上の表をご覧ください。これは経済産業省が2003年に行なった『繊維製品のLCA調査報告書』よりウエスを新しい綿布をつかって生産した場合とぼろ(古布)をリユースして生産した場合のエネルギー消費量をCO2量に変換した比較です。木綿というと天然素材=環境に良い、というイメージをお持ちの方も多いのではないかと思いますが、木綿というのは実はその生産過程で膨大なエネルギーを必要とするのです。しかしウエスを作るために新たに木綿という資源を投入する代わりに、すでに衣料としての役割を終えたぼろをリユースした場合、両者のライフサイクルにおけるCO2発生量を比較すると、累積でぼろを利用したウエスのCO2発生量は前者の場合のわずか1/100にすぎません。
どうしてこのような驚くべき違いが発生するのでしょう。それはぼろウエスが既に存在している、しかも一旦洋服や布としての役割を終え廃棄された物を原料として使用しているため、綿布を生産するために投入した膨大な資源やエネルギーの追加投入を抑えることができるからです。しかしぼろウエスの原料である服や布も生産の過程で資源やエネルギーを消費するではないか、それを考慮に入れていない比較は詭弁ではないかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。果たしてそうでしょうか。
例えば、布(または衣服)を一単位作るのに必要なエネルギーを10、ウエスを作るのに必要なエネルギーを10としましょう。ウエスを新しく木綿を栽培して生産する場合、ウエス1単位を作るために必要なエネルギーは20になります。一方、衣服を再利用してウエスを作る場合、同じ20のエネルギーで衣服とウエス2単位を作ることができます。実際にはぼろウエスを作る場合もエネルギー消費はありますが、この例の場合その量は無視できるほど極小と見なして差し支えないでしょう。したがって既に存在している資源を有効活用すれば同じエネルギー投入で社会厚生2単位を実現でき、逆に言えば投入エネルギーをそれだけ節約することができるというわけなのです。
よく同じECOでもECONOMYとECOLOGYは二律背反で両立しない、と言われます。しかし先ほどの例で見たように、社会厚生を維持しつつ環境負荷を減らすという「両立」は「リユース」によって実現可能であることにお気づきでしょうか?環境負荷を減らすだけならそもそもエネルギー消費をしない、ごみを出さないというのが最も有効であるのは言を俟たないのですが、経済活動の結果、資源やエネルギー消費が必然的に発生するのであればこれらを可能な限り有効に使うことで経済活動と環境負荷低減のバランスをとるのが最も有効な手段なのです。それでは両者のバランスをとる「支点」となるものは何か、それはわたしたち一人ひとりの「知恵」(SOPHIA)です。このような視点がこれからの時代に必要なのだと思います。
したがってナカノ株式会社ではこのようにECONOMYとECOLOGYをSOPHIAによって結びつける概念を”ECOSOPHY”(エコソフィー)と呼び、企業活動の根本概念として位置づけています。ぼろウエスの果たす役割はエコソフィーによって機能的優良性を超え拡大していくのだ、また拡大させていかなければならないとわたしたちは考えているのです。
繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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