A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

純日本的幻想音響~J・A・シーザー 伝奇音楽集 鬼火 天井棧敷音楽作品集VOL.2

2012年04月17日 00時24分56秒 | 素晴らしき変態音楽


2008年春にリリースされた5CD BOX「天井棧敷音楽作品集」に続く第2弾がリリースされた。日本の劇音楽/前衛音楽/プログレ/サイケのカリスマと呼ばれ現在も演劇実験室◎万有引力主宰者として活動するJ・A・シーザー氏(1948年宮崎生まれ・静岡育ち/本名:寺原 孝明)が寺山修司氏の劇団天井棧敷の劇音楽として制作した作品は1970年代にアナログ盤でリリースされたがプレス数が少なかったため日本ロック界の幻の名盤として語り継がれてきた。1983年に寺山氏が亡くなり天井桟敷が解散すると暫く隠遁し、その存在自体が伝説として語られるようになった。

私が自覚的に音楽を聴き始めた1980年代初めの音楽誌やカルチャー誌で紹介されるシーザー氏は実際に音を聴けない状況ということもあり、ミステリアスな名前と超ロングヘアーの幻想的なポートレイトが相まって、当時盛んにライヴをやっていた裸のラリーズよりもずっと謎の多い神秘的な存在として頭の奥に刻み込まれた。

CD時代になり60~70年代の日本のロックの発掘が進むにつれシーザー氏の手がけた天井棧敷の劇音楽も再発され入手出来るようになった。初めて聴くシーザー氏の音楽は当たりまえだが極めてシアトリカルなストーリー性に溢れていて、その中にファズ・ギターやオルガン、ヴァイオリン、和太鼓、各種民俗楽器が盛り込まれたドラマティックな異次元世界だった。特に印象的なのは日本的な旋律で唄われるドロドロした情念に満ちた歌詞である。その歌は同時代のフラワー・トラヴェリン・バンド、ハプニングス・フォー、タージマハル旅行団など他のロック・バンドとシーザー氏の音楽を大きく分け隔てる個性的なもの。「きちがい」「裏日本」「後進国」「くろんぼ」といった言葉が普通に使われ、「トミー」が「おしでめくらでつんぼの少年」と紹介され、「スキッツォイドマン」が「精神異常者」と訳されていた昭和の時代を強く反映した世界である。歌は基本的には劇団員の方々が唄うので芝居がかったオーバーなスタイルが鼻につくが、聴き慣れればマグマのコバイア語のコーラスやキャプテン・ビーフハートのダミ声の雄叫びと並ぶ唯一無比のオリジナリティに打ちのめされること必至。

BOX第1弾は1973年の「J・A・シーザーリサイタル 国境巡礼歌」140分完全版を目玉に劇団天井棧敷の演目で使用された幻の劇中歌を収録したものだったが、今回リリースされた第2弾では2時間に及ぶ「伝奇音楽会 鬼火」と1時間以上の大作組曲「十字架の蜃気楼」を完全収録、さらにシーザー自身のヴォーカル曲や天井桟敷の名劇中歌をドラマチックに歌い上げる「蘭妖子コンサート」も全曲を収録。シーザー氏本人と、彼のバンド「シーザーと悪魔の家」のメンバーで現在は演劇実験室◎万有引力のポスター、チラシ、デザインでシーザー氏のパートナーの森崎偏陸氏のロング・インタビューと全曲の歌詞、未発表写真満載の80ページ・ブックレット付でより深くジーザー・ワールドを堪能出来る内容になっている。

これでまたひとつ日本のロックの伝説の扉が開かれた訳である。5月3日にJ・A・シーザー コンサートwith 演劇実験室◎万有引力「山に上りて告げよ」と題された30年ぶりの単独コンサートが開催される。残念ながら私は灰野さんのバースデイ・ライヴと被っていて行くことは出来ないが、その分このBOXの6時間に亘る音楽(第1弾も合わせれば12時間!)にどっぷり浸かるとしよう。



シーザーは
カエサルの
英語読み

第1弾は即日完売したそうだから興味があったら早めに入手した方が良い。ディスク・ユニオンでは先着で特典CDが付いてくる。

コメント
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