今年1月11日のブログで「今年気になる音源」として紹介した静岡の庭と大阪の.esの新作が偶然にも時を同じくしてリリースされた。先述の記事の中で"2012年はローカル・シーンの活性化が大きな鍵になるに違いない"と書いたのだが、それを証明するかのようにこのふたつのバンドがより進化した新作を届けてくれたことは興味深い。
庭は望月公喜氏を中心に静岡を拠点に活動する不定形ノイズ・ユニット。2002年に活動開始だから今年が活動10周年になるベテランである。"静岡のラリーズ"UP-TIGHTの青木智幸氏が店長を務めるロックバー、LUCREZIAを拠点にノイズ界の最古参NORDの伊藤まく氏主催のjapanoiseイベントや自主企画「JunkYard」など精力的なライヴ活動を行ってきた。2011年4月に惜しくもLUCREZIAが閉店すると、拠点を同年9月にオープンしたばかりのライヴハウス騒弦に移し定期的なライヴ活動を続けている。今回リリースされたのは騒弦に於けるライヴ音源2種と望月氏のソロ音源の3枚のCD-R、およびノイズ・コンピ「Voluntary Euthanasia」である。望月氏の「庭の音は日々変化する」との紹介通り、2枚のライヴ音源では前回紹介した2009年発表の「節子抄-Tales of Setsuko-」とはまたひと味違った刺激的なサウンドを展開している。
以下カッコ内は各作品に関する望月氏のコメント:
◇庭/2012-1(LIVE Recorded at 騒弦 on DEC. 30.2011)庭=Kohki. M, 望月コージ, satoru yagi
[静岡を拠点に活動するメンバー不定のノイズユニット「庭」のライブ音源シリーズ。今作はドラムの参加により、硬質なウネリを伴った流れが構築されている。]
ドラムと吹き荒れる轟音ノイズによる暴力演奏。混沌の果てに到達する光臨に満ちた風景が美しい。非常階段ファンはマスト。
◇庭/2012-2(LIVE Recorded at 騒弦 on JAN.29.2012)庭=Kohki. M, pujari, 塩沢達哉
[静岡を拠点に活動するメンバー不定のノイズユニット「庭」のライブ音源シリーズ。今作は常に変容する庭にあっても更に異質であり、ハードコアとサイケデリックの波間を浮遊するかのようなサウンド。]
2012-1の1ヶ月後のライヴだが、打って変わってドラムレスの電子音とフィードバック・ノイズが浮遊するドローン・セッション。70'sジャーマン・トランスやHair Stylisticsを想わせる世界にイマジネーションが広がる。轟音ノイズが苦手な人にもおススメ。
◇Kohki.M/2012-1(Recorded at 音楽天国駿河台店 on sep.01.2011)
[静岡を拠点に「庭」「アナル観音男子」等で活動するKohki.Mのソロ・ワーク。意味や理論を排した無知の騒音塊集。]
情け容赦ないハーシュ・ノイズが耳を圧する望月氏のソロ・アルバム。メルツバウ以来のノイズの本流を受け継ぐ新伝承派電子雑音。完成度の高さはワールド・クラス。
▼庭と詩人のニノミヤコウジ氏との共催イベント「毒宴会」の模様
◇V.A./Voluntary Euthanasia
[岡山のArtificial Hallucinationがプロデュースを勤め、ノイズパフォーマー:NRYYが総合監督をした、話題の日本ノイズ・コンピレーション。]
庭の他に私が個人的に交流のある大阪のNRYY(アメリカのBlack Leather Jesusとのコラボ)、栃木のsomaの両氏や、鳥取のELMA氏、ベテランのK2氏などを収録。すべて東京以外のローカルのアーティストなのが興味深い。現在進行形の日本のノイズ・シーンを俯瞰できる好コンピ。
<Live Schedule>
4/21(土)静岡 騒弦
JunkYard Vol.6「地下で唄うラジオ」
VVDBLK&pujari+庭/直江実樹+進/発泡るチろーる/スープーメッセンジャー/青木智幸(UP-TIGHT)/直江実樹+伊藤大樹
5/19(土)静岡 騒弦
「L∞P!×気が触れても彼女と歩いてた」
アナル観音男子/アドバルーン/twice/terupapa/豆尖/オトギャクセツ/Golgotha/ryo hadano
6/9(土)静岡 騒弦
庭/CRY BABY’S/百六番
CDの購入はコチラかコチラ
.es(ドットエス)は2009年大阪の現代美術ギャラリー「ギャラリーノマル」をホームに誕生したコンテンポラリーミュージックユニット。橋本孝之氏(アルトサックス、ギター、ハーモニカ、改造した尺八)とsara嬢(ピアノ、パーカッション、ダンスetc.)のふたりをフロントマンに、現代美術ディレクター林聡氏がコンセプトと空間構成をプロデュース。基本的にはサックスとピアノのインプロヴィゼーションだが、フリージャズや現代音楽の範疇に留まらない自由度に溢れたサウンドは新世代の即興芸術として高く評価出来る。デビュー作「オトデイロヲツクル」は日本一マニアックなレコード店モダーン・ミュージックでも年季の入った即興ファンに大好評で海外からもオーダーが来て好セールスを記録したそうだ。
この2nd CD「Resonance」はギャラリーノマルで開催されたGroup Exhibition「BOX」展の関連イベントとして2014年1月14日(土)に開催されたライヴパフォーマンスを収録。同展の出展作家だった藤本由紀夫氏のエディション作品「kontrapunkt」(オルゴール)を会場の幾人かが手に持ち、ラストは合図を受けて全員で一斉にネジを巻くという会場参加型のライヴだったという。妙なるオルゴールの音色から始まり、咽び泣くサックスと対峙するピアノの張り詰めた即興演奏、最後は再び無数のオルゴールに帰結するというストーリー性のある作品。前作以上に研ぎ澄まされた音世界は"孤高"という言葉で表現するしかない。共鳴、共振を意味するアルバム・タイトルに偽り無い真摯な演奏を聴かせる彼らは現代の音楽シーンでは貴重な稀少種である。
前作のパッケージはセルロイドにカラフルなビーズを印刷したオシャレなものだったが、今作は藤本氏の円形楽譜をモチーフに、オフセット+シルクスクリーン印刷、アクリルケースに穴開け加工を施したアート作品になっている。穴の位置は一枚毎に異なっている。フランス文学者、翻訳家でありEP-4のキーボードでもある鈴木創士氏がデュシャンの「大ガラス」に言及したライナーノートを寄せている。
▼最新ライヴ映像。橋本氏はサックスのマウスピースを付けて改造した尺八を演奏
<Live Schedule>
4/21(土)大阪ギャラリーノマル
田中朝子展「in a book」オープニングイベント
5/19(土)大阪chef - d'oeuvre(シェ・ドゥーブル)
「strange colors in May」
.es/磯端伸一(g)
CDの購入はコチラ
庭は初期WHITEHOUSEのコピー貼付ジャケの伝統を引き継いだ白地にスタンプ押しの簡易なアートワーク、.esは完成されたコンセプチュアル・アート作品、と制作スタイルも対照的な両者であり、一緒に紹介されるのはもしかしたら不本意かも知れないが、このブログの読者ならどちらも気に入っていただけるものと思う。 いずれにせよ東京では体験出来ないローカル・シーンの胎動を感じるには絶好のアーティストだと言えるだろう。
東京じゃ
分かりますまい
地方の秘宝
そういえば5月のEP-4復活ライヴのチケット早く買わないとな~。
庭は望月公喜氏を中心に静岡を拠点に活動する不定形ノイズ・ユニット。2002年に活動開始だから今年が活動10周年になるベテランである。"静岡のラリーズ"UP-TIGHTの青木智幸氏が店長を務めるロックバー、LUCREZIAを拠点にノイズ界の最古参NORDの伊藤まく氏主催のjapanoiseイベントや自主企画「JunkYard」など精力的なライヴ活動を行ってきた。2011年4月に惜しくもLUCREZIAが閉店すると、拠点を同年9月にオープンしたばかりのライヴハウス騒弦に移し定期的なライヴ活動を続けている。今回リリースされたのは騒弦に於けるライヴ音源2種と望月氏のソロ音源の3枚のCD-R、およびノイズ・コンピ「Voluntary Euthanasia」である。望月氏の「庭の音は日々変化する」との紹介通り、2枚のライヴ音源では前回紹介した2009年発表の「節子抄-Tales of Setsuko-」とはまたひと味違った刺激的なサウンドを展開している。
以下カッコ内は各作品に関する望月氏のコメント:
◇庭/2012-1(LIVE Recorded at 騒弦 on DEC. 30.2011)庭=Kohki. M, 望月コージ, satoru yagi
[静岡を拠点に活動するメンバー不定のノイズユニット「庭」のライブ音源シリーズ。今作はドラムの参加により、硬質なウネリを伴った流れが構築されている。]
ドラムと吹き荒れる轟音ノイズによる暴力演奏。混沌の果てに到達する光臨に満ちた風景が美しい。非常階段ファンはマスト。
◇庭/2012-2(LIVE Recorded at 騒弦 on JAN.29.2012)庭=Kohki. M, pujari, 塩沢達哉
[静岡を拠点に活動するメンバー不定のノイズユニット「庭」のライブ音源シリーズ。今作は常に変容する庭にあっても更に異質であり、ハードコアとサイケデリックの波間を浮遊するかのようなサウンド。]
2012-1の1ヶ月後のライヴだが、打って変わってドラムレスの電子音とフィードバック・ノイズが浮遊するドローン・セッション。70'sジャーマン・トランスやHair Stylisticsを想わせる世界にイマジネーションが広がる。轟音ノイズが苦手な人にもおススメ。
◇Kohki.M/2012-1(Recorded at 音楽天国駿河台店 on sep.01.2011)
[静岡を拠点に「庭」「アナル観音男子」等で活動するKohki.Mのソロ・ワーク。意味や理論を排した無知の騒音塊集。]
情け容赦ないハーシュ・ノイズが耳を圧する望月氏のソロ・アルバム。メルツバウ以来のノイズの本流を受け継ぐ新伝承派電子雑音。完成度の高さはワールド・クラス。
▼庭と詩人のニノミヤコウジ氏との共催イベント「毒宴会」の模様
◇V.A./Voluntary Euthanasia
[岡山のArtificial Hallucinationがプロデュースを勤め、ノイズパフォーマー:NRYYが総合監督をした、話題の日本ノイズ・コンピレーション。]
庭の他に私が個人的に交流のある大阪のNRYY(アメリカのBlack Leather Jesusとのコラボ)、栃木のsomaの両氏や、鳥取のELMA氏、ベテランのK2氏などを収録。すべて東京以外のローカルのアーティストなのが興味深い。現在進行形の日本のノイズ・シーンを俯瞰できる好コンピ。
<Live Schedule>
4/21(土)静岡 騒弦
JunkYard Vol.6「地下で唄うラジオ」
VVDBLK&pujari+庭/直江実樹+進/発泡るチろーる/スープーメッセンジャー/青木智幸(UP-TIGHT)/直江実樹+伊藤大樹
5/19(土)静岡 騒弦
「L∞P!×気が触れても彼女と歩いてた」
アナル観音男子/アドバルーン/twice/terupapa/豆尖/オトギャクセツ/Golgotha/ryo hadano
6/9(土)静岡 騒弦
庭/CRY BABY’S/百六番
CDの購入はコチラかコチラ
.es(ドットエス)は2009年大阪の現代美術ギャラリー「ギャラリーノマル」をホームに誕生したコンテンポラリーミュージックユニット。橋本孝之氏(アルトサックス、ギター、ハーモニカ、改造した尺八)とsara嬢(ピアノ、パーカッション、ダンスetc.)のふたりをフロントマンに、現代美術ディレクター林聡氏がコンセプトと空間構成をプロデュース。基本的にはサックスとピアノのインプロヴィゼーションだが、フリージャズや現代音楽の範疇に留まらない自由度に溢れたサウンドは新世代の即興芸術として高く評価出来る。デビュー作「オトデイロヲツクル」は日本一マニアックなレコード店モダーン・ミュージックでも年季の入った即興ファンに大好評で海外からもオーダーが来て好セールスを記録したそうだ。
この2nd CD「Resonance」はギャラリーノマルで開催されたGroup Exhibition「BOX」展の関連イベントとして2014年1月14日(土)に開催されたライヴパフォーマンスを収録。同展の出展作家だった藤本由紀夫氏のエディション作品「kontrapunkt」(オルゴール)を会場の幾人かが手に持ち、ラストは合図を受けて全員で一斉にネジを巻くという会場参加型のライヴだったという。妙なるオルゴールの音色から始まり、咽び泣くサックスと対峙するピアノの張り詰めた即興演奏、最後は再び無数のオルゴールに帰結するというストーリー性のある作品。前作以上に研ぎ澄まされた音世界は"孤高"という言葉で表現するしかない。共鳴、共振を意味するアルバム・タイトルに偽り無い真摯な演奏を聴かせる彼らは現代の音楽シーンでは貴重な稀少種である。
前作のパッケージはセルロイドにカラフルなビーズを印刷したオシャレなものだったが、今作は藤本氏の円形楽譜をモチーフに、オフセット+シルクスクリーン印刷、アクリルケースに穴開け加工を施したアート作品になっている。穴の位置は一枚毎に異なっている。フランス文学者、翻訳家でありEP-4のキーボードでもある鈴木創士氏がデュシャンの「大ガラス」に言及したライナーノートを寄せている。
▼最新ライヴ映像。橋本氏はサックスのマウスピースを付けて改造した尺八を演奏
<Live Schedule>
4/21(土)大阪ギャラリーノマル
田中朝子展「in a book」オープニングイベント
5/19(土)大阪chef - d'oeuvre(シェ・ドゥーブル)
「strange colors in May」
.es/磯端伸一(g)
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庭は初期WHITEHOUSEのコピー貼付ジャケの伝統を引き継いだ白地にスタンプ押しの簡易なアートワーク、.esは完成されたコンセプチュアル・アート作品、と制作スタイルも対照的な両者であり、一緒に紹介されるのはもしかしたら不本意かも知れないが、このブログの読者ならどちらも気に入っていただけるものと思う。 いずれにせよ東京では体験出来ないローカル・シーンの胎動を感じるには絶好のアーティストだと言えるだろう。
東京じゃ
分かりますまい
地方の秘宝
そういえば5月のEP-4復活ライヴのチケット早く買わないとな~。