A Challenge To Fate

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カート・コバーンの魂を受け継ぐ新世代~「NEVERMIND TRIBUTE」

2012年04月07日 00時38分35秒 | ロッケンロール万歳!


告白しよう。私は1990年代にニルヴァーナをちゃんと聴いたことがなかった。勿論「SMELLS LIKE TEEN SPIRIT」のPVはテレビで嫌と言うほど観たし雑誌でセンセーショナルに扱われるのを読みもした。しかし何故か彼らの音楽や思想にそれほど興味を持てなかったのである。いわゆるグランジではパール・ジャムやサウンドガーデン、マッドハニーなどの方が好みだった。妙なアンチ・メジャー志向を持っていたのでニルヴァーナ、特にカート・コバーン(正確には”コベイン”だが、ここでは定着した呼び名で記す)が「グランジの象徴」として別格扱いされることに反発を覚えたのかもしれない。1994年4月5日(推定)にカートがショットガンで自殺した時も特に深い感慨はなかった。逆に彼の死後ますます神格化が進み、数々の評伝や特集記事、未発表音源CDが出る度に興味を削がれていったのが事実だ。

1991年発表の大ヒット・アルバム「NEVERMIND」をちゃんと聴いたのは昨年同アルバムのデラックス・エディションをひょんなことから手に入れた時が初めてである。リリースから20年を経て聴く「NEVERMIND」は思いの外ポップで単なるグランジを超えたエヴァーグリーンな名曲満載、全世界で3000万枚売れたというのも頷ける作品だった。しかしそれと同時に1990年代初頭という時代を如実に反映したサウンドでもあり、セックス・ピストルズに衝撃を受けた世代にとっては今一つのめり込めないことは確かだ。だから特に変な思い入れを持つことなくロック名盤のひとつとして捉えようと思う。

これだけ世界的にヒットしたバンドだからトリビュート盤もかなりの数リリースされている。その数はもしかしたらビートルズやストーンズのトリビュート盤と並ぶかもしれない。つい先日リリースされた日本の若手ロック・バンドによる「NEVERMIND TRIBUTE」というCDを聴く機会を得た。ティーンエイジャーに大人気のバンドばかりらしく知っているバンドはBACK DROP BOMB、LOW IQ 01、MAN WITH A MISSION、9mm Parabellum Bulletなど半分程度である。注目すべき点は”NIRVANA”トリビュートではなくあくまで”NEVERMIND”という一枚のアルバムへのトリビュート盤だということだ。曲順もオリジナル盤と同じに並べてある。ここに収められたカヴァー・ヴァージョンはニルヴァーナを神と崇める思い入れたっぷりの押し付けがましいものではなく、いい曲だからカヴァーしたいという素直な気持ちで演奏したものだから聴いていて風通しが良く清々しい気分になってくる。この一見醒めた感覚が2010年代のロック・バンドらしいと言えるし、カート・コバーンの亡霊に惑わされることなく素顔のニルヴァーナの楽曲を楽しめる好盤だといえる。

ジム・モリソンにしてもジミヘンにしてもジャニスにしても一時の神格化の熱狂が冷めた頃になって冷静に分析・再評価が出来るようになったわけで、ニルヴァーナに関しても声高にカート・コバーンの悲劇を喧伝する必要はもうあるまい。ひとりの才能あるミュージシャンとして客観的に受け止めて評価すべきではないか。無垢な若さに溢れるこのトリビュート盤を聴いてそんなことを考えた。



ニルヴァーナ
涅槃に遊ぶ
スピリット

1994年に出たソニック・ユースや少年ナイフなどによるカーペンターズ・トリビュートの冷徹な批評眼を彷彿させるアルバムである。
コメント
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