山の紅葉はすでに終わり、里がみごとに色づいた。
穏やかな日曜日じゃったね。
午後、札幌へ。
いつものようにババのご機嫌伺い。
点滴を受け、寝込んでおったので、ドキッとした。
看護師によると嘔吐が続いたことから、栄養の補給とか。
吐き気のせいかサッパリ元気がない。
「もう85だし、あんたに迷惑かけられないしねぇ」とすっかり弱気だ。
返答に困る。
かと思えば、「前にいた病院、何て言ったかねぇ」。
「○○病院かい?それとも○○病院かい?」とおぢ。
「それじゃなくて、あのぉ××病院さ」
「それって、ここの病院でしょ」とおぢ。
ボケが進行したのか、モルヒネのせいか、どうやら近所の病院にいると思い込んでおる。
おぢの説明でも、まるで納得しておらん。
「ボケてきたのかねぇ」と自分の額をさすっておった。
で、「手、見せて」。
手を差し出すと、さすりながらこう言った。
「借金返せないで、土方でもやってるかと思ったけど、このやわい手じゃ違うね~」。
不肖の息子をいまも心配しておる。
目頭が熱くなるのをぐっとこらえ、「来週、また来るから」と言って、逃げ帰った。
60年代の名作「さよならをもう一度」をご存知か?
バーグマンが若い男と別れ、車で走り出す。
涙が溢れ、思わずワイパーを動かしてしまう有名なシーンだ。
病院の帰り、ハンドルを握りながら、ふと思い出した。
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