都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
東京都現代美術館 2/11 その2 「MOTアニュアル2005」
東京都現代美術館(江東区三好)
「MOTアニュアル2005 愛と孤独、そして笑い」
1/15~3/21
こんにちは。
榎倉展に引き続き、現代美術館の恒例企画となった「MOTアニュアル」を観てきました。今年のテーマは「愛・孤独・笑い」です。10名の女性のアーティストが自由奔放に芸術表現を繰り広げます。美術館による「暗雲の漂う現代日本→新しい表現の可能性」という思考は全く理解できませんが、彼女たちの表現はそんな境地をとっくに超越していたようです。観る者を、ある時は控えめに、そしてまたある時には激しく挑発してきます。ボヤボヤとしていられません。
ところで、この手の展覧会ですが、私はいつも好き嫌いが分かれてしまいます…。そんな中で特に面白いと感じた方は、澤田知子さんとオノデラユキさんでした。
澤田さんは、以前オペラシティで開催していた「ガール!ガール!ガール!」展でも大いに笑わせていただきました。もちろん今回も強烈です。(上にアップしたチラシにあるのは彼女の作品です。)一見、どこかの女子高の集合写真かと思ってしまいますが、よく見ると皆澤田さんご本人ではありませんか。当然ながら、教師役を除いて全て制服となるので、髪型や化粧などでそれぞれの「個」を出していかなくてはなりません。要するに、大方の人間が一生懸命に「個」を出そうとしてやっていることを、澤田さんはただ一人で全てこなされているわけなのです。皮肉も痛烈です…。何たってそんな行為をあざ笑うかのように、彼女はいとも簡単にそれぞれの「個」を生み出してしまうのですから…。こういう視点、私は好きです。
オノデラユキさんの作品は、美しいシルエットが印象的です。誰だか分からない匿名の人間が数名、立っていたり座っていたりしながら、影としてだけ写っています。そこにいる者は一体どういう人間なのか。そしてそれぞれに関係はあるのか。観る人それぞれが、シルエットに様々な物語を付与できます。感性を自由に働かさせる上に、シルエットの美しさも印象に残る。素晴らしい作品だと思います。是非、他の作品も観てみたいです。
その他の方は、理解出来ない部分も多くありました。それをいくつか取り上げて書いてみます…。
出光真子さんの「直前の過去」は、日本を取り巻く第二次大戦がテーマのビデオアートです。大きなメインの画面に戦争のシーンを延々と流し、手前のスクリーンに幼い子どもの映像を映します。二つの映像を重ねて観るというスタイルそのものは悪くないと思いました。しかし、戦争の殺戮と幼子の対比には興味が湧きません。政治的な話題を絡めながらアートを作り出すのは難しいことかもしれませんが、他の主題であればもっと良かったと思います。
イチハラヒロコさんの作品は、最近あちこちで見かけるように思います。売れっ子の方なのでしょうか。誰もが思い、叫びたくなることを簡潔な文章で表現します。「一生遊んで暮らしたい。」確かにそうかもしれません。ただ、ハッキリとした理由は分かりませんが、「ガール・ガール・ガール!」で観た時ほど面白くありませんでした。展示方法のせいもあったのでしょうか。どうなのでしょう。
岡田裕子さんはぶっ飛んでおられます。そしてそのぶっ飛び様は、私のアドレナリンを一気に放出させたようです。展示室入口にあった仏壇で、上手く丸め込まれそうになりましたが、主婦が暴発する大迫力映像の前では何やら頭に血が上ってくる感覚が…。表現としての面白さなどは分からなくもないのですが、どうしても好きになれません…。ファンの方、ごめんなさい…。
溝口彰子さんの「私の愛する男は私の中で~(長いので以下を省略させていただきます)」。う~ん、この作品は困りました。どのようにして観たら面白いかと、頑張って作品の周りを何回もぐるぐる歩いてみたのですが、どうも伝わってくるものがありません…。ただ、この作品を、美術館の入口か、隣の木場公園の広場にでも置けば面白いかもしれないとは、微かに思いました…。
去年の「アニュアル展」よりは、表現が幅広かったと思います。方向性も多様でした。その点では楽しめたと言えるのかもしれません。しかし、違和感と拒否感を感じてしまう作品も多くありました。Takさんのおっしゃる通り、この展覧会の後、すぐに榎倉展を鑑賞するのは危険な行為だと思います。ですが、さらに可能であるならば「アニュアル」の方を別の日に観た方が良かったかもしれません。その位、二つの展覧会の取り合わせは奇妙でした…。わざと「榎倉」と「アニュアル」をぶつけたのか、そうでないのか…。少し気になるところです。
「MOTアニュアル2005 愛と孤独、そして笑い」
1/15~3/21
こんにちは。
榎倉展に引き続き、現代美術館の恒例企画となった「MOTアニュアル」を観てきました。今年のテーマは「愛・孤独・笑い」です。10名の女性のアーティストが自由奔放に芸術表現を繰り広げます。美術館による「暗雲の漂う現代日本→新しい表現の可能性」という思考は全く理解できませんが、彼女たちの表現はそんな境地をとっくに超越していたようです。観る者を、ある時は控えめに、そしてまたある時には激しく挑発してきます。ボヤボヤとしていられません。
ところで、この手の展覧会ですが、私はいつも好き嫌いが分かれてしまいます…。そんな中で特に面白いと感じた方は、澤田知子さんとオノデラユキさんでした。
澤田さんは、以前オペラシティで開催していた「ガール!ガール!ガール!」展でも大いに笑わせていただきました。もちろん今回も強烈です。(上にアップしたチラシにあるのは彼女の作品です。)一見、どこかの女子高の集合写真かと思ってしまいますが、よく見ると皆澤田さんご本人ではありませんか。当然ながら、教師役を除いて全て制服となるので、髪型や化粧などでそれぞれの「個」を出していかなくてはなりません。要するに、大方の人間が一生懸命に「個」を出そうとしてやっていることを、澤田さんはただ一人で全てこなされているわけなのです。皮肉も痛烈です…。何たってそんな行為をあざ笑うかのように、彼女はいとも簡単にそれぞれの「個」を生み出してしまうのですから…。こういう視点、私は好きです。
オノデラユキさんの作品は、美しいシルエットが印象的です。誰だか分からない匿名の人間が数名、立っていたり座っていたりしながら、影としてだけ写っています。そこにいる者は一体どういう人間なのか。そしてそれぞれに関係はあるのか。観る人それぞれが、シルエットに様々な物語を付与できます。感性を自由に働かさせる上に、シルエットの美しさも印象に残る。素晴らしい作品だと思います。是非、他の作品も観てみたいです。
その他の方は、理解出来ない部分も多くありました。それをいくつか取り上げて書いてみます…。
出光真子さんの「直前の過去」は、日本を取り巻く第二次大戦がテーマのビデオアートです。大きなメインの画面に戦争のシーンを延々と流し、手前のスクリーンに幼い子どもの映像を映します。二つの映像を重ねて観るというスタイルそのものは悪くないと思いました。しかし、戦争の殺戮と幼子の対比には興味が湧きません。政治的な話題を絡めながらアートを作り出すのは難しいことかもしれませんが、他の主題であればもっと良かったと思います。
イチハラヒロコさんの作品は、最近あちこちで見かけるように思います。売れっ子の方なのでしょうか。誰もが思い、叫びたくなることを簡潔な文章で表現します。「一生遊んで暮らしたい。」確かにそうかもしれません。ただ、ハッキリとした理由は分かりませんが、「ガール・ガール・ガール!」で観た時ほど面白くありませんでした。展示方法のせいもあったのでしょうか。どうなのでしょう。
岡田裕子さんはぶっ飛んでおられます。そしてそのぶっ飛び様は、私のアドレナリンを一気に放出させたようです。展示室入口にあった仏壇で、上手く丸め込まれそうになりましたが、主婦が暴発する大迫力映像の前では何やら頭に血が上ってくる感覚が…。表現としての面白さなどは分からなくもないのですが、どうしても好きになれません…。ファンの方、ごめんなさい…。
溝口彰子さんの「私の愛する男は私の中で~(長いので以下を省略させていただきます)」。う~ん、この作品は困りました。どのようにして観たら面白いかと、頑張って作品の周りを何回もぐるぐる歩いてみたのですが、どうも伝わってくるものがありません…。ただ、この作品を、美術館の入口か、隣の木場公園の広場にでも置けば面白いかもしれないとは、微かに思いました…。
去年の「アニュアル展」よりは、表現が幅広かったと思います。方向性も多様でした。その点では楽しめたと言えるのかもしれません。しかし、違和感と拒否感を感じてしまう作品も多くありました。Takさんのおっしゃる通り、この展覧会の後、すぐに榎倉展を鑑賞するのは危険な行為だと思います。ですが、さらに可能であるならば「アニュアル」の方を別の日に観た方が良かったかもしれません。その位、二つの展覧会の取り合わせは奇妙でした…。わざと「榎倉」と「アニュアル」をぶつけたのか、そうでないのか…。少し気になるところです。
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