新日本フィル 第381回定期演奏会 「シューマン:交響曲第2番他」

新日本フィルハーモニー交響楽団 第381回定期演奏会/トリフォニーシリーズ第1夜

ラモー 歌劇「ナイス」から序曲、シャコンヌ
モーツァルト 交響曲第31番「パリ」
シューマン 交響曲第2番

指揮 フランス・ブリュッヘン
演奏 新日本フィルハーモニー交響楽団

2005/2/18 19:15 すみだトリフォニーホール1階27列

こんにちは。

今日は急遽、vagabondさんの記事を読んで気になっていた、ブリュッヘンと新日本フィルの演奏会を聴いてきました。ちなみに、ブリュッヘンが日本のオーケストラを振るのは今回が初めてだそうです。意外な感もしますが、その意味では大変に貴重な演奏会です。

さて、当たり前ですが、新日本フィルは古楽器のオーケストラではありません。ですから、18世紀オーケストラと同じ響きは無理なはず…、どうしてもそう思ってしまいます。しかしそれは良い意味で裏切られました。ブリュッヘンには「妥協」という言葉がないのでしょう。現段階の新日本フィルで、これ以上の古楽器的演奏法は不可能でないかと思うほど、彼の解釈は徹底していました。ヴィブラートを極力排して、シャープに音楽の構造を組み立てます。躍動感こそ本家に及ばない感もありましたが、響きの美しさは見事で、見通しの良い演奏がなされていました。

私が一番感銘したのはメインのシューマンです。金管をややきつめに吹かせて全体から浮き出させます。ティンパニはかなり硬めで、歯切れ良くリズムを支えていました。また、この曲では何かとゴチャゴチャしがちな弦も、各パートのバランスに配慮がなされていて、全体としての美しい響きを作ります。さらには、所々で聴かせるエネルギッシュでスリリングなテンポアップも、ゾクゾクするような小気味良さが感じられました。第三楽章の美しい音楽も、ブリュッヘンの手にかかると、過度に入れ込むことがありません。テンポこそやや遅めですが、丁寧な音の積み重ねが堅牢な構成感をもたらします。「中庸の美」を感じました。(もちろん悪い意味ではありません。)この曲で良く語られる病的な部分や、曲そのものの問題をあまり感じさせないシューマンです。聴き応え抜群でした。

休憩前のラモーとモーツァルトは、オーケストラがまだ若干リズムに乗り切れていなのか、ややキレに欠ける部分もあるように思いました。ただ、これは、今後日を重ねる毎に良くなっていくのでしょう。モーツァルトの「パリ」では、第二楽章で第一稿と第二稿を続けて演奏しました。この曲そのものもあまり取り上げられないのに、こうしたサービス(?)がなされるのは大歓迎です。私が元々この曲が好きなせいもありますが、終始、モーツァルトの柔らかな響きにうっとりさせられました。もちろん、ラモーのきらびやかな響きにも同様です。トランペットの眩しい響き。病み付きになりそうです…。

ブリュッヘンは、椅子に座りながら、腰を曲げた前傾姿勢で小刻みに両手を震わせていました。さすがにお年をめされている感はありましたが、音感は抜群に素晴らしいようです。響きの美しさという点で、これ以上の演奏が日本のオーケストラであるのだろうか。そこまで思わせる位、暖かく柔らかい響きがホールを満たしていました。私の体は、頭から足の先まで美しい響きに浸されたようです。幸福感漂う演奏会でした。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )