フダ(票)をとるために必要なのはタマ(金)だという。フダをたくさんとるためには、タマを用意してばらまかなければならない、というのが、統一教会党=自民党の選挙戦術である。
だから、自民党は、あらゆるところからカネをとってくる。政党交付金だけではなく、パーティー収入、企業などからの献金。そして官房機密費も投下される。カネ、カネ・・・・
中国新聞社は、河井克行、案里夫妻による金権選挙を契機にして、政治とカネの問題を粘り強く取材をつづけ、数々のスクープを放った。その経緯が、本書には詳しく書かれている。まさにジャーナリズム精神にあふれた本である。政権中枢から多額のカネが用意され、河井夫妻はそのカネを地方議員にばらまいた。その実態を詳しく調査し、新聞紙面で報じた。
この中国新聞社の追及が、今回の衆議院議員選挙での自民党議員の落選につながっているかもしれない。それほど力強い取材であった。
ただ問題は、中国新聞社の追及は、メディアスクラムをつくりだせなかった。中国新聞の取材班は、スクープを放つと同時に、他紙が後追いで書いてくれると思っていたようだが、しかしそれはなかった。高知新聞のように、地方紙でのってきた社はあるけれども、全国紙はのってこなかった。全国紙のジャーナリズム精神はすでに枯渇してるから仕方ないかも知れない。
もうひとつ、取材班は、「政治は「国民を映す鏡」と言われるように、国の主権者である有権者の姿勢も問われている」とし、「一票を投じよう」と訴えかける。その通りである。
しかし利権にまみれた政治をかえるためには、もっともっと多くの人が投票に参加することと、タマに対して強くならなければならないと思う。マイナ保険証に関して、2万ポイントを欲しいからと、人びとが役所に殺到する姿をみて、わたしは「こりゃぁ、ダメだ」と失望したが、タマをぶらさげられると権力者の言うことをきいてしまうというあり方はなくしていかなければならない。タマはアメであるが、アメのあとにはムチが出てくることを知るべきだ。
ともかく、こうしたジャーナリズム精神に満ちた本は、もっと読まれるべきである。