<映画「アバウト・ロック・イン・オポジション」日本語字幕版上映+アルトー・ビーツ ライヴ>
自らの信ずる音楽を、自らの手で伝えたい。国境を越え、仲間たちと手を結び――
70年代末期、商業主義から弾き出された先鋭的ロック・ミュージシャン達が結束した反対派ロック運動「ロック・イン・オポジション」。当時の貴重な映像を交えつつ、その歴史と現在、そして新たな世代の誕生を、豊富なインタビューとライブ演奏の数々で綴り、連帯と意志の持続を称揚する驚異のドキュメンタリー映画「アバウト・ロック・イン・オポジション」、待望の日本語字幕版上映!
さらに元ヘンリー・カウのメンバーが在籍するアルトー・ビーツのコンサートもあわせて開催!
●映画「About Rock In Opposition」
80年代にアングラな青春を過ごしたロック・マニアにとって「R.I.O.(Rock In Opposition)」と「レコメン(Recommended Records)」はレコードを購入する際のひとつの基準だった。レコード店のコメントに「レコメン系」と書いてあれば即レジへ直行したくなる魔法の言葉。渋谷系に先んじて音楽に於ける「○○系」の元祖かもしれない。この言葉が世間に流布したのはひとえに雑誌「フールズ・メイト」の功罪である。黒を基調としたゴシック風アートワークと中世音楽と現代音楽を混合したシリアスな音楽性のとっつきにくい印象をさらに増幅する禍々しい誌面構成と難解な解説がレコメン系の「異端」「暗黒」「悪魔的」というイメージを広めたのは間違いない。その中心人物クリス・カトラー他元ヘンリー・カウのメンバーがアルトー・ビーツとして来日するのに合わせて、関係者の証言に基づいて描いたドキュメンタリー映画が上映された。
メジャー・レコード会社に独占された音楽業界へのアンチテーゼ、音楽活動の完全な自由を求める闘い、シリアスなイメージの裏に漲るユーモア、本質的にライヴ・バンドだったヘンリー・カウ、未知のバンド同士の深い交流、90年代以降のアメリカの影響、21世紀における華麗なる復活など、80年代当時は世界各地のマイナー音楽家の組織ということ以外には知り得なかったR.I.O./レコメンの背景が様々なバンドの映像とともに紹介される。何よりも印象的なのはR.I.Oが過去の遺物ではなく現在進行形の運動体だという事実である。イギリスの新進チェンバー・ロック・バンド、グアポには音楽性はもちろん、ジーザス&メリーチェインを思わせるロック風ヴィジュアルにも新鮮な息吹を感じる。それを伝えるためにもこの映画が全国各地で上映されることを祈っている。
●The Artaud Beats
(写真・動画の撮影・掲載については出演者の許可を得ています。以下同)
映画に続きアルトー・ビーツのライヴ。昨年の初来日時にはワークショップとかぶりつきライヴでたっぷり堪能し本懐を遂げた。クリスもジョン・グリーヴスも覚えていて「元気かい?」と声をかけてくれた。昨年は知名度を活かせばもっと大々的なツアーができるのにとか、ヘンリー・カウは再結成しないのか、とかロートル・ファンの見果てぬ夢想をしたものだが、映画で語られた通り「独立」「自主」「自由」を活動の支柱にしてきた彼らの姿勢が現在もそのまま貫かれていることが良く理解できた。今回のツアーは第1部がジョン・グリーヴスの弾き語りソロ、第2部がアルトー・ビーツという構成なので、この日は第2部だけを披露したことになる。完全即興だがストーリー性のある展開にはダイナミズムとリリシズムが溢れ一幕の叙情劇を観るような感動がある。ジョンとジェフ・リーのヴォイス・パフォーマンスも魅力。素材をバンドに提供することを条件に録音・録画を許可する彼らは、その音源を元に昨年のツアーの全公演を収めた12枚組CDR+DVDRボックスを制作したが、今回のツアー音源・映像も同様にリリースされるに違いない。R.I.O.本来のインディペンデント・スピリットがアルトー・ビーツの活動に息づいていることを心から実感できた。
反体派
貫く意志は
永遠に
映画の中でR.I.O.のバンドを示す表現として「アヴァン・プログレッシヴ(Avant Prog)」という言葉が使われていた。コレは便利でいいかも。