日本ジオパークの再認定審査で、無事、再認定された伊豆大島。
(応援してくださった皆様、ありがとうございました)
その前後から、伊豆大島では別の話題でカンカンガクガクの議論が巻き起こっており、
みんなで再認定を心から喜べない状態になってしまっています。
それは、伊豆大島の「ゴジラアイランド化計画」
私がいつもお世話になっている、三原山のゴジラさんのことではありません。
実は、今年に入ってから「地方創生加速化交付金」いわゆる地方創生の補助金にゴジラを材料に申請し、通ったらしいという話を耳にするようになりました。
その後、4月の「広報おおしま」に、「地方創生加速化交付金の対象事業(3月7日現在、東宝株式会社・国・東京都と協議中)として「伊豆大島ゴジラアイランド化計画』を検討中」などと書かれていたので、どうなっているのか気になっていましたが、ジオパークの活動もあって忙しく、よくわからないままでいました。
それが、今日の町議会本会議で、賛成10人、反対3人で、ゴジラ計画の製作委託契約締結が承認されました。町議会のホームページには、さっそく「議案第98号(ゴジラモニュメント制作委託契約締結について)(原案可決)」とあります。
私は今まで議会を聞きに行ったことはなかったのですが、詳しい情報を知りたかったので、12日(月)と今日の2回、議会を傍聴してきました。
思うところはたくさんありますが、できるだけ聞いてきた事実関係を書いておきます。
この計画は、火山博物館の前に高さ12mのシンゴジラ像を作り観光客誘致をはかるというものだそうです。
上の写真の建物の前に、屋根の下ぐらいまでの高さのゴジラ像が建つようです。
資金は、政府の「地方創生加速化交付金」の助成金8000万円に、大島町の財政調整基金(自治体の貯金)から1億円を引き出して、1億8000万円で実施するそうです。
そのゴジラ像は、口からミストと光が出て、背びれが根元から光り(放射線状)、吠えたり足音が聞こえたりもするそう。この演出効果を追加したため、政府の助成金では足りず、1億円の増額となったようです。このほか、ゴジラのARアプリと謎解きゲームARG制作を実施、ゴジラ祭りも行うそうです。
そして来年度以降も、東宝株式会社への版権代が500万円×3年間(以後交渉)、そのほかに年間最大600万円の維持管理費(照明、コンピューター、足場を組んでの塗装しなおし等)がかかるとのことです。
「広報おおしま」では、「官民協働して推進」とありましたが、町の観光の窓口である観光協会に問い合わせたところ「ゴジラ計画についてはこれまで大島町から1度も正式に事業詳細の説明は受けていない。これはこの地域に住んでいく上での重要な問題となっており、賛否両論があるため、現在は既に会員のコンセンサスをとることは不可能な状態」とのことでした。
11月の臨時議会で、契約に先立っての補正予算の審議が行われ、計画の詳細が明らかになってから、伊豆大島ではかつて無いような住民反対運動が起こり、今日時点で1900名近い署名が集まったと聞きました。人口約8000人の島で、島という特殊性から「署名はできないが反対」という声を個人的に聞いています。実際に反対する人はもっと多いのでしょう。逆に今、私のまわりで「賛成」という声を聞くことは、ほぼありません。
ゴジラで島を活性化できるという理由は、次のようです。
「ゴジラは世界的に有名であり観客動員数の累計は1億人、伊豆大島はゴジラ映画に2回登場しておりゴジラと縁が深い。2020年には東京オリンピックも予定されており、ハリウッド映画でも上映されているゴジラは、外国人への魅力となる」
確かに伊豆大島は、ゴジラ映画2作品で舞台となっています。ですが、最後の作品は27年前で、今回、像にするのは、伊豆大島とは縁がない最新作のシンゴジラです。
先日、外国人対象の観光素材の視察に来た大手旅行社の方達のツアー中に、ゴジラのことが話題になりました(既にご存じでした)。そうしたら、「ゴジラでは観光客は島に来ませんよ。これだけ素材があるのだから、ジオパークでやれば良いのに」と言われました。
私も「ゴジラでは人は来ない」と考えています。1人2万円以上の交通費や宿泊費をかけて、大きなゴジラ像を何度も見に来る人は、まずいないと思うので…。
伊豆大島には、この島でしか体験できない宝物がたくさんあります。噴火や強風による大火や土砂災害を体験しながらも生き続けてきた人の暮らしや、火山島ならではの文化、歴史、そして島外の人が楽しみながら、様々なことを学ぶことができる多様な自然…本当に魅力的な島です。他では体験できない伊豆大島が本来持っている魅力に触れられるからこそ、人は高いお金を払ってでも、海を渡って来てくれるのだと思います。
だから皆で、たくさんの時間をかけて、ジオパークの中で「地元の宝を探す」活動を続けてきました。ジオガイドの会が立ち上がり、大島の魅力をどうやって伝えていこうかと、皆で考えはじめたところでした。
そのタイミングでの伊豆大島「ゴジラアイランド化計画」。国の予算が付き、町の予算案も議会が承認して、計画が進むことになりました。大島町は、ゴジラもジオパークも両方やっていくと言っています。
日本ジオパークの最も重要な審査基準は「その地域にあったやり方で住民、行政、研究者などの関係者が、ともに考え続けているか」ということです。私たちは今後も、皆で考え続けていかないといけないと思っています。
ただ、ゴジラについては今もまだ様々な思いが胸の中に渦巻いていて、あまり楽しい報告はできそうにないので、今日のところはこれで書くのをやめておいた方が良さそうです(T-T)
また、機会があったら、ゴジラ計画のその後をお伝えしようと思います。
(カナ)
(応援してくださった皆様、ありがとうございました)
その前後から、伊豆大島では別の話題でカンカンガクガクの議論が巻き起こっており、
みんなで再認定を心から喜べない状態になってしまっています。
それは、伊豆大島の「ゴジラアイランド化計画」
私がいつもお世話になっている、三原山のゴジラさんのことではありません。
実は、今年に入ってから「地方創生加速化交付金」いわゆる地方創生の補助金にゴジラを材料に申請し、通ったらしいという話を耳にするようになりました。
その後、4月の「広報おおしま」に、「地方創生加速化交付金の対象事業(3月7日現在、東宝株式会社・国・東京都と協議中)として「伊豆大島ゴジラアイランド化計画』を検討中」などと書かれていたので、どうなっているのか気になっていましたが、ジオパークの活動もあって忙しく、よくわからないままでいました。
それが、今日の町議会本会議で、賛成10人、反対3人で、ゴジラ計画の製作委託契約締結が承認されました。町議会のホームページには、さっそく「議案第98号(ゴジラモニュメント制作委託契約締結について)(原案可決)」とあります。
私は今まで議会を聞きに行ったことはなかったのですが、詳しい情報を知りたかったので、12日(月)と今日の2回、議会を傍聴してきました。
思うところはたくさんありますが、できるだけ聞いてきた事実関係を書いておきます。
この計画は、火山博物館の前に高さ12mのシンゴジラ像を作り観光客誘致をはかるというものだそうです。
上の写真の建物の前に、屋根の下ぐらいまでの高さのゴジラ像が建つようです。
資金は、政府の「地方創生加速化交付金」の助成金8000万円に、大島町の財政調整基金(自治体の貯金)から1億円を引き出して、1億8000万円で実施するそうです。
そのゴジラ像は、口からミストと光が出て、背びれが根元から光り(放射線状)、吠えたり足音が聞こえたりもするそう。この演出効果を追加したため、政府の助成金では足りず、1億円の増額となったようです。このほか、ゴジラのARアプリと謎解きゲームARG制作を実施、ゴジラ祭りも行うそうです。
そして来年度以降も、東宝株式会社への版権代が500万円×3年間(以後交渉)、そのほかに年間最大600万円の維持管理費(照明、コンピューター、足場を組んでの塗装しなおし等)がかかるとのことです。
「広報おおしま」では、「官民協働して推進」とありましたが、町の観光の窓口である観光協会に問い合わせたところ「ゴジラ計画についてはこれまで大島町から1度も正式に事業詳細の説明は受けていない。これはこの地域に住んでいく上での重要な問題となっており、賛否両論があるため、現在は既に会員のコンセンサスをとることは不可能な状態」とのことでした。
11月の臨時議会で、契約に先立っての補正予算の審議が行われ、計画の詳細が明らかになってから、伊豆大島ではかつて無いような住民反対運動が起こり、今日時点で1900名近い署名が集まったと聞きました。人口約8000人の島で、島という特殊性から「署名はできないが反対」という声を個人的に聞いています。実際に反対する人はもっと多いのでしょう。逆に今、私のまわりで「賛成」という声を聞くことは、ほぼありません。
ゴジラで島を活性化できるという理由は、次のようです。
「ゴジラは世界的に有名であり観客動員数の累計は1億人、伊豆大島はゴジラ映画に2回登場しておりゴジラと縁が深い。2020年には東京オリンピックも予定されており、ハリウッド映画でも上映されているゴジラは、外国人への魅力となる」
確かに伊豆大島は、ゴジラ映画2作品で舞台となっています。ですが、最後の作品は27年前で、今回、像にするのは、伊豆大島とは縁がない最新作のシンゴジラです。
先日、外国人対象の観光素材の視察に来た大手旅行社の方達のツアー中に、ゴジラのことが話題になりました(既にご存じでした)。そうしたら、「ゴジラでは観光客は島に来ませんよ。これだけ素材があるのだから、ジオパークでやれば良いのに」と言われました。
私も「ゴジラでは人は来ない」と考えています。1人2万円以上の交通費や宿泊費をかけて、大きなゴジラ像を何度も見に来る人は、まずいないと思うので…。
伊豆大島には、この島でしか体験できない宝物がたくさんあります。噴火や強風による大火や土砂災害を体験しながらも生き続けてきた人の暮らしや、火山島ならではの文化、歴史、そして島外の人が楽しみながら、様々なことを学ぶことができる多様な自然…本当に魅力的な島です。他では体験できない伊豆大島が本来持っている魅力に触れられるからこそ、人は高いお金を払ってでも、海を渡って来てくれるのだと思います。
だから皆で、たくさんの時間をかけて、ジオパークの中で「地元の宝を探す」活動を続けてきました。ジオガイドの会が立ち上がり、大島の魅力をどうやって伝えていこうかと、皆で考えはじめたところでした。
そのタイミングでの伊豆大島「ゴジラアイランド化計画」。国の予算が付き、町の予算案も議会が承認して、計画が進むことになりました。大島町は、ゴジラもジオパークも両方やっていくと言っています。
日本ジオパークの最も重要な審査基準は「その地域にあったやり方で住民、行政、研究者などの関係者が、ともに考え続けているか」ということです。私たちは今後も、皆で考え続けていかないといけないと思っています。
ただ、ゴジラについては今もまだ様々な思いが胸の中に渦巻いていて、あまり楽しい報告はできそうにないので、今日のところはこれで書くのをやめておいた方が良さそうです(T-T)
また、機会があったら、ゴジラ計画のその後をお伝えしようと思います。
(カナ)