『安物買いの銭失い』とか『安かろう悪かろう』といる諺は実用品には当て嵌まるかもしれないが、趣味嗜好品にはどうだろう。特に地下音楽欲望愛好家にとっては高かろうが安かろうが『面白ければ其れで好し』では無いだろうか?そこで『安物買ヒハ銭失ヒニ非ズ』の証拠として一昨日某店舗でワンコインで購入したCDについて語りたい。
●Wolfgang Puschnig 『Chants』
オーストリアを代表するマルチ・リード奏者ウォルフガング・プシュニグの2001年のリーダー作。トランペットとヴァイブを含むクインテットにゲスト・ヴォーカルにリンダ・シャーロックを迎え、ECMに通じる上質できめ細かい室内楽風コンテンポラリー・ミュージックを展開。カラー・ブックレット付きデジパック仕様。
●Michael Zerang『Redmoon Theater's The Ballad of Frankie and Johnny』
シカゴ新即興派のパーカッショニスト/作曲家のマイケル・ゼラングが手がけた人形劇のサウンドトラック。1997年作品。ゼラングは作曲だけで演奏はサックス、ベース、ドラムのトリオが担当している。クルト・ワイルを思わせるキャバレー・ソングやチンドン風マーチ、バルカン民謡やロマミュージックが次々飛び出す世界はとても楽しい。『赤月劇場(Redmoon Theater)』はシカゴを拠点にする人形劇団とのこと。
●Uchihashi Kazuhisa & Gene Coleman『storobo imp.』
内橋和久とアメリカのクラリネット奏者ジーン・コールマンとの即興デュオ作(2003年作)。2001年5月に東京のストロボ・スタジオで録音された。内橋はギターとダクソフォン、コールマンはバス・クラリネットを演奏。完全即興だが、二者のバトルや狂騒ではなく、クールな感触で交わり離れ合うスタイルは、世界各地で即興演奏活動を展開する内橋ならではのコスモポリタニズムの現れであろう。
●SHOJI Masaharu & WAKAO Yu『DUO IMPROVISATION』
広島を拠点に活動する二人の即興演奏家のコラボ作CD-R。井上敬三の弟子である庄子勝治(sax&perc)、広島大学名誉教授の若尾裕(p)、両者の確実なミュージシャンシップと、ローカルならではの独特の空気感に満ちたユニークな即興作品。上記の内橋+コールマンに比べても遜色なく、即興演奏を真剣に解釈し、表現の地平のレベルアップを目指す心意気が感じられる。ピアノ、サックスそれぞれのソロ・トラックを聴けば、二人とも表現力豊かなテクニシャンであることが分かる。
百円を
笑う者には
百年経っても
分かるまい