山下洋輔さんが東京オペラシティでニューイヤー・コンサートを行うようになって10年余り、2009年からは”プロデュース”として茂木大輔、ブーニン、林英哲とジャズに拘らない音楽家をゲストに迎え彼らの新たな顔を紹介している。4回目にあたる今年は人気ヴァイオリニスト、アン・アキコ・マイヤース嬢をフィーチャーし「アン・アキコ・マイヤース~初夢ヴァイオリン」と銘打ったコンサートになった。実は洋輔さんはアン・アキコ嬢のお母さんと小学生の頃から家族ぐるみで親しくしていたそうだ。彼女がアメリカで結婚してからも音信は続き、ある日「娘がヴァイオリニストになりました」という手紙と共にカセットが送られてきた。それが12歳でズービン・メータ指揮ニューヨーク・フィルと共演したアン・アキコ・マイヤース嬢の音だった。その後15歳で初来日したアン・アキコ嬢はテレビCMに出演したり森繁久彌さんと共演したりして人気者になっていく。洋輔さんも陰ひなたに彼女の面倒を見て結婚式にはニューヨークまで出向いたという。そんな縁で今回のコンサートが実現した訳だ。
2部構成で第1部は洋輔さんとアン・アキコ嬢のソロと共演、第2部は本名徹次指揮東京フィルとの共演。まずは洋輔さんがソロ・ピアノで自作の「やわらぎ」を多少破天荒に演奏し、次にアン・アキコ嬢が「荒城の月」を艶やかに奏でる。そしてふたりの共演で洋輔さん作の「エコー・オブ・グレイ」。ドシャメシャ奏法はなりを潜めあくまでアン・アキコ嬢の伴奏に徹するプレイが印象的だった。
第2部は「サマータイム」「オータム・イン・ニューヨーク」そしてウィントン・マルサリス書き下ろしのカデンツァを含むモーツァルト「ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調 K216」の日本初演。完全なクラシック演奏で途中何度も意識を失いかけたが、アン・アキコ嬢の類い稀な音の際立ちに感動することしきり。
いつまでも鳴り止まぬ拍手に2曲アンコールで応える。コンサート終了後サイン会で笑顔を見せるアン・アキコ嬢はスレンダーな美人だった。男性なら洋輔さんじゃなくても目尻が下がるのは仕方がないだろう。新春に相応しいエレガントで豪華なコンサートだった。
エレガント
その一言で
おめでとう
個人的には昨年末の大友良英スペシャル・カルテットのようにドシャメシャ暴れまくる洋輔さんをもっと観たいところである。