特異な存在感が高く評価されている。この組み合わせはサイケ・ファンには応えられない。その割には動員はいまひとつ。先日同会場での少年ナイフの時の半分くらいで客席後ろの方は寂しい。やはりサイケは日本ではマイナーな存在なのだろうか。しかし人数は少なくても熱心なファンが集まったイベントは熱く盛り上がった。
1番手はガガキライズ。G&Dsの二人組でハードロック/プログレ/アヴァンギャルドを混ぜ合わせシェイクしたようなノイズ・インスト・バンドである。テクニック的にはかなりレベルが高く、テンポ・チェンジの"キメ"が見事に決まり気持ちが良い。激しいステージングはトップ・バッターとしてはピッタリだが、いかんせんヴォーカルやメロディがないので次第に飽きてくる。30分が限度だと思っていたら丁度30分で終了。
LSD Marchは道下慎介氏を中心に1990年代から関西で活動するサイケ・ユニット。この日はドラムの高橋幾郎氏とのデュオである。さすがベテラン、力で押すのではなく地面の下に沈みこむような情念的なヴォーカルをときに激情を吐き出すギターに乗せてじっくり聴かせるアシッド・フォークだ。聴いていて森田童子や三上寛、浅川マキなどを思い出した。幾郎氏のドラムもロックとは違う方向へ向かうメロディアスなパーカッションで素晴らしいコンビネーションを聴かせる。30分ほどのステージだったがもっと聴いていたくなるライヴだった。因みに道下氏はオシリペンペンズのマネージャー兼エンジニアであり、時折ギターも弾く。
これが確か3度目の日本ツアーになるBO NINGENの登場。ロンドンに留学中の20代の4人が意気投合しバンドを結成、ツインギターの破天荒で混沌としたサイケデリック・ロックに日本語のヴォーカル、腰までの長髪に女物のドレス、というスタイルでイギリスのロック・ファンのド肝を抜き、プレスで高く評価され、ヨーロッパ各地のフェスやツアーにひっぱりだこ、という今までになかった本格的な"インターナショナル"ロック・バンドだ。ダモ鈴木、リディア・ランチ、ファウストなどの伝説的ロック・アイコンと共演してきた実力は文句のつけようがない。B&VoのTaigen君のパラノイアっぽいハイトーン・ヴォイス、破壊的なファズ・ギター、叩き付けるようなビートを聴いていると、サイケというよりはストーナー・ロックという感じもする。どちらも似たようなものだけどね。今回は半分以上が新曲。彼らの想像の泉は今が盛りとばかり湧き出て溢れているようだ。国内のバンドとは桁違いの力量を見せつけてくれた。
トリはTaigen君が4・5年前に観て感動の涙を流した、という灰野敬二さん。この日は久々にエアシンセを並べたセッティング。美しいヴォイス・パフォーマンス~エアシンセの爆音~フレットレス・ギターのストレンジ・サウンド~SG&ヴォーカルという流れ。「ここ」「あっち」「暗号」「おまえ」といった昔ながらの曲を聴かせるあたりは先日の二万電圧の時に似ている。圧倒的存在感に誰もが凍りついたように立ちすくむのみ。帝王ここにあり、といった80分だった。
楽屋で話を聞くと「他のバンドがリバーヴ系のパワー・パフォーマンスだから、今日は70%の力で演奏した」とのこと。そうは言っても相当音は大きかったので、気持ちの問題なのだろう。ライヴの後は頭が真っ白になって何も考えられないと言いつつ、8月15日(月)の"プロジェクトFUKUSHIMA"に静寂として出演が決まったことを話してくれた。「あくまで福島の地元の人主導で開催するフェスティバルにしたい」と強調していた。8月19日(金)川崎での"FREEDOMMUNE ZERO"にもソロで参加するので、灰野さんを野外で体験する機会が2度続くわけだ。これはどちらも駆けつけなければ。
帰りにBO NINGENの4人のメンバーがそれぞれ「Koroshitai Kimochi」をリミックスした日本ツアー特製CDRを購入、Taigen君にサインをもらった。スヌーピーのようにも見える謎のイラストの正体は????
日本の
サイケが集い
燃えた夜
帰りの夜風が冷たくてすっかり鼻風邪をひいてしまった。