A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

「金子寿徳/光束夜トリビュート kaneko jutok 1958-2007」@新宿JAM 2012.1.24 (tue)

2012年01月26日 01時25分18秒 | 灰野敬二さんのこと


1970年代後半から吉祥寺マイナーを拠点に灰野さんの不失者と共にアンダーグラウンド・ロックの暗黒の闇を蠢いてきたバンド、光束夜のギタリスト/ヴォーカリスト金子寿徳氏が急逝してから早5年。晩年に金子さんが入り浸っていた新宿ゴールデン街のバー裏窓の企画で毎年命日にトリビュート・ライヴが開催されてきた。今年は灰野敬二+高橋幾郎/割礼/宇宙エンジン/川口雅巳+諸橋茂樹+田畑満/マヘル・シャラル・ハシュ・バズという現在の地下ロック・シーンを代表する豪華な出演者で行われた。

開演前に金子さんの日常を撮影したフィルムが上映されていた。大雪の翌日ということもあり観客は最初はまばらだったが時間が経つにつれ徐々に増え最終的には満員に近い動員になった。私は最前列左手に座り込みレッドアイを飲みながらじっくり観戦。

最初はマヘル・シャラル・ハシュ・バズ。ドラムレスの5人編成でのステージ。左からtp,vln,basoon,gをバックに工藤冬里さんがパソコンに映された歌詞を見ながらギターを抱えて歌う。この日は各バンドが光束夜または金子さんの曲を1曲ずつカヴァーするという企画だった。冬里さんは金子さんとの共演歴も長く光束夜のメンバーを除いては一番親しい友人だった。この日も物販で二人の共演CDRが販売されていた。1曲目のカヴァーとラストの「休日出勤」以外は冬里さんが歌詞をマシンガンのようにしゃべり散らすという内容。いつもより少しだけ硬派なマヘルを聴くことができた。



2番目は川口雅巳+諸橋茂樹+田畑満のトリオ。私は川口氏の粘り気のあるギターと歌が大好きだ。田端氏のドライヴするベースに乗ってギターを弾きまくる曲、珍しく田端氏がヴォーカルを聴かせる曲の2曲だけだったが、独特のサイケデリックな世界をたっぷり楽しめた。



3番目にスペシャル・ゲストの田中トシさん&後飯塚遼さん。吉祥寺マイナーによく出演していたパフォーマー・デュオである。ピナコテカ・レコードの第1弾LP「愛欲人民十時劇場」にもふたりのパフォーマンスが収録されている。トシさんがバチと拍子木を鳴らしながら歌い、後飯塚さんがエレクトリック・ヴァイオリンを痙攣しながらプレイする。その迫力と緊張感は当時のマイナーの世界を髣髴させた。



4番目が宇宙エンジン。非常階段/インキャパシタンツのコサカイフミオ氏率いるロック・トリオである。コサカイ氏は非常階段でギターを弾くのを観たことがあるが、こうして自分のバンドで観るのは初めて。ギターはパワーコード中心で決して上手くはないのだが、その巨体で歌う声が予想以上に上手いのに驚く。



5番目に割礼。今年最初のライヴである。ひとバンド30分の持ち時間で彼らの長尺な曲が収まりきれるのか、と思ったが、オリジナル2曲と間に挟まれた光束夜のカヴァーの計3曲で割礼ならではの蕩ける空間を生み出したのは正にマジック。マイクスタンドに貼った歌詞を見ながら宍戸氏が歌ったカヴァーもそれと知らなければ彼らのオリジナルと思ってしまう独特の演奏。30分がとても長く感じられた幻惑的な割礼ワールド。



トリが灰野さんと高橋幾郎氏のデュオ、と思ったらもうひとり長髪長身の男性がベースを持って登場。あれは何と元ゆらゆら帝国の亀川千代氏!全く事前のインフォメーションのないサプライズ・ゲストの登場に観客がざわめきステージ前に押し掛ける。私は急いで全国のちよちよガールズへツイート(意地悪)。あとで聞いたら前日に灰野さんから誘われ急遽決まった出演だったそうだ。ゆら帝解散後、灰野さんと亀川氏が共演するのは昨年1月から数えて3回目。それだけ灰野さんが亀川氏を気に入っている証拠である。幾郎氏とは初共演だが、そうは思えぬ息の合ったグルーヴを生み出す。さすがにベテラン同士。その上に灰野さんの情念に満ちた歌とギターが重なれば怖いものなしの最強トリオの完成。恐らくリハの時に初めて音合わせをしたのだろうが、まるでレギュラー・トリオのような構成のしっかりした演奏だった。灰野さんはいつも以上に歌を聴かせる。金子さんの詩を前半に、後半は自分の詩を歌う。全2曲22分の短い演奏だったがこの貴重な時間をしっかり胸に刻み込んだ。灰野さんのライヴはいつも何が起こるか予測不能で面白い。27日(金)の不失者@UFO CLUBも必見。ちよちよガールズは見逃せませんね!



ライヴはこれで終了の予定だったが、最後に光束夜のb&voで金子さんの良きパートナーだったミックさんが工藤冬里さんと高橋幾郎氏をバックに1曲演奏。光束夜そのままの歌を披露。冬里氏は珍しくたがが外れたような凶暴なプレイを展開。追悼の夜に相応しい魂の籠った演奏だった。



光束夜
2度と開かぬ
暗闇よ

各バンドの演奏時間は短かったが、それが逆に緊張感を持続させ飽きることのない素晴らしいイベントだった。
裏窓の福岡さん、毎年本当にごくろうさまです。近々友人を連れて飲みに行きますのでよろしくお願いします。と最後は私信でライヴレポートは終了。
コメント (10)
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