A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

アヴァンギャルド革命のドキュメント~「世界フリージャズ記」

2013年06月12日 00時22分26秒 | 書物について


副島輝人 世界フリージャズ記

前衛ジャズ/即興音楽の昨日、今日、明日
アフロ・アメリカンの先鋭な表現として産み出された「フリージャズ」は世界各地に飛び火し、いかなる変容と発展を遂げたのか。激動の現代史のもとでラディカルな表現を追い求めるミュージシャンたちに肉迫し、ヨーロッパ辺境からアジアまで世界の革新的ジャズシーンを先取りしつづける著者渾身のドキュメント。

2002年に「日本フリージャズ史」を著し、それまで語られることの少なかった日本の前衛ジャズ/即興音楽の詳細にして克明な歴史を詳らかにした評論家・プロデューサー副島輝人の最新刊。今回は世界が舞台だが日本のフリージャズ運動に関わるうちに興味に駆られ独自にヨーロッパのフェスティヴァルに乗り込んで行った著者だけに、伝聞や記録に頼った評論とはまったく質の違う生々しさと真実味に溢れたドキュメントになっている。


冒頭で紹介されるのはエヴァン・パーカーのマルチフォニック奏法、マルチ・リードの巨星アンソニー・ブラクストン、二つの対照的なジャズサキソフォン・カルテット、音楽解体者ジョン・ゾーン。このラインナップを見ただけで尋常なジャズ論ではないことは一目瞭然。判りやすく言えば、ロック・ギター教本で最初にジミヘンのギターの燃やし方とピート・タウンゼンドの風車奏法とリッチー・ブラックモアのギター破壊法を解説するようなもの。82歳の著者は今でもジャズの改革と解体に強い関心を寄せている。一生非常階段ならぬ一生前衛主義者に他ならない。

「日本フリージャズ史」と本書を読めば、著者の行動の根本動因が未知のものへの興味と探究心であることが判る。日本のニュージャズの胎動に突き動かされ「ニュージャズ・ホール」を開設・運営し、「フリージャズ大祭」等のイベントを企画。同時に海外シーンを探るためにメールス・ジャズ祭をはじめ様々な現場を訪れ、日本にいては知り得ない生の息吹を身体で感じてきた。そこで得たミュージシャンやプロデューサー等との繋がりが日本と海外の太いネットワークに育つ。R.I.O.&レコメンがロック・シーンに産み出したのと同じ、自主・独立・自由なコミュニケーションの場を即興の世界で創造してきたのである。方法論の革命~ヨーロッパ、ロシアのムーヴメント~昨年までの現場体験による即興音楽の現在へと著者の冒険は広がる。

21世紀も10年を過ぎ、国境は勿論、ジャンルを隔てる障壁も完全に消え失せた。混沌・カオスこそテン年代以降の創造力の源泉である。そんな時代に前衛音楽の現在を克明に描いたドキュメントが登場したことは啓示的である。存在自体がカオスを目指すアヴァンギャルドが現代カルチャーにとって欠かせない要素であることは確かだし、混沌という革命を経てこそ人類が大きく進化する可能性があることは間違いない。いわば本書は新世代への黙示録なのである。

●Evan Parker



●John Zorn's Naked City



●Cecil Taylor



時代の亀裂
けものたちは
前衛へ向かう

間違いなく世界はアヴァンギャルドへ傾斜している。
「恋と革命とアーバンギャルド」





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