A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

DCPRG@新木場 Studio Coast 2012.4.12 (thu)

2012年04月14日 00時25分08秒 | 素晴らしき変態音楽



「Ron Zacapa presents DCPRG」
出演:DCPRG, [GUEST] Simi Lab, 兎眠りおん, 大谷能生, [Opening Act] Killer Smells

先日このブログで最新作「SECOND REPORT FROM IRON MOUNTAIN USA」を取り上げ"このアルバムはヒップホップ・アルバムではない"と書いたが、その後雑誌やネットでの菊地成孔氏のインタビューを読むと、彼が長年のヒップホップ/ラップ・ファンであり、いつかはヒップホップ的な作品を制作したいと思い続けていたことが語られている。インパルスからの初スタジオ・アルバムを制作するにあたってその野望を実現させた。最初その意図をレコード会社に伝えたところディレクターがいきなりコモンに連絡を取ったらしく菊地氏はひっくり返ったという。コモンは日程的にNGになり、それならばと共演を打診したのが神奈川・相模原を中心に活動を広げる20代の流動的不定形クルー「Simi Lab」だった。彼らが昨年リリースした作品はヒップホップ界で高く評価され話題になり、菊地氏もこのユニットに惚れ込み自分のラジオ番組でも何度も紹介したらしい。

そんな訳でSimi Labのパフォーマンスも観られるこのライヴがとても楽しみだった。新木場までは少し時間がかかるのでStudio Coastへ着いた時にはOAのKiller Smellは終わっており、Simi Labの最後の2曲が聴けた。2400人収容の会場はほぼ満員。年齢的には20~30代中心。Simi Lab人気も相当なもので女性を含む4人のラッパーの煽りに反応して腕を振り上げたり歓声が起ったり盛り上がっている。前も書いたようにこのジャンルは個人的にまったく守備範囲外なので下手なことを書くと馬脚を現すことを承知の上で感想を言えば「これの何処が新しいんだろう」というのが正直なところ。25年前にRUN D.M.C.の初来日公演を観たが、音楽的には何にも進化していない気がした。確かに4人のマイク回しやライムの踏み方は熟れたものだが、世代的に共感出来ないのか感性が衰えたせいか、私には魅力は理解出来ない。こればっかりは申し訳ないがお許し願いたい。



Simi Labが退場するとまもなくDCPRGのメンバーがぞろぞろ登場。客席も含めステージ全体を観たかったので2階席へ移動。類家心平氏のリバーブを目一杯かけたトランペット・ソロが延々と続く新作収録の「殺陣」からスタート。これは馴染みの世界。ふたりのドラマーとパーカッションが複雑なポリリズムを叩き出し、キーボードや管楽器がアブストラクトなフレーズを重ねる。大村孝佳氏のギターはやはり白眉。ギターの早弾きには殆ど興味はないが大村氏の駆け巡る高速フレーズには抵抗出来ない。そんな中かろうじてアリガス氏のダブ風の重いベースが反復メロディでグルーヴを産み出す。CDレビューで"このリズムじゃ踊れない"と書いたが観客はベースのビートに合わせてうねるように踊っている。私の隣の若い女性はピョンピョン飛び跳ねながら観ている。今の若者はこれで踊るんだ、と妙に感心。菊地氏も変則的なビートの上で手拍子をして客を煽る。演奏の展開が変わるごとに大きな歓声が上がる。ステージと観客が一体となって盛り上がるステージを観ているうちに渋さ知らズを思い出した。渋さがお囃子や舞踏など日本的な要素を取り入れお祭り騒ぎを創出するのに対しDCPRGはクラブ仕込みのエレクトロニックなサウンドで客を踊らせる。サウンドの感触は異なれど目指す世界が似ているのは事実だと思う。しかもキャパ2000人のスタンディングのホールを満員にするジャズ・バンドはこの2者以外に思いつかない。あ、ジャズじゃないけどROVOもいるか。

「Catch 22」ではJAZZ DOMMUNISTERSこと大谷能生氏がラップで参加し、噂のヴォーカロイド兎眠りおんの歌を菊地氏がCDJで操作、さらに自らマイクを握ってラップを聴かせる。歌詞を書いた紙を唄い終わるごとに丸めて客席に投げ込むのが可笑しい。「Microphone Tyson」「Uncommon Unremix 」ではSimi Labの4人が参加。DCPRGの演奏をバックにしたラップは単独の演奏とは打って変わってエキサイティングで面白かった。「Duran」ではCDJでAmiri Baraka氏の演説を重ねる。Baraka氏がLeroi Jones氏と同一人物であることを知り驚く。Leroi Jones氏は60年代アメリカン・カウンターカルチャーを代表する詩人/作家で、確かESPレーベルからレコードを出していた筈。今でも存命でDCPRGのレコーディング時には本人から許可が来ないまま音源を使用、CDが完成した頃にBaraka氏から「使ってくれてありがとう」という許可が届いたけど本人は聴いていないだろう(笑)と菊地氏。

アンコールで「こんな辺鄙なところまで高いお金を払って観に来てくれてありがとう。でもその価値はあったでしょ」とMCしてSimi Labの曲とDCPRGの曲をマッシュアップ。この共演が産み出す化学反応は素晴らしいものだった。



<Set List>
01. 殺陣 / Tate Contact & Solo Dancers
02. Plamate At Hanoi
03. Circle / Line
04. Catch 22 feat. JAZZ DOMMUNISTERS & 兎眠りおん
05. Microphone Tyson feat. SIMI LAB
06. Uncommon Unremix feat. SIMI LAB
07. Structure I - La Sructure de la Magie Moderne
08. Duran feat. "DOPE"(78) by AMIRI BARAKA
-Encore-
09. Mirror Balls feat. SIMI LAB / The Blues

とは言えど
やっぱり分からぬ
ヒップホップ

Twitterに「DCPRGの物販でミュージックマガジン売ってて笑ったw」というツィートがあり吹いた。
コメント
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