とてもよい本である。図書館から借りたものであるが、これは手元に置いておかなければならない本であると思う。
岡真理さんの「ヨーロッパ問題としてのパレスチナ問題」のなかの、「近代500年の歴史は、西洋の国々による非ヨーロッパ人に対する大量殺戮の歴史です。」ということばは、まさにその通りだというしかない。西洋の国々とは、キリスト教国に他ならない。つまり、キリスト教徒が「大量殺戮」を行ってきたのである。
日本のキリスト者には良心的な人が多いが、パレスチナ問題では、イスラエルを批判する人は少ないような気がする。しかし現実にユダヤ人国家であるイスラエルが、パレスチナ人を虐殺しているのだから、キリスト教徒もきちんとパレスチナ問題を凝視すべきである。
「ディアスポラ」ということばがある。パレスチナに住んでいたユダヤ教徒が世界各地に離散したという意味であるが、「十字軍に支配された一時期、エルサレムへの入城は禁じられましたが、パレスチナからユダヤ教徒の住民すべてが追放されて、世界に離散したなどという事実はない」(25頁)という。
イスラエル国家は、「入植者による植民地主義の侵略によって、先住民を民族浄化して建国されたという歴史的事実が」(28頁)あり、それはアメリカ合州国、オーストラリア、ニュージーランド、カナダと同様である。
したがって2023年のハマス主導によるイスラエル攻撃は、「占領された祖国の脱植民地化を求める者たちの抵抗として歴史的に位置づけられ」、その攻撃は、ヴェトナム人民がアメリカ帝国主義勢力を追い出す武力闘争と変わらないものだという認識がなり立つのである。
またそのハマス攻撃に関する報道は、ほとんどがイスラエル側から発したもので、世界の人びとに過った認識を与えるために、イスラエル側が仕組んだ内容が多い。
だいたいにして、イスラエルは国際法に違反した行動を一貫して継続してきたし、それに対して国連が何らかの行動をイスラエルにしようとしたときには、必ずアメリカ帝国主義による「拒否権」の発動があり、したがってイスラエルの蛮行を抑止することができずに現在に至っている。
そういう歴史をみつめる意味で、本書はきわめて有効である。
さらに指摘しておくなら、アメリカ合州国という国家とイスラエル国家は、同類のジェノサイド国家なのである。アメリカ合州国が建国以降行ってきた蛮行は数限りない。わたしはそれに関する書籍などをあつめていて、いつかそれをまとめてみようと思っているが、そのアメリカ帝国主義に隷属して喜んでいる日本の支配層の奴隷根性にはあきれるしかない。
パレスチナ問題は、近代世界に至る歴史、そして現代までの歴史をもう一度考える契機になり得る。世界がどうしようもない状況に陥っている元凶は、アメリカ帝国主義なのである。