浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

「韓国併合」のこと

2020-01-01 16:23:57 | 近現代史
 もうじき『世界』の2月号が刊行されるというのに、今ごろ12月号を熟読している。

 さてその12月号に、三島憲一「醜悪で滑稽な覇権志向 多国間主義を忌避する日本」という論文が掲載されている。その主旨には大いに賛同するが、1910年に起きた大韓帝国と日本との関係について考えてみたい。

 三島氏は、「日韓併合」ということばを使うが、これは正しくない。「韓国併合」とすべきである。「併合」とは、「国際法上、国家が他の国家の領域の全てを自国のものとすること。」(「大辞林」)であるから、日本が大韓帝国を自国のものにしたのであるから、「韓国併合」とすべきである。「併合」という語彙は、国際法で使用されるものであり、厳密に考えていかなければならない。

 「韓国併合」といえば、海野福寿氏の『韓国併合』(岩波新書)を想起する。海野氏は、明治大学から在外留学が許可されたとき、まず東京外語大で韓国語を半年だったか学び、そのあとすぐに韓国に留学し、この問題を研究した。韓国語をまったく学んでこなかった海野氏が、たちまち読み書き話すようになったので、私はたいへん驚いたことがある。
 海野氏は、この「韓国併合」を「不当・合法」だとした。法的には合法だが、不当な併合であった、と。韓国や北朝鮮の見解は、韓国併合は「不法」であったとし、したがって、韓国は植民地とされたのではなく、「強占」、つまり強制的に占領されたのだ、とする。
 海野氏は、この頃の大韓帝国の条約締結の方法、国際法の考え方などをもとに「合法」としたのであるが、しかしだからといって日本が韓国・北朝鮮に賠償しなくてよいといっているわけではない。植民地支配も、十分に賠償すべき不当なことであったと認識している。
 しかし「不当・合法」 論を唱えた海野氏は、すでに亡くなられた。

 この点に関して、三島氏は、当時の在韓ドイツ外交官の報告書、韓国宮廷に仕えていたドイツ人医師の日記などをもとに、ハイデルベルク大学の教授が、論文を書いているそうだ。日本語訳があったら読みたいのだが、ここにその一部の資料が紹介されている。

 日本人は当局の人間も民間人も韓国ではやりたい放題で、荒っぽいことこの上ありません。しかも相手を傷つける態度です。足蹴にする政治とはこのことです。日本の統監(伊藤博文)と彼のスタッフたちは、外国の外交官たちにはできるだけ礼儀正しくしようと全力を尽くしているようです。彼らが用意している錠剤にたっぷり砂糖をまぶせて飲んでもらおうとしています(保護国化を認めさせて、各国外交官に立ち退いてもらうこと)・・韓国の主権消滅が狙いなのです。

 皇帝は伊藤の要求に断固として拒否の態度を貫いています。・・宮殿には日本軍の兵隊と憲兵が溢れています。国璽を押すにあたっては、日本の憲兵が補助したと噂されています。なにが起きようが、また皇帝が譲歩しようがしなかろうが、結果はひとつ。日本が世界に見せる調印文書は、露骨な暴力の産物以外のなにものでもありません。



 在韓ドイツ代理大使の報告書である。ドイツでは、韓国併合条約の締結は、不法なものであったと認識しているように思う。海野氏が、こうした各国の外交文書をもとに「韓国併合」を書くとしたらどう書いただろうか、と思う。

 いずれにしても、どのような説をとろうとも、韓国併合は明らかに韓国側の意思ではなく「大日本帝国」が押しつけたもので、日本近代史の大きな汚点と記録されなければならない。海野氏も、このことを十分に意識していたことを付け加えておく。
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日本の司法と冤罪

2020-01-01 14:27:28 | 政治
 ゴーンが日本を出獄してレバノンに逃げていった背景には、ゴーンが指摘するように日本の司法制度・刑事手続きに大きな問題があるからだ。
 日本の刑事手続きでは、長期拘留して、その間に警察官や検察ががんがん責め続けて自白をとることが最重要視される。同時に、検察官は有罪に至る事件の流れをみずからつくり、その流れの中に証拠や自白を位置づけていく。本来なら証拠や自白などをもとに帰納的に事件を組み立てていかなければならないところ、検察官はフレームを作りそのフレームをもとに演繹的に組み立てていく。
 そして検察官は、犯罪立証に不利な証拠は開示しなくて良いから、弁護人は検察の枠を崩すことはなかなか難しいということになる。

 そういうなかで冤罪が生まれる。

 名張毒ぶどう酒事件もその一つである。南山大学学生が、この問題を追及した

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