都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
ユーロスペース 「ベルリン・フィルとこどもたち」 2/6
2005-02-08 / 映画
ユーロスペース(渋谷区桜丘町)
「ベルリン・フィルとこどもたち」
(2004年/ドイツ/トマス・グルベ+エンリケ・サンチェス・ランチ監督)
2/11まで
先日、lysanderさんのブログを読んで気になっていた「ベルリン・フィルと子どもたち」を観てきました。美しい余韻に浸ることのできる、素敵なドキュメンタリー映画です。
世界最高のオーケストラと、ベルリン在住の250名の子どもたち。何の接点もないような両者が一つとなって、素晴らしい芸術を作り上げていく。そこには、純粋な音楽の世界を離れた、このプロジェクトに参加した全ての人間の情熱が結集された「春の祭典」があります。各々の多様な価値観と生き様。それが一瞬間だけでも一つになると、誰もが驚くほどの力を生み出すようです。本番を終えた子どもたちの表情には、その驚異的な力を感じた人間だけが表せるような歓喜と、達成感の後の美しい清々しさを見て取ることが出来ました。
邦題よりも、原題の「RHYTHM IS IT!」の方がこの映画を適切に示しているようです。芸術は思想だけの産物でなく、身体が元来持つ力からも生み出される。そんな至極当然なことを、私はベルリンの子どもたちから学びました。もちろん、殆どの子どもたちは、嫌々ながらこのプロジェクトに参加した、もしくはさせられたのでしょう。「春の祭典」など耳障りな雑音とでも言いたげな子どもたち。不貞腐れた面倒くさそうな表情。もちろん、映画では描ききれなかった、きれいごとではない事情もあったに違いありません。しかし、子どもたちが全身を使ってエネルギーを獲得し放出していく様子。このプロジェクトへ懸けるラトルの意気込みはもちろんのこと、振付師のロイストンの個性は強烈です。愛することに徹底して取り組んできた人間は目が違うのでしょうか。温かさと厳しさの両方を持つ眼差し。彼の前では子どもたちも真剣にならざるを得ません。
先ほども書きましたが、このプロジェクトには、映画では登場しなかったような困難な出来事もあったのでしょう。また、一体感を得た後の感動には、時折、盲目的でしかない喜びを生む危険性もあります。ベルリン・フィルは、このプロジェクトを終えた後でも、すぐに再び芸術の力を触ることが出来る。しかし子どもたちはどうなってしまうのか。もしかしたら、また倦怠感を生むような毎日を送ってしまうのかもしれない。しかし、「春の祭典」の驚異的なリズムに乗ったという経験と記憶は、きっと彼らの意識と身体を変革させていくきっかけとなる。少なくとも私はそう信じたいと思います。
ところで、この映画は「文部科学省指定」とされていましたが、子どもたちだけでなく、大人たちこそが観るべき内容だと思いました。日常とは概してつまらないものの連続かもしれません。しかし、「映画の中の子どもたちが置かれている日常とは全然違う。」と自信を持って言えるような、アグレッシブな自己を持った大人がどれほどいるのでしょう。(もちろん、私も含めてですが。)そして、ロイストンのように、人生を懸けて子どもたちと接することがどれだけあるでしょうか。ちょっと話が脱線してきました。
ベルリン・フィルの演奏やリハーサルのシーンもかなり登場します。クラシックファンとしては、その点でもかなり見応えがありました。また、「春の祭典」の演奏は、この映画に合わせてCDがリリースされたようです。抜群のリズム感を持つラトルのことですから、きっと素晴らしい演奏だと思いますが、CDを聴いてその世界を少しでも共有できたら良いとも思いました。
「ベルリン・フィルとこどもたち」
(2004年/ドイツ/トマス・グルベ+エンリケ・サンチェス・ランチ監督)
2/11まで
先日、lysanderさんのブログを読んで気になっていた「ベルリン・フィルと子どもたち」を観てきました。美しい余韻に浸ることのできる、素敵なドキュメンタリー映画です。
世界最高のオーケストラと、ベルリン在住の250名の子どもたち。何の接点もないような両者が一つとなって、素晴らしい芸術を作り上げていく。そこには、純粋な音楽の世界を離れた、このプロジェクトに参加した全ての人間の情熱が結集された「春の祭典」があります。各々の多様な価値観と生き様。それが一瞬間だけでも一つになると、誰もが驚くほどの力を生み出すようです。本番を終えた子どもたちの表情には、その驚異的な力を感じた人間だけが表せるような歓喜と、達成感の後の美しい清々しさを見て取ることが出来ました。
邦題よりも、原題の「RHYTHM IS IT!」の方がこの映画を適切に示しているようです。芸術は思想だけの産物でなく、身体が元来持つ力からも生み出される。そんな至極当然なことを、私はベルリンの子どもたちから学びました。もちろん、殆どの子どもたちは、嫌々ながらこのプロジェクトに参加した、もしくはさせられたのでしょう。「春の祭典」など耳障りな雑音とでも言いたげな子どもたち。不貞腐れた面倒くさそうな表情。もちろん、映画では描ききれなかった、きれいごとではない事情もあったに違いありません。しかし、子どもたちが全身を使ってエネルギーを獲得し放出していく様子。このプロジェクトへ懸けるラトルの意気込みはもちろんのこと、振付師のロイストンの個性は強烈です。愛することに徹底して取り組んできた人間は目が違うのでしょうか。温かさと厳しさの両方を持つ眼差し。彼の前では子どもたちも真剣にならざるを得ません。
先ほども書きましたが、このプロジェクトには、映画では登場しなかったような困難な出来事もあったのでしょう。また、一体感を得た後の感動には、時折、盲目的でしかない喜びを生む危険性もあります。ベルリン・フィルは、このプロジェクトを終えた後でも、すぐに再び芸術の力を触ることが出来る。しかし子どもたちはどうなってしまうのか。もしかしたら、また倦怠感を生むような毎日を送ってしまうのかもしれない。しかし、「春の祭典」の驚異的なリズムに乗ったという経験と記憶は、きっと彼らの意識と身体を変革させていくきっかけとなる。少なくとも私はそう信じたいと思います。
ところで、この映画は「文部科学省指定」とされていましたが、子どもたちだけでなく、大人たちこそが観るべき内容だと思いました。日常とは概してつまらないものの連続かもしれません。しかし、「映画の中の子どもたちが置かれている日常とは全然違う。」と自信を持って言えるような、アグレッシブな自己を持った大人がどれほどいるのでしょう。(もちろん、私も含めてですが。)そして、ロイストンのように、人生を懸けて子どもたちと接することがどれだけあるでしょうか。ちょっと話が脱線してきました。
ベルリン・フィルの演奏やリハーサルのシーンもかなり登場します。クラシックファンとしては、その点でもかなり見応えがありました。また、「春の祭典」の演奏は、この映画に合わせてCDがリリースされたようです。抜群のリズム感を持つラトルのことですから、きっと素晴らしい演奏だと思いますが、CDを聴いてその世界を少しでも共有できたら良いとも思いました。
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