松尾氏は京都大学で教鞭を執った日本近現代史学者である。松尾氏の大正デモクラシーや普通選挙制度成立史などの研究書を何冊か保有し、また読みもしている。文章はわかりやすく、またきちんと実証的な研究をされていて、近現代史を学ぶ者は、松尾氏の研究書を必ず読んでいることだろう。
私は、一度だけ松尾氏と会ったことがある。私の属する研究会に総会記念講演の講師としてきていただいたのだ。それ以外は、本でしか接したことがない。
本書には、松尾氏が書いた追悼文が多数掲載されている。そのほとんどは歴史研究者であるが、そのうち一人だけよく私が交流していた学者がいる。江口圭一氏である。江口氏は、『15年戦争史』などの著書で有名だが、自伝的な内容の『まぐれの日本近現代史研究』を最後に亡くなられた。私もその本をいただいてすぐに江口氏の訃報を聞き驚いたことがある。その後、自伝を書くと長命はできないということを聞き、私は自伝的なものは書かないようにしようと思ったことがある。
松尾氏が言及している学者のほとんどはもう亡くなっているが、私が歴史学の勉強をしていたときに読んだ研究書の著者たちであり、私も歳を重ねたなあと言う感慨がある。そのため、私自身の研究ももはや過去になったという気もする。松尾氏も、すでに亡い(2014年に逝去)。
本書を読んで、記憶に残しておかないといけないと思ったことを紹介しておく。
まず山川菊栄が馬場孤蝶に宛てた書簡のなかに、関東大震災を安政の大地震に、大杉や平沢らの虐殺を安政の大獄になぞらえたことが記されていたという記事(24ページ)である。そういう見方を山川菊栄がしていたことを忘れないでおこうと思う。
1945年の敗戦のあと、昭和天皇は「人間宣言」をだすが、それを松尾はこう書いている(54ページ)。
昭和天皇は敗戦直後「人間宣言」というもの出しましたけれど、私に言わせれば、あれは人間の「天皇宣言」なのです。天皇が、自分は神ではないが、依然として日本帝国の君主だと宣言したのです。要するに彼は、死ぬまで「我こそは天皇である」「日本国の統治権の総攬者である」という意識を持ちつづけたと思います。そういう人間をアメリカも、歴代の日本政府も奉って、利用した。あれだけの戦争をやって、国民に一言も謝罪せず、退位もせずに居すわった昭和天皇は、政治家、しかもそう簡単に片付けられない政治家だと思います。
いわゆる天皇の人間宣言を、松尾氏は上記のように解釈したのであるが、さすがだと思った。
(この項つづく)
※ 書いたものを私が読んでパソコンにデータとして記録させるために、私はドラゴンボール11というソフトを持っていたが、それはWindows10では使用できないということでインストールしなかった。しかしWindows10には、音声認識の機能があることを知ってやってみた。完全に読み込むことはできなかったが、少しの修正で、松尾氏の書かれたことをデータ化することができた。Windows10では、音声認識ソフトを購入する必要がない、ということである。
私は、一度だけ松尾氏と会ったことがある。私の属する研究会に総会記念講演の講師としてきていただいたのだ。それ以外は、本でしか接したことがない。
本書には、松尾氏が書いた追悼文が多数掲載されている。そのほとんどは歴史研究者であるが、そのうち一人だけよく私が交流していた学者がいる。江口圭一氏である。江口氏は、『15年戦争史』などの著書で有名だが、自伝的な内容の『まぐれの日本近現代史研究』を最後に亡くなられた。私もその本をいただいてすぐに江口氏の訃報を聞き驚いたことがある。その後、自伝を書くと長命はできないということを聞き、私は自伝的なものは書かないようにしようと思ったことがある。
松尾氏が言及している学者のほとんどはもう亡くなっているが、私が歴史学の勉強をしていたときに読んだ研究書の著者たちであり、私も歳を重ねたなあと言う感慨がある。そのため、私自身の研究ももはや過去になったという気もする。松尾氏も、すでに亡い(2014年に逝去)。
本書を読んで、記憶に残しておかないといけないと思ったことを紹介しておく。
まず山川菊栄が馬場孤蝶に宛てた書簡のなかに、関東大震災を安政の大地震に、大杉や平沢らの虐殺を安政の大獄になぞらえたことが記されていたという記事(24ページ)である。そういう見方を山川菊栄がしていたことを忘れないでおこうと思う。
1945年の敗戦のあと、昭和天皇は「人間宣言」をだすが、それを松尾はこう書いている(54ページ)。
昭和天皇は敗戦直後「人間宣言」というもの出しましたけれど、私に言わせれば、あれは人間の「天皇宣言」なのです。天皇が、自分は神ではないが、依然として日本帝国の君主だと宣言したのです。要するに彼は、死ぬまで「我こそは天皇である」「日本国の統治権の総攬者である」という意識を持ちつづけたと思います。そういう人間をアメリカも、歴代の日本政府も奉って、利用した。あれだけの戦争をやって、国民に一言も謝罪せず、退位もせずに居すわった昭和天皇は、政治家、しかもそう簡単に片付けられない政治家だと思います。
いわゆる天皇の人間宣言を、松尾氏は上記のように解釈したのであるが、さすがだと思った。
(この項つづく)
※ 書いたものを私が読んでパソコンにデータとして記録させるために、私はドラゴンボール11というソフトを持っていたが、それはWindows10では使用できないということでインストールしなかった。しかしWindows10には、音声認識の機能があることを知ってやってみた。完全に読み込むことはできなかったが、少しの修正で、松尾氏の書かれたことをデータ化することができた。Windows10では、音声認識ソフトを購入する必要がない、ということである。